見出し画像

【雑記】マンションの隣人と遊んでみた

「あっ」
「あらっ」

偶然、隣人と歯医者で会った。

簡単な会話を交わしたあと、彼女が麻雀の業界紙を読んでいたことに気が付く。
お隣ではあるが、今まで挨拶を交わす程度のお付き合いしかしていない。少しためらったが、思い切って聞いてみた。

「お好きなんですか?麻雀」

彼女は、いきいきと答えてくれた。
夫婦そろって麻雀が好きであること。
社会人となってからは麻雀を打つ時間が減ったこと。

我々も夫婦も麻雀が好きで仕方がないことを伝える。

「それではぜひご一緒に」

と笑顔で言われる。
帰宅して妻に事の次第を話すと、麻雀牌を引っ張り出して磨きはじめた。

翌週の土曜の夜、夫婦を我が家に招待した。

作りがウチと左右対称だ!」

と旦那さんが言ったのがおかしかった。

麻雀のいいところは、遊びながら会話ができること。
コミュニケーションのツールだ。


隣家は夫婦そろって教師をしており、年齢は私たちより少し上であることがわかった。
妻たちも料理や近所のスーパーの話などで盛り上がっていた。

四、五時間経つと「遅くまで失礼しました」と言って、お開きになった。
麻雀の内容はお互いに勝ったり負けたりで、久々にどっぷりと打てたことに満足していた。

それ以降、月に一、二回麻雀を打つようになった。
それぞれ、子どもはまだいなかったので、自由がきいたのだ。

画像1

出典:兎~野生の闘牌~山城麻雀編
http://www.am-j.co.jp/newmachine/200305/002.html

場所については、交互に受け持つことになった。初
めてお邪魔したときは、

「おぉ、ほんとに左右対称だ」

と言ってしまい、笑われてしまった。

いつのまにか、夕食も共にすることが習慣となった。
妻はビーフシチューやアクアパッツァなど、普段は作らないものも準備してくれた。
来客用の食器も増えた。
麻雀交流会は二年以上続き、すっかり打ち解けた仲となっていた。


しかし、私はその関係を台無しにしてしまう。
 


暑い日だった。
七月のはじめにしては、例年より気温が高いと報道されていた。
その日の会場は我が家であり、料理は餃子である。

思考が鈍るので、普段は麻雀をやる前に飲むことはない。
しかし、暑い初夏と餃子という組み合わせ効果により、ビールの魅力に負けてしまった。
無論、先方にも勧めた。
相手の奥さんの調子がよかった。
繰り返し、上がる。
一人勝ちだった。
過去にも誰かが一方的に勝つことはあったが、酒が入っていたせいか、

「こんなことはおかしい!イカサマをしているだろ!」

と激昂してしまった。
あちらの旦那さんは、うちの妻がそんなことをするはずはないですよ、と冷静に反論した。
それでも私は納得がいかず、テーブルをひっくり返し、大声で何かを叫んだ。
ご夫婦は、

「今日は、早めに失礼しますね」

と言って帰っていった。
翌朝、妻に昨晩あったことを聞き、恥ずかしくなった。

今思うと、すぐに謝りに行けばよかったのだが、年上の方に大変失礼なことをしてしまった、という恥ずかしさと畏れにより、すぐには行けなかった。

玄関先ですれ違うことがないよう、タイミングを見計らって外出する自分が情けなかった。

ひと月ほどし、妻と近所のスーパーに買い物に来ていたら、隣のご夫婦を見かけた。
隠れようとする私の服を妻はつかみ、尻をバシっと叩いた。
覚悟を決め、こんにちは、と挨拶をしてから謝ろうとすると、先方から

「次の会場はウチですよ。いつ来てくれのですか」

と言われた。人生の先輩に気を遣わせてしまった。
教師だからか、お二人とも器が大きかった。

丁重に謝罪したあと、麻雀生活は再開された。
あんな恥ずかしいことをしたのに、なぜか私の運気は抜群で、久しぶりの麻雀は大勝ちしてしまった。

この記事が参加している募集

出版を目指しています! 夢の実現のために、いただいたお金は、良記事を書くための書籍の購入に充てます😆😆