おにぎり兄さん

おにぎりの『具』はショートショート。本当はおにぎりよりもキャベツ太郎の方がすきです。こ…

おにぎり兄さん

おにぎりの『具』はショートショート。本当はおにぎりよりもキャベツ太郎の方がすきです。こばなし中心なので、小腹が空いたらどうぞ食べてやってください。

最近の記事

気づいた男。

今日は体調もいいし、少し外の空気でも吸うかな。 この4日間風邪で寝込んだだけなのに、これまでの自分から食欲を返上した結果、起き上がるだけで頭はフラフラ、足元はグラグラで身体のコントロールもろくに効かないではないか。前言撤回 「もう1日バイト休もうかな」 独り言にも力が入らないが、これに関しては食事を取れば戻るとかそういう類いのものではないのだが *** 『光町中学校第37期同窓会のお知らせ』 *** ボロボロマンションよろしく、同じかそれ以上に年季の入った郵便ポス

    • 鳴かないウサギ

      私が教壇に立つ小学校はまもなく廃校を迎える。 少子化が進み都心部でさえ学校の統合が進んでいるので、私のいるような小さな村の小学校では余計に仕方ないことだとどこか割り切るしかない。 全校生徒が三人。六年生が二人と二年生が一人。二年生の『つとむ』が卒業したらこの小学校は仕事を終える。 〈私も二十年以上前にこの学校を卒業したが、当時はまだ全体で七十人以上いたはずだ。それでも都会に比べれば少ないが〉 『ツトム』と六年生の『アカネ』は姉弟なのだが、『ツトム』はもう一人の六年生『ケン』を

      • 電灯の灯、影でなく静寂を照らす

        -これは私の心の…いや魂の叫びである- ここは関西にある小さな町。 昔ながらの商店街には、もう何代も前から続いている老舗がある一方、跡継ぎがおらず店をたたみ看板よろしくシャッターに落書きといった店の方が多い印象を受ける。 この小さな町の担当になって丸3年。そろそろ異動の噂が流れているが、栄転は期待できない。 小さな町の担当であるのと、ノルマの達成率の低さが原因だ。自分でもわかっているし、そもそも新人研修の後すぐにこの町の担当になった時点で、期待されていないのも透けて見える。

        • 水をやればまた咲くと信じて

          「お願いだから、もうかけてこないで!!」 携帯に罪はないのだが乱暴に投げつけてしまった。 腹が立った相手は携帯ではなく、電話越しの『アイツ』なのに。 羽毛布団に投げつけたのは正解だった。 気持ちのコントロールに自信はないが、投げるコントロールはうまい方だと自負している。 時間を確認するとまだ10時を少し回った所。 〈今日はとことん寝ようと思ったのに〉 せっかくの休みで今日は何もしないと決めていたのに、完全に目が覚めてしまった。 『アイツ』のせいだ。 友達のチカからLINEが入

          同じ穴のムジナ

          本を閉じたのと、目を閉じたのはほぼ同時だった。 というより一気に眠気に襲われたのでいまいち覚えていない。 どちらが先だったかさほど重要ではない。『現実の世界』から『頭の中の世界』に吸い込まれて行くこの感覚は、心地が良くてたまらない。 翌朝出勤すると、2年後輩の花園が課長から何やら絞られていた。 どうせ花園のことだ。アクビでもしながら課長に挨拶したのだろう。 課長は体育会出身だから生理現象であろうが容赦はない。 それは酒の席でも同じで飲みに行っても心地が悪い。 挙句、割り勘と

          同じ穴のムジナ

          偉い人が言えば何でも名言〜その3〜

          ・塾 生徒に合ったものを提供したい。一人一人性格も違う。だからこうやって塾が終われば生徒たちの家に泊まり、一緒に飯を食べることで彼らの目線に自分を置く。毎日違う家に行ってるのに4日連続でカレーって日もあるんだから大変だよ。 ・サッカー 「ヘイ、パス」って言葉を最初に言ったのは、うちのじいちゃんなんです。元々はボールをもらうためじゃなくてボールを出す時に言ってた言葉なのにってじいちゃんよく嘆いてましたよ。 ・加湿器 冬の間だけ、かみさんと一緒に寝るの。あんたがいれば部

          偉い人が言えば何でも名言〜その3〜

          蓋ヲ開ケレバ、灯台下暗シ。

          時空の移動を可能にするスイッチ。信じがたいが博士が言うから間違いない。 助手の私が疑ってはいけない。 博士はこのスイッチの開発に人生を捧げ、私もまた、助手として捧げてきた。 博士82歳、私63歳。かれこれ40年以上の月日を共に過ごし、タイムマシーンの開発に全力を注いだ。 国からの研究費用など出ないので、助手の私は専らアルバイトで博士をサポートし、ここまできた。信じられないかもしれないが本当だ。 「大平君、ずいぶんと時間がかかってしまって悪かったね」 「とんでもございま

          蓋ヲ開ケレバ、灯台下暗シ。

          そして灯はようやく消えた

          死の直前、人はそれまで歩んできた人生を走馬灯のように思い出すという。 この権平もまた、まさにその真っ最中である。ただ違うのは、走馬灯がかれこれ4回ほど襲ってきていることだ。 なぜか毎度同じ所で記憶がつまづき、前へと進んでいかない。その度に記憶は振り出しに戻され、「死ぬでない、権平!!」と泣き叫んでいる友に抱きかかえられながら「拙者は死ぬのか」と思い走馬灯のように幼少期からの記憶が駆け巡る。 初めこそ死にたくないと思ったが、ここまで死なないとなると都合が悪い。 別に誰ぞに

          そして灯はようやく消えた

          こだわりのない缶コーヒーはそれでも苦い

          ぼちぼち大阪の生活にも馴染み、一人暮らしも板についてきたなと自分でも実感していた時の話。 仕事があれば休みなんてものはなく、逆に仕事のオファーがなければいくらでも休みになってしまうという、サラリーのない歩合制100%の世界、俗にいう水商売の世界に飛び込んだユウイチに、この週も仕事は回ってこず平日から暇を持て余していた。 あいにくアルバイトも休みなのでやることもない。正式にはやるべきことはあるのだがそんな気分になれなかった。 家の近くには道頓堀川が流れているが、観光客で賑わ

          こだわりのない缶コーヒーはそれでも苦い

          待てば海路の日和あり

          流石に今日はもうやめにしよう。 朝からあの手この手を試したつもりだが、どうも調子がでない。 釣れない日だってある。 兄貴もどうせ同じこと考えてるだろう。 少し離れた場所にいる兄貴の様子を見に行くと、兄貴はこちらの意図を完全に理解していた。 「お前、まさかボウズちゃうやろな?言うとくけど、まだ終わらへんで」 「いい加減手が疲れました。もういいんちゃいます?」 「アホか、これから時合やねんからもうちょい粘れ。今から魚寄ってくんのに今やめてもうたら晩飯食われへんやろ。」

          待てば海路の日和あり

          さよならの前にひとつだけ

          やっと泣き止んでくれた。というより泣き疲れて眠ってしまったという方が正解だ。正直子供に泣かれるといつでもオタオタしてしまう。 本当に子供の眠った顔は天使だ。でも、起きたらまたママを探して泣くのかな。 ごめんね、でももうママはいないんだ。パパ一人じゃやっぱりダメかい?ごめんね。 寝ている今のうちにやれることをやっておこう。 ずいぶん溜め込んでしまった洗濯物を洗濯機から取り出し、ベランダへ出ようと窓を少し開けると、外はいつもより賑やかな印象を受けた。 「部屋で干そう」と窓を閉め

          さよならの前にひとつだけ

          偉い人が言えば何でも名言〜その2〜

          ・ビジネス書 ある時ね、うちに来てる生徒さんに「先生の書いてるビジネス書は難しくて読めない」って文句言われちゃったの。びっくりしちゃったよ。だって誰でも読めるように全部ひらがなで書いてるのに言われちゃったんだから。 ・ゲン担ぎ そりゃ生活かかってますからね、商品が売れなきゃ困る。だから私は商品ができると必ずヒット祈願をするんです。当たれと願いながら牡蠣を湯がいて食べています。 ・ひな祭り 変化を受け入れなきゃいけない。すぐにみんな忘れちゃうから我々だってその都度変化

          偉い人が言えば何でも名言〜その2〜

          さあ、行きませうか。

          待ちに待った約束の日、年甲斐もなくご陽気に鼻歌なんか奏でたものだから、娘から「気持ち悪い」なんて言われてしまった。 娘から話しかけられたのはいつぶりだろうか。言葉は悪いが気分は良い。 それぐらい娘の声を聞いていなかったことになる。 家内はまだ寝ているし、娘がなぜ早起きをしているのか見当もつかない。 聞いても無視されるので聞くなんて野暮なことはしない。当然、娘にどこに行くかも聞かれない。 私は身支度を終え、庭の片隅に作った専用スタンドのブルーシートを外し、昨日メンテナンスして

          さあ、行きませうか。

          振り返る『過去』。あの時より『新鮮』。

          誰にでも大切にしている宝物がある それは物かもしれない それは人かもしれない それは思い出かもしれない・・・ 僕の場合は思い出が宝物だ。 海の近くに父方の実家があり、小学生の頃夏休みになると毎年遊びに行っていた。 楽しみは祖父に連れて行ってもらう釣りだった。 祖父は釣りの名人で釣り方をよく教わった。 祖母に連れて行ってもらう祭りはもっと楽しみだった。 いろんな出店が並んでいて、いつも母に内緒でおもちゃを買ってもらっていた。 磯の香りがしみ込んだフナムシだらけの堤防も、フ

          振り返る『過去』。あの時より『新鮮』。

          偉い人が言えば何でも名言〜その1〜

          ・流れ星 流れ星の落ちてくるスピードが速すぎるから願い事が出来ないんじゃないんです。 流れ星を見れたことにテンションが上がりすぎて、願い事することなんて忘れてしまうんです。 だからうちの社員には「あっ流れ星!!」と「願い事した?」なんて会話はさせません。とにかく無駄を省くんです。 ・お餅 今は身体もでかいし丈夫だけどな、昔はヒョロヒョロで身体も弱かった。 近所によく吠える犬がいて怖いのなんの。いつも母ちゃんの手を握ってたよ。 母ちゃんは俺のこと『お餅』って呼ぶんだ。 手

          偉い人が言えば何でも名言〜その1〜

          ハイエナと呼ばれて

          噂には聞いていた。でも初めて会った時、全くそんな印象は受けなかった。 あの人が周りから『ハイエナ』と呼ばれる意味なんか僕には全くピンとこなかった。 僕は 山上太陽 24歳 『太陽』と書いて『おてんと』と読ませたのは、ベロベロに酔っ払って帰ってきたうちのじいちゃんだ。じいちゃんが決めた名前だ。 由来は、じいちゃんがスナックでたまたま居合わせた占い師に占ってもらって、「この名前にしなさい!!天才になるわよ!」と言われてつけられた。 だから正式には『占い師』が付けたことになる。

          ハイエナと呼ばれて