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【読書ポートフォリオ】朝井リョウ『何様』を読んで大学生活を総括する

こんにちは。春から高校で国語を教える予定の者です。この記事は、そんな私が【読書ポートフォリオ】と題して、いつか生徒にお勧めしてみたいと思う本の感想を書いています。
今回は、朝井リョウ『何様』を読んで見えてきた自身の大学生活の反省をしたいと思います。

『何者』と『何様』

『何様』という小説は、2013年に直木賞を受賞した『何者』という小説に登場する人物たちの周辺を描いた小説です。2冊全体の大きなテーマは、学生の「就活」。そしてその後。

「就活」を通して、何者かにならなければならないと焦る学生の苦しみがリアルに描き出されています。また、続編『何様』では、面接を通して社員を選考する立場になった人物の心の葛藤が描かれています。

「何者」かにならなければならないと感じていた4年間

私は、大学生活を送るに当たって、特に何かを計画していたわけでもなく、とりあえず教員免許を取得して卒業しようということしか考えていませんでした。しかし、大学生活の4年間、教員免許を取るためだけに過ごすには、あまりに長すぎることが次第にわかってきました。そして、いきなり与えられた自分の能力以上の自由にひどく戸惑いました。結局「何者」かになれる人は分かりやすく評価される結果を残したほんの一握りだということをどこがで自然に理解していきました。

自分のアイデンティティの拠り所をどこにするか

私には、教員を目指しているというわかりやすい肩書きはありました。それは確かに自分の拠り所となりました。よって将来のためだと大量の本を読むという自由を合理的に選択できたつもりでいました。もちろん本を読むことは好きだったし、段々と趣味嗜好が変わっていく自分を知ることも楽しかったのは事実です。しかし、今振り返ってみると、与えられた自由であるはずなのに、社会的に否定されないこと、人から尊敬されやすいことを無意識に選び取っていたのではないかとも思います。「何者」かになりたい願望が勝って「今を楽しむ」を疎かにしていたのかもしれない。本を読むことも今を楽しむことの一つだったけれど、もっと幅広く今を楽しめたのではないかと反省しています。

また、私は教員採用試験を受けたのですが、面接を通して分かったことがあります。分かりやすい肩書きや結果が圧倒的に強いということ。言葉には言い表しにくいその人の特徴や物腰について面接官はなかなか見抜いてくれないということです。自分の強みを自分自身で語れない能力の低さが悪いのですが、そこに「就活」の苦しみがあるのだと思います。私は面接の時、自分のアイデンティティの拠り所を完全に失っていました。

『何者』になるかは自分で決められる

私は、SNSやnoteを通して強制的に自分を何者かに仕立て上げることができました。現代はネット上で様々な自分を作ることができます。承認欲求が付き纏ってくるという問題もありますが、今現在の自分は認められたいよりも、自分が面白いと思う自分を作りたいという欲求の方が大きかった。自分で仕立て上げたものは、脆く、すぐに崩れるかもしれません。ただ、崩れてもまた建て直せばいいのでないかと4年間の量産型大学生活を通して学びました。

誰かが自分を「何者」かに仕立て上げている

『何様』を読んで、人を無意識に評価して枠に当てはめようとすることについて考えさせられました。現代社会は人と人とを繋ぐ手段が豊富に存在しています。そして繋がっている人物が「何者」であるのかをいちいち勝手に評価している自分もいるのではないかと思います。そう考えると自分が「何者」であるのかという問いに対する答えも無数に存在するのではないでしょうか。

最後に

これから教員になるということは、生徒を評価していく立場になるということです。自分は「何様」のつもりなんだろうと感じることもあるかもしれません。ただの新卒1年目に人の何がわかるんだと。でも、人と関わるに当たってその人を「何者」かに当てはめるのではなく、日々一人一人の人物像を更新していくという考えのもとで頑張ってみればいいのではないか。そんなことを今は考えています。

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