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すっぴんで行ける距離に、ナポリタンがあってよかった。

カレンダーに「ナポリタン」と入れたのは3日前だったと思う。この日は、ずっと行きたかった喫茶店でナポリタンを食べると決めていた。

ここは駅から家に帰るまでの間に、ぜったい通る場所にあるお店だ。営業中はいつも外に看板が出ていて、その看板には色褪せた写真の下に「昔ながらのナポリタン」と書かれている。会社に行くときにはすでにお店は開いていて、わたしはいつもナポリタンのことを想いながら、この道を通っていた。

今日はついに、そのナポリタンとご対面だ。まだ朝の10時半くらいだったから、10席ほどある店内で、お客さんはわたししかいなかった。お店は60代くらいの夫婦が、経営しているらしい。

お冷とメニューが置かれる。一瞬だけシナモントースト(ゆで卵付き)に惹かれたけれど、やっぱりナポリタンを注文した。待っている間、店内を見渡すと、祖父の家にあったものと同じ置き物をみつけた。黒いタキシードを着たジャズ奏者が5体くらい。これたしか、ちゃんと音も出たような気がする。だけど店内には、ジャズじゃなくてクラシックがかかっていた。フィギュアスケートの選手が、演目に選びそうな華やかな曲だった。

そうして待っているうちに、ナポリタンが出てきた。ここの「昔ながらのナポリタン」は、本当に昔ながらの味がした。半年ほど前に実家の近くで食べた「昔ながらのナポリタン」はおしゃれな味がしたから、感動もひとしおだった。

ナポリタンは、サラダとスープがついていた。これも看板を毎日みていたから出てくることは予習済みである。スープは、クノールのコーンスープだった。永野芽郁ちゃんがCMをやっているあれだ。高校生くらいまで、冬になると朝ごはんに毎日食べていたからきっと間違いない。また買ってみようかな、などと思った。

ナポリタンは、朝から何も食べていない状態からでも、散歩が必要になるくらいの満腹になるくらいの量だった。

ナポリタンだけでも十分なのに、この店にはまた来たいと思う理由が多すぎる。

すっぴんで行ける距離に、ナポリタンがあって本当によかった。厳しい冬につかれてしまったら、またここに来よう。

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