続 音楽家の未来図〈2025〉
過去20年の働き方や生き方の常識が、
多くの面で崩れようとしています。
確かなことはわからなくても、
おおよその未来を予測し、
「自分はこう生きる」と自覚することは、
あなたの今後の人生の、
満足感と納得感を高めてくれることでしょう。
さて今回も、
世界的名著「ワーク・シフト」(リンダ・グラットン著)を道しるべに、
2025年音楽家の未来がどうなっているのか、
予測していきます。
同著では、
未来に関する重要な現象を、
5つの要因にわけて整理しています。
1 テクノロジーの進化
2 グローバル化の進展
3 人口構成の変化と長寿化
4 社会の変化
5 エネルギー・環境問題の深刻化
前回は、
テクノロジーの進化やグローバル化の進展を背景に、
更なる実力主義社会が到来するであろうことを予測しました。
早速、続きをみていきましょう。
■人口構成の変化と長寿化
『ワークライフバランスを重んじ、仕事に面白さを求める価値観が、仕事や組織のこれまでのあり方を変えていく。寿命が長くなるため働く期間が伸び、教育や就業のため国境を越えた移住が活発になり、一部の人々は貧しい老後を迎える。』(同著要約)
5つある要因のうち、
このトピックが一番ワクワクさせられます。
一番自分の生活に身近というのか…
日々の生活そのものだからでしょう。
寿命が延び、
仕事に費やせる時間が増えることは、
様々なポジティブな可能性を想起させます。
ざっと思い浮かんだのはこんなもの…(あなたもぜひ想像してみてください!)
・音楽家各自の表現の深化、レパートリーの開拓が進む。全曲演奏や知られざる作曲家の作品に取り組む演奏家が増えるかも?!
・専門分野を複数持つ人が増える。異分野の人脈やスキルを、音楽に活かす人が増える。
・成熟した聴衆が増加する。玄人向けの個性的なコンサートが増えるか?!
・スキルの維持・メンテナンスの必要から、中高年での大学院通学や海外留学が増える。
・体(健康)の維持・メンテナンス分野が重宝がられる。(アレクサンダー・テクニーク等)
これらについて、すでに兆候はあります。
例えば、
中高年の学びについては、
国は企業で学び直し休暇取得を後押しする取組を始めていますし、
声楽家がビジネスマン向け話し方のコーチをするなど、
複数の専門を活かして活動している音楽家も多くなりました。
龍角散の社長のような兼業音楽家もご活躍されています。
さらに、
成熟した聴衆を想起させるエピソードをひとつ。
第一生命ホールの人気企画「昼の音楽さんぽ」。
スタート時はクラシック入門編という感じを押し出していたそうですが、
アンケートをとると、月に何度もコンサートへ行く方が非常に多かったとのこと。
今では、
知的好奇心を満たしてくれる挑戦的なプログラミングを実現しています。
一方、
増えるのは時間だけではありません。
それを支える、生活費も増えます。
老後の生活費増を背景に、
収入面にシビアな音楽家が増えるでしょう。
昨今、音大を志す人が減ってきている理由として、
ひとつには経済性を重視する傾向の高まりがあると、
大学関係者は言っています。
今世間で熱いトピックである「働き方改革」は、
一般的なサラリーマンに比べ平均年収が低いといわれている音楽家の、
兼業や副業を後押しする要因になるかもしれませんね。
■おわりに
5つの要因である3つまでをみてきました。
いかがでしたか?
私の勝手な未来予測はここまでにして…
おわりに、
残りの2つの要因「社会の変化」「エネルギー・環境問題の深刻化」について、
同著の要約を。
社会の変化
『大企業や政府に対する不信感が強まる。女性の活躍が進む一方、バランス重視の生き方を選ぶ男性が増える。家族のあり方が変わり、自分を見つめ直す人が増える。消費の更なる拡大は幸福感の減退を呼び、テクノロジーの進化による恩恵として余暇時間が増える。』
エネルギー・環境問題の深刻化
『エネルギー価格が上昇し、モノの輸送や人の移動を減らす必要性が大幅に高まる。贅沢な消費に歯止めがかかり、持続可能性を重んじるようになる。』
さあ、あなたはどんな未来を予測しますか?
それでは今日はこの辺で。
今号も最後までお読みいただきありがとうございました。
次回配信をお楽しみに!
今日も素敵な音楽を奏でましょう♪
(本稿はメールマガジン「音楽家の仕事塾」vol.72━2018.7.26に配信したものです。)