音楽家の未来図<2025>

過去20年の働き方や生き方の常識が、
多くの面で崩れようとしています。

音楽家仲間で集った今年の新年会でのこと。

「AIに演奏家は取って代わられるのか!?」
という話題で盛り上がったのを思い出します。
同様の危機感や興味は、今多くの方がお持ちではないでしょうか。


確かなことはわからなくても、
おおよその未来を予測し、
「自分はこう生きる」と自覚することは、

あなたの今後の人生の、
満足感と納得感を高めてくれることでしょう。


そこで今回は、
世界的名著「ワーク・シフト」(リンダ・グラットン著、以下 同著と記載)を道しるべに、
2025年音楽家の未来がどうなっているのか、予測してみたいと思います。

あなたが音楽家人生の未来予想図を描く際の、
アイデアの一つとなれば幸いです。

■未来に関する重要な現象
同著では、
未来に関する重要な現象を、
5つの要因にわけて整理しています。

1 テクノロジーの進化
2 グローバル化の進展
3 人口構成の変化と長寿化
4 社会の変化
5 エネルギー・環境問題の深刻化

ではこれから、
5つの要因別に、
音楽家の未来を予測していきます。

(最初の『』部分に、同著の要約を。次に、それに関連した音楽家の未来予想を箇条書きで、()部分は主たる要因を挙げます。)

■テクノロジーの進化
『世界中で、安価で複雑なテクノロジーを活用できるようになる。その結果、世界中の人がインターネットでつながり、知識はデジタル化し、AI/ロボットの活用等によって生産性が向上し、ソーシャルな活動が活発になるだろう。世界規模のメガ企業台頭の一方、無数のミニ起業家たちがコラボレーションを通じて価値を生み出しはじめる。』

・音楽家同士が教え合い、高め合うことが活発になる。(研究論文の電子化、ネット上の会員制コミュニティーの発達 等)

・楽譜を持ち運ばなくてよくなる、タブレットひとつで可能に。(楽譜のデジタル化)

・オンライン上での作品や演奏の発表がより活発になる。(YOU TUBE、サウンドクラウド 等)

・個人が経営する音楽教室にも、クレジット決済機能や予約システムの導入が進む。(クラウドサービス価格の下落)

・同業、異業問わず、他の個人事業者との協働が増える。(信用保証や決済サービスの充実 例:クラウドソーシングプラットフォームには現在も多くの音楽家が登録している。「音楽家・作曲家・作詞家」登録者数→クラウドワークス約4千人弱。ランサーズ→約9千人弱。)

・比較が容易になり、競争が激化する。

・著作権管理の重要性が増す。(情報のアクセシビリティー向上による模倣リスクの高まり)


テクノロジーの進化は、
主に目的を達成するための、手段の可能性を広げてくれるものです。

例えば、

人とつながりたいから、
手紙を書いたり、電話をかけたりしていたのが、
今は選択肢が広がってSNSという手段が出てきている。

忘れたくないのは、
「人とつながりたい」という目的の部分は変わらないということ。


今後20年で、
テクノロジーはどんどん進化するでしょう。

それを使いこなすことに必死になって、
目的を見失わないようにしたいものです。

■グローバル化の進展
『優秀な人が世界を舞台に活躍できるようになる反面、競争が激化し、人々がますます慌ただしく時間に追われるようになる。世界中で都市化が進行し、現在はアフリカなど一部の地域に集中している貧困層が世界のさまざまな地域に出現する。』

・24時間、週7日体制の忙しい人が増える。(実力主義、テレビ会議等IT技術の進展)

・東京、ベルリン、パリ、ニューヨークといった文化の集積地に、有能な人材が集中していく。

海外で働く日本人の自由業関係者(音楽家含む)の数は、
ここ数年増え続けています。※
※「海外在留邦人数調査統計(外務省)」海外長期滞在者数より

実力のある人は、
ますます忙しく、

そうでない人は見えない存在になってしまい、
貧困等の問題に直面するでしょう。


こうしてみると、
テクノロジーの進化やグローバル化の進展がもたらすのは、
更なる実力主義社会ではないかと考えさせられます。

チャンスが広がる一方、
セルフプロデュースを怠ると、
店があってもお客は素通り状態になってしまうということです。


テクノロジーの進化やグローバル化の進展の恩恵を受けるために、
やってくるチャンスをものに出来る実力を、
常に維持・向上させていきたいですね。

長くなってきたので、続きは次回…
さて、あなたはどんな未来を予測しますか?


それでは今日はこの辺で。

今号も最後までお読みいただきありがとうございました。
次回配信をお楽しみに!

今日も素敵な音楽を奏でましょう♪

(本稿はメールマガジン「音楽家の仕事術 」vol.71━2018.7.5として配信したものです。)