野球の「ファール」は、バッターがくれる最高の情報
今回は野球の「ファール」について投手目線で書いてみようと思います。
結論からいうと、バッターの放つファールは、投手にとってかなり有益な情報を与えてくれており、配球を考える上でかなり頼るべきものだと思います。
当たり前ですがファールとはこういうもの
ファールというのは野球のルール上、バッターの打ったボールがファールゾーンに飛び、地面についた時点でストライクが1つ追加されます。野手がファールを直接キャッチしたり、ツーストライクでバントをしてファールになった場合はアウトになったりすることもありますが、ここでのファールはあくまで「打球がファールゾーンに落ち、ストライクとしてカウントされる場合」を想像していただきたいです。
このファールですが、飛ぶ方向や打球の質によって、バットとボールがどのように当たっているか、ある程度推測することが可能です。単純に、真っ直ぐ向かってくるボールに対してバットの角度がつけば、その方向に打球は飛びます。また、ボール中心より下または上にバットが当たれば、ゴロやフライになるわけです。
バットは円を描くようにスイングされるため、バッターの流し方向に飛んだ場合はタイミングが遅れている、引っ張り方向に飛んだ場合はタイミングが早いと考えられ、ゴロやフライは、バッターのミートと実際のボールのズレを表していると考えられます。つまり、流し方向にフライが飛んだ場合だと、タイミングが遅れつつバットが下に入っていると推測されます。
配球は結果論
少し話は変わりますが、「配球」には正解がなく、三振を取れればよい、ヒットを打たれたらだめ、といった単純な結果論に収束します。「なら考えても無駄なのでは」と言われればそれまでですが、ヒットになる可能性を少しでも小さくすることができるのであれば、配球を考える意義はあると考えます。
配球を考える上で重要なのは、「このコースにこの球種を投げれば打たれないのではないか」という「予測」です。予測をするためにバッテリーは、打者の過去の成績や今日の打席結果、調子、構え方など様々な情報を集め、総合して配球を決定します。その情報の一つに今回のテーマである「ファール」があります。
ありがたいファール
様々な情報がある中でファールが重宝されるべき点は、「ファールはヒットを打たれずして与えられる、バッターの最新打球情報」である点です。この情報は、極めて信頼度の高い情報であるといえます。なぜなら、過去の情報はあくまで過去であり、過去と今では異なる可能性があるためです。前の打席ではストレートを狙ってきていたが、今は変化球を狙っている可能性だって考えられるわけです。つまり、過去は過去の情報として持っておきながら、リアルタイムで情報を収集することが極めて重要であるといえます。
そしてファールは、その打席の中で与えられる、さらにはヒットを打たれずして打球を見ることができるというなんともありがたい情報なのです。(ストライクも増えるという特典付き)
ファールをよく観察することは、次の投球に根拠をもたらします。初めの方に挙げた「流し方向へフライのファール」を例に考えると、このバッターはタイミングが遅れている、さらにはボールの下にバットが入っていることがファールから推測されます。この後に今よりも球速が遅いボールを投げてしまうとタイミングが合ってしまったり、同じ球速帯で下に落ちる変化球はミートされてしまうのではないか、といった予測が立ちます。よって、次は多少甘くてもインコースへストレートを投げることが有効な配球なのではないか、となります。
僕が最もよく注意していたファールは、「ファールチップ」です。とくにキャッチャーの真後ろのネットに突き刺さるようなファールチップは、タイミングが非常に合っていてミートだけが若干ずれた現象であると認識していて、次のボールは注意するべきと考えていました。
目の前の相手の「今」と戦うためのファール
ファールの方向や打球の質が、ボールとバットのどのような作用によって生み出されているのか、物理的なメカニズムが明らかとなりパターン化されたら、現場にすごく役に立つ知見になるだろうなと思います。そんな分析が現存しているかわかりませんが、あるならとても見てみたいなと思います。
過去の情報が詳しく得られない特に高校野球などは、今目の前で対峙してるバッターからいかに情報を獲得し、投球に活かすかが非常に重要だと思います。今一度試合中に打たれるファールをよく観察して、投球に活かせるヒントが何かないか考えてみると、投球の幅が広がるのではないかと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?