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「先生、どうか皆の前でほめないで下さい」

はじめに

僕は北海道教育大学旭川校に所属し、硬式野球部で投手とデータチーフをしています。このnoteは自分の専門である教育や野球のことを中心に、考えたことや感じたことをアウトプットするために、そして誰かの役に立つことが少しでもあれば共有したいと思い、始めました。試行錯誤しながら、続いていければいいなと思います。

近況

約1週間後には教育実習が始まるというのに、未だ最終レポートが終わらず夏休みに入れないまま、このnoteを書いています。
野球部は秋季リーグ戦を目前に控え、着実に練習・実践・反省を繰り返しているところです。リーグ前に少しでも課題をクリアし、またリーグの最中も成長を続けていきます。

僕はというと、残念ながら実習でほとんど出場できません…
そんな中でも何か貢献したいと思い、新たなデータ分析を試みているところです。

人生は何事をもなさぬにはあまりに長いが何事かをなすにはあまりに短い

「山月記」中島敦

やらなければならないこと、やりたいこと、考えなければならないこと、考えたいこと、たくさんあってパンパンな毎日ですが、とても充実してて僕にとっては最高です!

本来ならレポートを早く終わらせて、実習に向けて準備を始めていかなければならないところではありますが、少しの息抜きとして最近読んだ本についてお話ししたいと思います。(今日1つレポートを終わらせたので、なおさら良しとします!)

嫌いな講義ランキング1位は「当てられる講義」

今回は金間大介さんの書かれた「先生、どうか皆の前でほめないで下さい~いい子症候群の若者たち~」についてお話ししたいと思います。筆者の金間大介さんは現在金沢大学人間社会研究域経済学経営学系准教授であられ、技術経営論、マーケティング論、産学連携等の研究を進め、教育や人材教育の業界との連携も多数ある方です。
本書は主に大学生に向けた内容となっていて、大学生からすれば確信を突かれて心にぐさぐさ刺さる内容だと思います…大学生にはぜひ読んでほしい本です。

さっそく内容に入ります。

突然ですが、現在の大学生が最も嫌いな講義は以下のうちどれでしょう。
・いつも時間を延長する
・内容が難しすぎる
・当てられる
・講師の言っている意味がわからない
・1限に開講されている



結果、第1位は「当てられる」でした。

筆者の事前の予想では「内容が難しすぎる」が断トツではないかと思っていましたが、学生たちから言わせれば「内容が難しいのは自分たちの努力次第だけど、当てられるとかはもうどうしようもない。」といった具合でした。

ここから見えてくる現在の若者の行動原則・心理的特徴は「目立たないこと」です。

講義にて講師が質問を投げかけても誰も手を上げないなんてざらにありながらも、一方で質問やコメントを匿名で送ることのできるアプリなどを使えば逆に全てを見ることができないほど送信されるといったこともあります。
質問したとたん全員の手が上がるような幼き頃の白熱教室はもうどこにもありません…

今の若者は「素直でいい子」

世間ではよく、今の若者のことを「素直でいい子」「まじめでいい子」と当時に「何を考えているのかよくわからない」「自らの意思を感じない」と言う。

本書ではこのような若者を「いい子」と称しています。

「いい子」には、
・周りと仲良くでき、協調性がある
・言われたことはやるけど、それ以上のことはやらない
・5人で順番を決めるときは3番目か4番目を狙う
・授業や会議では後方で気配を消し、集団と化す
・ルールには従う
・特にやりたいことはない
などの行動原則があります。(本心を突かれているようで目をそむけたくなります…)

こうした行動原則や心理的特徴を、本書では「いい子症候群」と定義しています。

少し話は変わりますが、学校現場で先生が子どもを「ほめる」場面はよく見られます。ほめることでその子はモチベーションは上がり、さらに周りの子たちの態度にも良い影響を与えます。私も講義を受ける中でほめることの重要性は身に染みて感じ、来たる教育実習でも思う存分ほめようと思っているところです。
しかし筆者は講義の後にちょっとした流れで学生にこう怒られたそうです。

「先生、どうか皆の前でほめないで下さい」

あれ、ほめることは良いことなのでは…

筆者曰く、ここには2つの心理状態が関係していることが考えられます。

1つ目は、自分に自信がないこととのギャップです。
現在の大学生の多くは「自己肯定感」が低い傾向にあります。その心理状態のまま人に褒められることは自分への「圧」となり、プレッシャーになってしまうのです。(たしかに最近「自己肯定感」というワードをなにかと聞いているような気がします。)

2つ目は、ほめられたことによってそれを聞いた他人の中の自分像が変化したり、自分という存在の印象が強くなったりするのをものすごく怖がる、ということです。ほめられて嬉しい、というよりも先に書いた「目立つこと」に対する抵抗が圧倒的に大きいのです。

いい子症候群は何の付加価値も生まない

筆者は大学生を対象に学力、体力、優しさ・思いやり、忍耐力、持続力、積極性、自立性、コミュニケーション力、自己肯定感の9項目をそれぞれ10点満点で自己評価をしてもらうアンケートを取りました。

結果から得られる今の大学生の特徴はこうです。

・優しさに溢れ、他人に対する思いやりがあって
・そこそこの粘り強さや我慢強さを持ち
・頭のよさやコミュ力は微妙で
・自ら積極的に何かをすることはあまりなく
・決定的に自分に自信がない

また別に「あなたが何かに挑戦しようとしているとき、それをためらってしまう要因として考えられるものは何ですか」と問うたアンケートを取ると、最も多かったのは「自分の能力ではできない」であり、また上位には「失敗することが怖い」もランクインし、ここからも今の若者の自身のなさが浮き彫りとなっています

この自己肯定感の低さが、「いい子症候群」を発動させる要因であると筆者は考えています。自分に自信がないから積極的に何かすることはないし、目立つことをすれば能力のない(と本人が思っている)自分が周りに知られてしまうから避ける、のです。

ではいい子症候群の最大の課題は何か。

それは、彼ら自身は単体で何の付加価値も生まないことである。

つまりは指示待ち人間になってしまうということです。
例えば大学生であれば、教授から出された課題の提示が曖昧だとたちまちモチベーションは落ち、クオリティも落ちてゆく。質問をすることもなくただ仲間たちと”耐える”という状態に陥るのです。
会社であれば、「そこにいる」ということだけでギリギリ保っていた指示待ち社員の存在価値も、急速にリモート化された現在の環境では無意味となります。コロナ禍を起点としたリモート化がさらに浸透したら指示待ち人間は……ということになるわけです。

私たちは、小さな創意工夫を連続させながら前に進むしかないのです。

いい子症候群を蔓延させているのは私自身

では、いい子症候群を増殖する空気を広く蔓延させているのは一体何なのか。

それは若者であるあなた自身の無意識にあると、筆者は言います。

私は学生時代、サークルの運営に関わっていたことがあるのですが、その運営についてたびたび議論が行われることがありました。その中で、自分の本心とは関係なく、あえて多数派と反対の立場を取ることで、議論を深めようとする人がいました。彼がそうした言動を取るたびに、「また和を乱している」という雰囲気になりました。そして後輩の間でも、和を乱すような発言を「失敗」と捉え、恐れるようになっていったと思います。

これは筆者に届いた一通の手紙です。
ここに存在するような空気・同調圧力は、あなた自身が発しているものなのです。

誰かの発言を笑う人はいますが、その笑いに続いたことはないでしょうか。
ほんの少しの笑いの連鎖が、笑われた側の人生を生涯にわたって支配し得るのです。

いろいろと思うことがあります…

ここからは完全に僕の読んだ感想と、考えたことになります。

現大学生の僕が日々体感するに、今の大学生像と本書に書かれているものはかなり一致していると思います。
このnoteでは書ききることができませんでしたが、現在の公務員人気の理由や、就活における演技力勝負面接の蔓延など、本質が見抜かれまくった内容となっていました。

総じて考えたのは、今の若者は横並びの姿勢が強すぎるということです。
決して悪くないことだと思います。平等な思考や他人に合わせて行動することは集団の一体感を強くする要因になり得ます。
ただこの集団意識が、ここ最近はあまりよくない方向に行っているような気はします。「陽キャ」「陰キャ」「意識高い系(今ではあまり使われない?)」のような集団における立ち位置を表す若者言葉ができた背景には、今回お話ししたことが強く関連しているのではないでしょうか。(これらの表現が良い悪い、という話ではありません。)
僕の考えとしては、野球がとくにそうですが、それぞれの個性や特徴がかけ合わさって歯車が噛み合った時、その集団がもっともよい状態で大きな成果をもたらすものだと思っています。

また現行の学習指導要領の中心的な考え方が「主体的で対話的な学び」であるのも、全く関係してないと考える方が難しいです。

まとめ

このようなnoteを書いている僕はすでに集団の空気から若干離れているのだと思います。(世間に開かれたものだし、大学生という立場からすれば目立つ行為だからです)実際、未だ変な汗をかきながら投稿ボタンを押しています。
しかしこの本を通して今の若者の現状と行きつく先を学び、いまこれを書いていることがより目的を持った価値のあるものになったと思います。
自ら「学びたい!」「こうしたい!」というような勇気が、もっと気兼ねなく発揮できるような空気になっていってほしいです!

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!

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