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なぜ、日本の映像産業は人材育成がうまくいかないのか?

ストーリー開発のノウハウの共有の前に知っておいていただきたいことがある。エンターテインメント産業におけるコンテンツの産業を二つに分けることがあるのだが、その二つには以下に分けることができる。

ハード産業
ソフト産業

例えば、テレビが扱うコンテンツはどちらに基づいた産業だろう?
映画産業はどちらだろう?ゲーム産業はどちらだろう?

80年代後半から90年代前半、日本の家電メーカー(SONY、パイオニア、東芝、パナソニック)がハリウッドの映画メジャースタジオを買収した際に何を求めていたのだろうか?

人材が欲しかった?
技術が欲しかった?
ノウハウが欲しかった?

経済資本の力ではメジャースタジオを手に入れたけど、なぜかうまくいかなかった。要因としては機会や技術はあったが、それを使いこなせなかった。

ハード産業とソフト産業のシナジーを生み出すために、日本から人材をアメリカの大学(UCLAなど)や映画制作企業へ送り込んだが、フィードバックがゼロに等しかった。しかし、同じアジア圏の中でも韓国、中国、香港は自国に戻ってきてから、国内へフィードバックして映画産業基盤を強固なものしている。すでにご存知のように、今年度アカデミー賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』だけに限らず韓国映画の発展は偶然ではなく、これまで映画文化産業の強化を国がバックアップして、結果的にはビジネスとしても実績をあげている。

ピッチングで何をどう伝えれば良いかを学んでいるか。

企画やシナリオをピッチングすることで、作品を作るスタートになるハリウッド。ピッチングはビジネスにとってとても重要な要素に繋がるこ始まりだ。その中にはプロデューサーとディレクターの関係もある。

テレビとゲームはハード産業をベースにしている。ゲーム産業はわかりやすい。新しいハードが出てくると新しいソフトがマーケットを拡大していく。ゲームはハードが主導している。

ビジネスのポイントとしては、ヒューマンリソースが強くない。
なのでマーケットに依存しないのだ。

任天堂はハード(ゲーム機)ありきで、人材やコンテンツに乗っていく。しかし、ゲーム制作会社は新しいハードが出てこないと食べていけない。今はスマートフォンの普及で新しいネットワークシステムでマーケットが大きく変わったのは言うまでもない。

アニメ産業は映画よりもビジネスとして維持できたのは、日本のテレビ産業に依存できていたからではないだろうか。やがて、配信プラットフォームの発展により、外資の配信会社頼みになってしまった。

他のメディアでは、ラジオもじつはユーザーの変化を見てきている。
とはいえ、技術革新がなくなってしまったのでリスナーの数は減少しているのは確かだ。

ラジオもハード産業に依存している。

では、映画はどうだろう。

映画はソフト産業。
大きな技術革新はあまりなされていない。

フィルムで撮影し、公開していた当時はフィルムの35mmや70mmで上映体験を拡張していく動きもあった。やがて3Dも導入されたが、メガネの特別料金やコストがあっておらず、なかなか受け入れてもらえなかった。

映像ビジネスでの人材教育をしてない現状は変わっていない。

そんな映画産業から見たときに、人材教育をどういう形で、何を提供して、どういう人材を育てたいのか、じつは提示されてない。

日本の映画関連の学校は講師(監督、ライターなど)の経験値、職人技の経験に基づいてしかプログラムを提供してない。体系化されていない現状の中でビジネスを前提にした教育がなされていない。表現技術として、アーツやサイエンスなどの技術の部分は排除してきてしまったのではないだろうか。

また、国内のライターの人たちは極力技術などは持ち込みたくないという傾向もあることは確かだろう。

ストーリーテリングの技術の基本を知った上で、基礎を崩していくのと、基礎を知らないで自己流でやってもベースにならない。偶然の才能の勝負にしかならない。

<人材育成の問題点>
産業になっていない。
継続的になビジネスが形成されていない。

このままでは、いつまでたってもビジネスにつながる人材は育たない。

例えば、才能とはなんだろう?
才能は見分けられているのだろうか?
どんな才能なのか?

それを見極めるには技術しかない。
例えば、映画「おくりびと」はなぜ、アカデミー賞を獲れたのか?
興行収入はおよそ70億を超えた理由は?

では、シナリオが良かったのか?
題材が良かったのか?

2004年、2005年に公開していたら同じようにヒットしていたのか?まだインターネットなどのインフラや年金問題はなかった。

死を扱っているからだろうか。しかし、「死」を扱っている作品はたくさんある。ヒーローもののほとんどは死を扱っている。

『おくりびと』は本編ではストーリーラインが変わったり、ペイオフしていない部分もある。だが、この作品にはヒットをもたらす、映画のパワーを発揮させる要素が一つだけあった。

ストーリー分析は映画が当たるか当たらないか。「おくりびと」には扱われそうでありそうでなかったテーマがあった。

自分たちの生き様は一つしかなかった。

これまでの映画の中で扱われていなかった。
社会背景として高齢者の問題や911の将来不安があった。
この作品の「※プレミス」はアカデミー賞に値する。

世の中にはイイ話はいっぱい溢れているけど、作品を創る上で、
人=顧客の価値創造をどのように作っていけば良いのだろうか。

マーケティングの要素ではあるが、客観的、俯瞰的に見ることが大事ではないだろうか。

次から次に世界では新しいストーリーが生まれている。

よくて売れるものを目指す。
しかし、一つだけあれば良い。
なぜ、人はそれを買いたくなるのか?

ストーリー戦略からみたヒットの法則とは?

※「プレミス」の説明や分析については次回以降の記事で取り上げるつもりだ。


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