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マズローとケンリックの欲求モデルから考える現代の原動力① -欲求モデルの変遷を辿る

皆さん、こんにちは。
OneSelFの佐藤です。

秋真っ盛りですね。

秋には
カラダを動かしたくなったり
美味しいものが食べたくなったり
読書をしたくなったり
様々と"やりたい"ことが出てきますよね。

まぁ秋というのは一つのきっかけに過ぎないわけですが、
この「〜したい」はどこからやってくるのか、気になりませんか?
#僕はとても気になる

「〜したい」はいわゆる、『欲求』と呼ばれます。
欲求、と聞くと少しネガティブなイメージを抱く方も少なくないかもしれませんが、この欲求には人の行動を起こす途轍もないエネルギーを秘めていると思っています。

欲求は原動力

人の行動は全て、この欲求が源になっていると言っても過言ではありません。
たとえネガティブな行動でも、「〜を避けたい」という欲求からくることも多いからです。

そんなこんなで本日は、人間の行動の根源、『欲求』について深掘りしてみたいと思います。

本日のゴール

さて、そんな本日のゴールですが、このテーマ、おそらく2−3回のシリーズになると思います。

ということで、本日は第一段階として、

『マズローとケンリックの欲求モデルから欲求の変遷を見つめる』

というゴールに設定しようかと思います。

ちなみに僕は心理学の専門家でもなければ、こんな壮大な研究をできるリソースも持ち合わせてないので、どちらが正しいとか、間違っているとか、そういう話ではありません。

こういうモデルの実証研究は、時と場所、そして対象に結構な影響を受けま
す。
『検証する』という行為自体が非日常のアンナチュラルなことですからね。

一方で、こうしたモデルは思考の整理を促進し、さらには、「これはもっとこうあるべきだ」「僕の意見とは少し違う」など、活発な議論を引き起こし、事象に対する理解を深めてくれます。

先人たちに感謝の念を抱きながら、今を生きる僕たちに活用できる道筋を考えていこうかと思います。

マズローの欲求と僕

僕とマズローとの出会いは、おそらく学生時代の社会の教科書だったかと思います。
#あなたはいつ
#マズローとの出会い

マズローの欲求五段階のイメージ図

こんな図を見たことがある人も多いのではないでしょうか。

下位の欲求が満たされると、より上位の欲求に移管していくというピラミッドモデルです。

簡単に少し説明を。
全ての説明はマズローのモデルを元に、僕の理解と解釈を含む文章です。

  • 生理的欲求 食事や睡眠、排泄など生命維持に最低限必要な本能的な欲求。動物的な欲求でもある。

  • 安全の欲求 経済や衛生など生命を安全に維持するための欲求。ベーシックインカムやセーフティネットなどの政策や戦争・内戦などの治安状況が大きく影響する。

  • 所属と愛の欲求(社会的欲求) 自身がある集団や組織など社会的に必要とされていること(社会的役割)を望む欲求。どこかに所属することで自身の価値を認識する一方で、孤独や孤立という概念を感じるようになる。

  • 承認の欲求 自身の存在およびその価値を承認されることへの欲求。この承認をもたらす対象には他者と自己があり、後者の方がより高次的である。そして、後者が自己肯定感や自己効力感に繋がる。

  • 自己実現の欲求 承認欲求までの下位四つが満たされた場合に、自身の本質を問い続け、その価値を最大化しようとする欲求。良く自身の価値のみを向上する自己完結型の自分本位な欲求と誤解されるが、社会やコミュニティの中で自身が周囲にもたらすことができる価値を最大化することを指す。

僕がマズローの欲求モデルを本格的に用いたのは、創業計画書を作成する際でした。

トレーニングをメイン事業とした会社を創業するにあたり、当初は「人はなぜトレーニングをするのか」という部分を深掘りしていました。

特に僕個人的には以前の職種が病院でのリハビリテーションということもあり、病院のリハビリテーションをそのまま自費でやるのはなんか違うなーと感じていました。

そんな時に見つけたのが『自己実現』という言葉でした。
#マズローとの再会

“A musician must make music, an artist must paint, a poet must write, if he is to be ultimately at peace with himself”

「音楽家は音楽を奏でなければならない、芸術家は絵を描かなければならない、詩人は綴らなければならない、もし彼が最終的に自分自身と平和になるならば」

Maslow, 1943

このモデルでトレーニングを捉えていくと面白く、実はこのモデルの要素を含んでるんじゃないか、と視野が広がっていったのを覚えています。

トレーニングをしなくても死にはしないので生理的欲求には当てはまらないですが、トレーニングで健康になる(安全の欲求)、ジムへの所属はもちろん、トレーニングを通して共通のコミュニティに所属すること(社会的欲求)、カラダが変わってくることへの外的実感(他者承認)と内的実感(自己承認)、そして、そこから新たなことへチャレンジする意欲を促進すること(自己実現)

このように、トレーニングの価値を再定義する際に、マズローの欲求モデルはとても役立ちました。

ケンリックの欲求と僕

それからしばらくして、動物園で与えられた餌を食べているやる気のないライオンを見て、上述のように人の行動の源泉は『欲求』ではないかと考えるようになりました。
#きっかけは動物園
#人は飯を食うだけでは満たされない

それで、欲求について調べていくうちに、ケンリックという人が新しいモデルを建て直したという論文を目にしました。

この論文、Renovatingという語を使っているのが面白いですよね。マズローのモデルを建て直す、と言ってるんですが、結構違うものになってます。

それがこちら。

ケンリックの欲求階層モデル

結構違いますよね。
これリノベーション?、ってなるくらい。

何が変わったのか。

まず最上位に『子育て』が来たこと。
地位も名誉も配偶者も、なんなら身の安全も全て『子育て』に帰結する、ということ。

なかなかのインパクトです。
そして、なかなか具体的ですよね。

ちなみに完全なピラミッド型ではなく、重なっているようなイメージは下位の欲求が満たされたら上位の欲求が出現する、という積み上げ方式ではなく、全ての欲求は同時に存在する、という意味合いを示しているようです。

そして、もう一つの衝撃が、『自己実現』が消え去っていること。
僕がマズローと出会ったきっかけが無くなっている。
#少し寂しい

ケンリックによると、自己実現は結局のところ、愛や名声などを満たすものでしかない、と綴っています。

面白いのが、以下の一文。

Talented artists, musicians, or writers frequently show off their creative outputs to others and may receive very high levels of fame, resources, and romantic interest as a result. Pablo Picasso, Diego Rivera, Duke Ellington, John Lennon, and Pablo Neruda all converted their considerably actualized talents with paintbrushes, musical notes, and words into fame, fortune, and reproductive opportunities.

才能ある芸術家、音楽家、作家は、自分の創造的な作品を頻繁に他人に見せびらかし、その結果、非常に高いレベルの名声、資源、恋愛感情を得ることがあります。パブロ・ピカソ、ディエゴ・リベラ、デューク・エリントン、ジョン・レノン、パブロ・ネルーダは皆、絵筆や音符、言葉によってかなり現実化した才能を名声や富、生殖機会に転換させたのだ。

Kenrick, 2006

なかなかのインパクトです。
#想像してみよう
#ジョン・レノンは才能をモテる機会に転換した
#という解釈

かなり現実的な視点ですよね。

興味深い視点です。

この視点、「進化心理学」という視点のようです。

詳しくはWikipediaを参照していただいた方が間違いないですが、進化論を基盤にしている学問で、現存している心理メカニズムは種の保存に有利かつ種を反映させたものが残存している、というような理解でいいのではないかと解釈しています。

なるほど。

「自己実現」も種の保存に貢献するモチベーションの一つ。

そんな視点も興味深いですね。

どちらが先?

さて、2つの欲求モデルを見てきましたが、ケンリックもマズローもどちらが正しいということはなく、どちらも補完し合うものであるのかなと思います。

ケンリックも論文の中で以下のようなことを述べています。

An integration of Maslow’s approach to development with the biological life-history approach could provide a fuller understanding of the developmental psychology of human motives.

マズローの発達へのアプローチと生物学的アプローチを統合することで、人間の動機の発達心理をより深く理解することができるかもしれない。

Kenrick, 2006

視点が違うと見える景色も変わる、ということですね。

『自己実現』のマズローと
『種の保存』のケンリック。

個人的には
『理想』のマズローと
『現実』のケンリック。
とも捉えられるかなと思います。

どちらも正しい。
色んな視点で物事を捉えるのは重要です。

ただこれ面白いのが、時代変遷として、
マズローの論文が発表されたのが1943年、
ケンリックが2010年。

約70年の時を経て、新しい視点が加わった欲求モデルですが、
結婚しない・子どもを産まない選択肢が増えてきた時代の流れと逆行している感じもします。

そして、これからの時代に人がどう適応して、どこに欲求を感じていくのか、この辺りを考えることが重要な気がしています。

次回のゴール

というわけで今回は、

『マズローとケンリックの欲求モデルから欲求の変遷を見つめる』

というゴールに向けて綴ってきました。

次回はこれらの変遷を踏まえ、

最近の欲求の動向とモデルを考えてみる

というゴールに向けて綴ってみようかと思います。


今回も最後までお読みいただきありがとうございました^^



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