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それだ〜

来たこともない通りすがりのおじいさんが、フィルカメラで撮って現像した写真を届けてくれた。なんかいいなあ。ていう、私が髪の毛を切ってもらってる美容師さんのインスタグラムの投稿とか、二年前、学校前のバス停でバスを待っているときに見た、私の気分なんてほんとうにお構いなしにきれいでからから乾いた秋のようすとか、私なんかに本気で片想いしていたへんてこな男の子との恥ずかしいけどじつは嬉しかった数ヶ月のこととか、朝起きたら台所の机にかたちのきれいな落ち葉が置いてあって、これなに?と父に聞くと「今日庭でいちばんきれいな葉っぱ、〇〇(私)の今日の本のしおり用」とかって言ったこととか、はじめての一人旅でとおくまで行った先の書店で出会ったひとにさいご、「私のこと覚えていてくださいね〜。」と何気なく言ったらほんとうに一瞬だけ時が止まって、「普通だったらそれって思ってても言わないよ、覚えてるね〜っていうのはこっちだし。なんかその言葉いいね。」って嬉しそうに言うから、私こそ、その言葉でなにかじぶんに近いものを感じてすごく嬉しいきもちで帰ったこととか。もっとある。松永良平さんの『ぼくの平成パンツソックスシューズソングブック』をさっきようやく読み終えたんだけど、私は音楽に興味があるだけで詳しくないんだけど、読んでいる時間がほんとうに幸せだった。上も前も向けないときも、松永さんの言葉にはなぜかすごく前向きでたのしい気持ちをもらえたし、私の自信のない部分が良いほうにパワーアップした。ような。気がした。いや、絶対した。好きなページがたくさんあったから、この本についてはまたゆっくり書いてみたい。本でいうと、一人旅のお供として持っていった松浦弥太郎さんの『場所はいつも旅先だった』のニューヨークのクリスマスの話もだいすきだったなあ。あたたかいものにあふれていて、行ったこともないのに私の頭の中では若き日の松浦さんがいた部屋と冬のニューヨークが完全に想像できてしまってた。心がやわらかくなる瞬間ってそう多くはないけど、あのときバス待ちの時間にみた、今も毎日みるような景色のなかでみた、なんでもない秋の日みたいに小さすぎることでもずっと頭のなかには残っていたりするし、いつも感じるだけ感じて、想うだけ想って、置きっぱなしにしてしまうから明日からの私をすくうためにも、貯金みたいなかんじで。へんな終わりかた。

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