WBC連覇への課題。日本球界はMLBとのストライクゾーン乖離を解消できるか
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悲願の世界一達成。同時に見えたストライクゾーンの課題
日本時間3月22日、侍ジャパンはWBC決勝でアメリカと対戦。3対2の接戦を制し、見事世界一に返り咲いた。野手陣のパワー、投手陣のスピードが大きな成果を導いたということで、日本選手のポテンシャルを証明する意味でも、格別な意味がある優勝だったのではないだろうか。最後の大谷翔平(エンゼルス)とマイク・トラウト(エンゼルス)の勝負は、世界中の野球ファンが待ち望んだ光景だったはず。第5回WBCは日本の野球ファンにとって、これ以上ない大会となった。野球への注目度上昇という意味でも、大きな影響をもたらすだろう。
ただ結果としては優勝を果たしたが、これからの日本野球について課題も見えた大会となった。今回注目したいのがストライクゾーンの違いの問題だ。今大会の審判はMLB勢を中心に行われた。普段と違う審判ということもあってか、近藤健介(ソフトバンク)や村上宗隆(ヤクルト)など侍ジャパンの打者がストライク判定に驚く表情が多く見られている。NPBを中心に観戦するファンの中にはこうした判定に、「ストライクゾーンが広すぎる」と疑問を持つ方もおられたかもしれない。しかしああいった判定は実はミスではなく、妥当なものなのだ。
例えばアメリカ戦2回裏近藤の打席、1-1からの3球目内角高めへの投球。近藤は自信を持って見逃したが審判の判定はストライク。これにはテレビで解説を務めた古田敦也氏(元ヤクルト)も思わず「えっ?」と驚きの声を漏らした。NPBの感覚では明確に高めに外れたボール球である。
しかし実はこの投球はストライクゾーンに収まっている。しかもぎりぎりではなくかなり余裕をもって収まっているのだ。以下の図[1]がこのとき近藤と対戦していたアーロン・ループの投球分布。このうち最も高く位置しているオレンジ色の投球がそれである。ゾーンの枠にかすりさえすれば判定はストライク。それを考えるとこの投球は枠にかすりすらしていない明確なストライクなのだ。
日米のストライクゾーンはなぜこれほどまでに乖離したのか
ストライクゾーンの日米間の違いは国際大会の際、また日本選手がMLBに挑戦する際に度々叫ばれていたことだ。
かつてストライクゾーンの違いについて日米間の差として指摘されていたのが、内外角への広さの問題だ。「MLBのストライクゾーンは内に狭い一方、外に広い」。2000年代にはこういった言説が度々聞かれた。NPBの打者がMLBで通用しない一因として語られたこともある。こうしたストライクゾーンの違いが実態としてどの程度あったものなのかはわからない。だが冒頭で紹介した現在のストライクゾーンの日米差は、こういった類のものではない。当時から環境は変わり、また違ったかたちで乖離が生まれているのだ。
MLBにおける変化のきっかけはトラッキングシステムの登場だ。投球を機械的に追尾するトラッキングシステムの導入により、投球がストライクゾーンを通過したかどうかを確認できるようになった。これはご存知の通りだ。ただこの前提として、ルールブックの定義に従ったとき、ストライクゾーンがどの程度の広さになるかを具体的に把握できるようになっている。
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