見出し画像

WBCでも要注意?高めへの速球トレンドは曲がり角へ

※こちらの記事は、野球データサイト「1.02」の有料会員向けに配信しているメールマガジンの一部です。有料会員になるとメールマガジン配信のほか、守備指標UZRや総合指標WARなど、日本ではほかに見られないセイバーメトリクス指標も自由に閲覧できるようになります。ご登録は↓から。https://1point02.jp/op/reg/mailreg.aspx

高めの速球が効果的だった2017年アメリカ戦

 3月9日に開幕したWBCで侍ジャパンは11日時点で3連勝。過去最高のメンバーとの定評に違わぬ素晴らしい戦いを続けている。ただここまでの1次ラウンドは格下相手との対戦が多かった。しかし今後ラウンドを進めていくとそうはいかない。特にプールC、Dに属する中にはMLBの主力クラスがずらりと並ぶ国もある。こういった国とどう戦うべきだろうか。

 ここ10年ほどでMLBは大きく変化した。トラッキングデータの導入、研究が進んだことにより、得点を奪うため、失点を少なくするために必要なことを数字で把握できるようになった。打者の側で優れた成績を残すために重要であることがわかったのは、打球角度と打球速度だ。具体的にどういった打球を放てば得点につながりやすいことがわかったことで、多くの打者がこうしたスタイルを目指すことになった。「フライボール革命」である。

 そして投手も変化した。トラッキングデータの分析により、速球は高めへ投げると空振りを奪いやすいことが再確認され、高めの速球を増加させたのだ。フライを打つためのアッパースイングでは高めを打つのが難しいこともこの傾向を助長した。フライボール革命に投手も対応したのだ。

 前回2017年のWBCを思い出してほしい。2017年はすでにMLBの多くの打者がフライボールを放つことを目指しはじめていたタイミングだった。MLB過去10年におけるフライ割合を表した図1[1]を見ても、2017年にはすでに値が向上しはじめている様子がわかる。

 そしてこのWBC準決勝アメリカ戦で登板した菅野智之や千賀滉大は、実は高めのストレートで空振りやファウルを多く奪っていた。配球がどれほど意図したものだったかはわからない。偶然真ん中から高めに浮いた速球もあっただろう。ただそれでもそうした速球は2017年、フライボール革命がはじまった頃のアメリカに対しては効果的だったのだ。フライボール革命は現在も進行中。フライ割合の高い打者は年々増加している。今回のWBCにおいても高めの速球をどのように使うかはカギとなる。

変わりはじめた打者の傾向

 ただこうした傾向に実は変化が生まれてきてもいるようだ。

ここから先は

1,362字 / 2画像

¥ 200

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?