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偵察機の未来(全6回最終回)

◆無人機にその座を渡すことになるのか。

 前回の続きです。実は有人偵察機が活躍していた1970年頃から無線機の小型化や電子誘導装置の発達を受け、無人の航空機の開発が始まっていました。
 20世紀末になると、コンピューターの発達により無人航空機(UAV=Unmanned aerial vehicle ドローンと呼ばれることもある)の実用化が始まります。
 無人機は、乗員スペースを必要としないために機体の大幅な小型化が可能になります。またパイロットの疲労を考慮しなくてもよいため、より長時間の偵察が可能であると同時に、撃墜などによる搭乗員たちの戦死・戦傷も防ぐことができるのです。危険度の高い任務、撃墜されて捕虜になると困るような任務では非常に有効な存在となってきました。

 最初に実用化された無人機はRQ-1プレデターです。1995年から運用開始され、生産機数は360機。コクピットのない異様な姿は話題になりました。

RQ-1 プレデター(左)と、MQ-9リーパー(右)

◆歴史は繰り返す?無人機は再び攻撃、戦闘の多様化へ

 RQ-1はすぐに攻撃機としての運用に転じ、MQ-9リーパー(2007年運用開始)、MQ-1Cグレイイーグル(2009年初飛行)、アヴェンジャー(2009年初飛行)などの戦闘攻撃機型へと進化していきます。 
 高性能偵察機のRQ-4グローバルホークは日本でも3機購入が決まって有名になりましたね。機体1機自体は130億円ぐらいなのですが(それでも高い!)、司令部機能や地上設備などの初期費用で1,000億円の予算が話題になっています。青森県の米軍三沢基地に2機配備された米空軍の無人偵察が地元自治体関係者や報道陣に公開されたこともあります。

整備中のグローバルホーク

 また、斥候や地上部隊の偵察任務を担う、小型軽量の電動小型の偵察機も生まれてきています。人が負傷するリスクがないため、今後もこのような無人航空機は増えていく見込みなのですが、逆にリスクがない分、戦争がエスカレートしていく危険性も考えられると思います。
 RQ-11レイヴンは2kg程度の小型軽量偵察機機。手投げで発進し、ノートPCから近距離偵察の管制を行います。お値段約400万円。もう、ラジコンですね。

RQ-11レイヴン超小型の無人偵察機

◆再び無人機による多種化の時代が来るか?

 さて、厳密には標的機の開発が無人機の始まりでしたが、本格的な任務は有人飛行機と同じく「偵察」が最初になります。
 そして、第一世界大戦同様にすぐに攻撃機や爆撃機に転用されて、任務が多様化していきます。今では、ミサイル攻撃も出来るMQ-9リーパーなどの無人攻撃機も実用化されています。今のロシアVSウクライナ戦では、無人偵察機を無人攻撃が撃墜する。ドローン同士の戦いも起きています。

IAI ハロップ 無人で徘徊飛行して敵機を見つけて自爆攻撃する今までにないタイプも!

 歴史は繰り返すというのか、それはまるで第1世界大戦に飛行機が一斉に多種に枝分かれした時を彷彿とさせます。生命進化の爆発のように今現在、航空機は大きな転換点を迎えているのかもしれません。
 無人偵察機→無人攻撃機→無人爆撃機→無人輸送機→無人戦闘機・・・そしていずれは私たちを運ぶ無人旅客機まで?

◆AIと共存した安全な空の未来へ

 旅客機の航空事故の約半分は操縦ミスなどのヒューマンエラーによるものなので、無人機の方が安全という声もあるのですが、でもパイロットが不在だと、ちょっと不安にもなりますね・・・。
 AI旅客機というジャンルになるそうですが、まず先に貨物輸送から運用されると思われます。何年後になるのでしょうか・・・。
 有人にせよ、無人にせよ飛行機の最初の任務が「偵察」だったというのはなにか興味深いものがありますね。
 AIのもたらす利便性とデメリットをちゃんとコントールしつつ、共存できる未来を築けたらいいなと思います。
 個人的にはこういう様々な任務は一旦外して、もっと純粋に空を飛ぶこと自体に目的と意義を見出す。それがヒコーキたちの持つ魅力であり、ロマンを感じてなりません。
 全6回に渡り、ありがとうございました。

神風号(九七式司令部偵察機となった試作型)


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