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井岡選手の報道について:CBDはドーピングになるか

こんにちは

ワンインチの柴田です。

ニュースをみてびっくりしました。

ボクシングWBO世界スーパーフライ級チャンピオンの井岡一翔選手が試合前にドーピング検査(簡易検査・尿検査)で大麻成分が検出されたとのことです。
その後、精密な検査を行ったところ、3つの検出成分が、いずれも世界ドーピング防止機構(WADA)が競技会時の使用を禁じている物質だったということです。

JBC永田有平理事長は「井岡一翔(Ambitionジム)選手に関して報道がなされておりますが、現在、倫理委員会にて調査、審議を行っております」と現状を報告するとともに、「当該倫理委員会の審議に影響を及ぼすことを避けるために、現時点においてはこれ以上の発表は差し控えさせていただきます」と強調。「尚、当該倫理委員会の結論に至りました段階で、速やかに報告する所存でございます」としている。(日刊スポーツ)

一部報道では井岡選手はセルフケアでCBDオイルを使用しており、そのオイルから検出されたのではないかと弁護士が述べている、という報道もありました。

CBDオイルへの言及があったので、そこにフォーカスをしてワンインチとしての考えを発信しようと思います。
現時点で分かっている事実と、日本におけるCBDの現状を織り交ぜながら、推測を含む形で書かせて頂きますのでご了承ください。

基本情報:CBDとTHCと他カンナビノイド

まず、CBD(カンナビジオール)自身は、日本国内でも違法成分でないことを最初にお伝えしておきます。
CBDは麻の成分(カンナビノイド)の一種です。
カンナビノイドは100種類以上あるといわれており、その中の成分には違法となるものと、そうでないものがあることを知っていただきたいと思います。
カンナビノイドの中の違法になる代表的成分がTHC(デルタ9-テトラヒドロカンナビノール)です。これに対し、違法にならないのがCBDとなります。
日本の大麻取締法は麻の部位によって違法性を定めており、「大麻の成熟した茎と種子からとれる成分」以外は違法としています。じつは、CBDやTHCなど成分による規制は明記されていませんが、現時点で、厚生労働省による実質運用上では「CBD=合法、THC=違法」としています。

CBDはドーピングになるか

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WADA(世界アンチドーピング機構)ではCBDは2018年よりドーピングの指定薬物から除外されています。
これはCBD自体が広く海外では使われていること、一部医薬品としても認められていること、精神作用や依存性中毒性がないことも含め安全性が担保されていることが背景にあると考えられます。

しかし、THCを含む他カンナビノイドに関しては依然としてドーピング対象となっておりますし、WADAとも密接なかかわりのあるインフォームドチョイス(英)ではCBD製品に対しても認定は行っておりません。(※インフォームドチョイスの認定を受けた栄養補助食品は安全の証で、スポーツ選手に愛用されている。)

ちなみに、インフォームドチョイスがCBD製品を認定しない理由についてですが、「CBD単体であればルール上はドーピングにはならないが、現時点での製品にはTHCなど他カンナビノイド混入のリスクがあるため」としています。
とはいえ、多くの海外アスリートがCBD製品を使っていることもまた現実なのです。(特に、ゴルフ、アメフト、野球、サッカー、格闘技、サーフィンなどの競技に携わる選手によく使われている模様)

日本のCBD製品について

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ここ数年において、日本でもネットや実店舗でCBD製品はオイルやグミなど様々な製品を買うことができます。含有されているカンナビノイドは以下の3つの抽出法によって麻から抽出されています。
・アイソレート(単離)
・ブロードスペクトラム、ディストレート
・フルスペクトラム
以上の抽出方法によってカンナビノイドが抽出され、各製品に加工されます。3つの方法の中では、下にいくに従ってCBD以外の成分の混入リスクが上がります。
今回、井岡選手が「使用していた」と述べているCBDオイルが上記のいずれの抽出法からできたものかはわかりませんが、日本で流通しているCBDオイル使用によってドーピングの疑いがあったとするならば、アイソレートではない可能性が高いと思います。アイソレートであれば、他カンナビノイドは検出できるレベルで含まれていないからです。
しかし、いずれの抽出方法だったとしても日本で一般的に販売されているCBDオイルであれば、輸入段階においてCBD以外のカンナビノイド成分が含まれていれば違法になります。
つまりドーピングの疑いをかけられること自体が不思議なことなのです。
CBDを取り扱っている事業者としては信じ難いことと言えます。
ここで、いくつかの可能性について推測をしていこうと思います。

CBDオイルにTHCが含有されていた可能性

井岡選手の弁護士によると、大麻成分が検出されたのであれば、選手が使用しているCBDオイルが影響している可能性がある。としています。
大麻取締法の関係で、日本でのCBD製造も精製もできません。
つまり、日本のCBDは、海外からCBD製品として輸入することになります。
ここで、今一度CBD製品を日本に輸入する際のレギュレーションを説明させて頂きます。

・事前に書類において、違法成分が含有されていないことを厚労省と税関に自己申告する。
・税関において、違法成分が検出されない。

すこし詳しく書くと、税関ならびに厚労省に対して、以下の書類の提出が必要となります。

①合法の部位(成熟した茎もしくは種子)から抽出されたという証明書
②THC(デルタ9-テトラヒドロカンナビノール)が0もしくは検出限界値以下であることがわかる成分分析表
③合法の部位から抽出したことがわかる原材料の写真

この時点では、厚生労働省によって都度の物品の精密検査は行われません。
提出した成分分析表と輸入するロットが一致しているのならば、OKということになります。
厚労省に提出する申告内容はあくまで業者側の性善説に基づいて提出がなされている状況です。
つぎに、税関での製品の内容検査となります。
これは輸入ごとに毎回行われます。
おそらくですが、THCがかなりのレベルにならなければ検出されない仕組みになっていると推測されます。
このような形で検査を通過したCBD製品が、皆さんの手元に届くことになります。
しかし、問題があります。税関を通過することができたCBD製品のTHCの含有がギリギリ通過レベルであったとしたら、その成分分析表を提出された厚労省は輸入に対しOKを出しません。
提出書類用の成分分析の検出限界値は業者側に任されています。
つまり、提出書類の数値は、業者の都合で操作される可能性があるのです。
安全と信用を担保するために、業者によっては第三者機関に分析依頼をするところもあるですが、自社ラボによる検査を行って有意に検出限界値を上げている業者も中にはあると考えた方が良いかと思います。
輸入業者に故意があったか、無かったかは分かりませんが、実際に、すでに2社のCBDオイルにTHCが含有されていることが厚生労働省によって発表されています。

つまり、国内に輸入されたCBD製品の中には、税関の検査は通過、しかし、厚生労働省が輸入後に行った検査においては、検出ということになります。

この流れを踏まえて、今回の件であるドーピングにおける大麻成分検出について考えていきたいと思います。

まずはドーピング検査でTHCが検出されていたとしたら、なぜTHCが含有されていたのか考察していきます。

1、業者側が事前提出書類を偽造している可能性
2、本人が違法成分を使用していたことを理解しているのに、「CBD」だと謳っている可能性
の二つが考えられます。

1、業者側が書類を偽造している可能性について

これは、先ほど述べたように、輸入時の検査体制の問題です。THCを一定以上含有していたとしても、提出書類の数値を問題ない形で提出し、さらに税関の検査において検出されなければ輸入が可能となってしまいます。
可能性としては、輸出元が提出書類を偽造・改ざんしている、または輸入元が偽造・改ざんしている可能性が否定できないということです。

2、THCが入っていると選手が理解しているのに「CBD」だと謳っている可能性

これは、もしそうだとすると当人の言い訳ですから、何かコメントすることは控えさせていただきます。

先日、CX(フジテレビ)で「警察24時」という番組が放送されておりました。
こちらでも大麻関連の内容が紹介されていました。
使用者(被疑者)本人は、CBDオイル、CBDリキッドだと訴えていました。
この場合も、先ほどの考察同様に、輸入時における制度上の不備、または、本人の逃げ口上のいずれかと考えられます。
少なくとも、THCとCBDの効果実感が異なることから、使用者本人は、中身が何であるかは自覚があるはずです。
CBDという合法の成分を隠れ蓑に、違法なTHCを所持している人がいる可能性も十分にあるということです。
今回のケースがこういったケースなのかどうかは確定的な言及は避けますが、可能性の一つとして挙げることはできます。

ドーピングに話を戻します。
記事によれば井岡選手の件はその後の警察での捜査は終了したようです。
であれば警察や科捜研が検出できるレベルよりは低く、ドーピング簡易検査ではひっかかるレベルの大麻成分含有だったと推測することもできます。

ここで「ドーピングにおける検出基準」と「厚労省検査の基準」が異なっている可能性について考えてみましょう。
仮定として、「厚労省の基準は満たしたCBD製品を使用したが、ドーピングの検査の方が厳しく、結果検出されてしまった」とします。
しかし、ドーピングの検査方法を考えると、いったん身体に吸収されたものを尿検査などで判定をすることになります。
尿検査でTHCを検出できるレベルに達しようとすると、相当な量を飲まなければならないと思いますので、ドーピング検査の方が厳しかったとしても、この仮定は非現実的かと思います。
このあたりの詳細な情報は私は持ち合わせておりませんし、まだボクシング協会としての最終見解が出ていない中で憶測で語ることはよくないと私は思いますので、この程度で考察は終えます。

アスリートが安心してCBD製品を使うためには

今回井岡選手が尿検査の簡易検査で大麻成分、おそらくTHCが検出されたのではないかという内容を扱ってきました。
欧米では、ドーピングではないCBD製品はアスリートの間でも広く使用されており、日本でもCBD製品を使いたいというお声はワンインチでもよく耳にします。

ここからは、日本において、アスリートを含む多くの方が安心してCBD製品を使っていただくために1つだけ、そのポイントをお伝えして締めくくりたいと思います。

複数種類の成分分析表を入手する

CBD業者は当該製品の成分分析表を必ず持っているはずです。

「輸出元の成分分析表」と「輸入元の成分分析表」が合致することを確認してください。これらの分析表は、第三者機関の検査結果である方が好ましいです。

国内では調べていない、という業者も中にはいると思います。その場合は、検査結果を業者側に要求するか、独自に海外に検査を依頼する形になります。

およそ2g程度あれば4万円程度で検査は可能です。結果は2週間程度でわかります。(依頼があれば弊社でも受けることができます。)

また、これはドーピングとは無関係ですが、食品分析において、微生物や一般生菌類や大腸菌類や残留農薬など多岐にわたる食品分析をしているかもチェックしてみてください。

まとめ

今回の一件で知っておいていただきたいことはCBDという成分そのものはドーピングには該当しないということ、多くの効果が期待できることからアスリートからは注目されているということです。

また今後、使用を考えているアスリートを含む多くの方は、CBD以外のカンナビノイド(特にTHCは注意)はドーピングに該当することと、何より法的に違法であることを知ったうえで、安全で安心な製品を購入していただきたいと思います。

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