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26年の集大成ではなく、幕が下りる瞬間まで「最新が最高」を更新してくれたV6

衝撃だった。

2021年11月1日。V6としてのラストステージ。ファン以外の人も多く観る正真正銘最後のステージで、新しいダンスを取り入れ、新たな演出方法も取り入れ、ほとんどが最新アルバムからの選曲。「本当に今日でお別れなの?」と思ってしまう、セットリストだった。

26年のベストを取り入れた集大成ではなく、彼らは最後の最後まで「いまのV6」を追い求めていた。“お別れ”と思って挑んだ2021年だったが、いざ終わってみると、“出逢い”に溢れた7ヶ月間だった。

私がV6の沼に落ちたのは、2019年の秋頃。AmPmが作曲した「All for you」をきっかけに曲はいろいろ検索していたが、より深くハマるきっかけとなったのが、『愛なんだ2019』だった。アクション俳優として名を馳せる岡田くんが高校の部活動アトラクション部の演技を指導する姿を見て、プロ意識の高さに感嘆した。

「アクションをやるということは、攻撃一つ一つを暴力で終わらすのではなく、芸術まで高めないと人はスゲエとは思ってくれない。その一手一手にどこまで責任を持てるか」

この言葉を聞いて、岡田くんのアクションに対する真剣さに惹かれ、この番組をきっかけにV6にハマっていった。

時は流れ、2021年3月12日。V6から“解散”の発表があった。既にファンクラブに入り、彼らの最新情報を心待ちにしていた身としては予想だにしていなかったことで頭が真っ白になった。「永遠なんてない」。頭で分かってはいながらも、推しに当てはめることは心理的にできず、ずっと目を瞑っていた出来事だった。

それでも、“その時”が来てしまった。最初こそ受け入れられずに頭が真っ白になったが、ファンクラブ動画で胸中を吐露してくれる姿を、「ファンが心配」と支えてきてくれたファンを第一に考える6人を見ていたら、少しずつ受け入れられるようになっていった。そして、“別れ”の瞬間まで「残り7ヶ月ファンとして後悔のないように応援しよう」と考えるようになった。

そして、私たちはそこからの7ヶ月で今まで観たことがないV6とたくさん“出逢う”こととなったのだ。

V6ファンの間では最早当たり前となった、怒涛の情報解禁。解散発表から約2ヶ月嵐の前の静けさを過ごした後、過去の比ではないほど情報が連日発表された。

6月2日に発売された53rdシングル「僕らは まだ / MAGIC CARPET RIDE」では、メンバー同士で相撲を取り、じゃれあう姿がYouTubeに残され、5月には公式Instagramがスタートし、pinoのCMではメンバー同士での過去の思い出が6本のCMで語られ、「親愛なる君へ」と題されたパールネックレスの販売が始まり、Softbankとの共同プロジェクトで51本もの動画が解禁され、最後のアルバムでは6人の演技力が遺憾無く発揮されたリード曲のMVが発表され、楽曲のモチーフが散りばめられた「Full Circle」のMVが解禁され、FC限定の仮想空間アプリ「V-Land」がオープンし、Amazonプライム・ビデオでV6のコンサート映像8作品の配信が始まり、見た事ない分厚さのベストアルバム「Very6 BEST」が発売され、懐かしいメンバー勢揃いの「学校へ行こう!2021」が生放送され、FC会員に予告なしで家族写真が届き、江戸川区立なぎさ公園に「ブイロクの木」を寄贈したとのニュースが駆け巡った。

そんなやることが目白押し&同時進行で進む中、本職であるアイドルとしての新たな楽曲で、私たちは解散に向かう彼らの真の姿勢を見ることとなった。

最も顕著なのが、最後のアルバムとなった『STEP』。リード曲の「雨」は、静かなピアノから始まり、Aメロ、Bメロ、サビへと展開するKOHHが作曲した最新鋭のR&B/ビートミュージック。今まではリード曲にはあまり選ばれないような楽曲だった。

さらにMVの演出も衝撃を受けた。冒頭では、雨が降り頻る中慟哭する森田剛の演技から始まる。続くは銃に見立てた手を突きつけられた三宅健、撃たれたように廃ビルの階段に突如現れる岡田准一、縄で縛られて身動きが取れない長野博、車内で意識を失いかける井ノ原快彦、囚われた部屋で雨を眺める坂本昌行。映画のようなカットで静かに音のない物語が進んでいく。その後、森の中で6人6様バラバラで踊るものの、次第に踊りがピタッとあうように。それぞれ外の世界で演技力を磨いてきた6人が、ホームに帰ってその力をV6のために使っていることを示しているかのようだった。

『STEP』での挑戦はそれだけではない。作曲者にKeishi Tanaka、堀込高樹(KIRINJI)、小原綾斗(Tempalay)を入れ、今までのV6と異なる楽曲に仕上げた。特に小原さんが手がけた「分からないだらけ」は不協和音を取り入れ、不思議な世界観を創り出した。

V6として最後のアルバム。そう考えたら、「愛なんだ」や「Darling」など明るくみんなで歌えるダンスナンバーを揃えるのが順当だろう。それでも、今までの自分たちに満足することなく、最後まで新たな楽曲に表現を追い求めた。それが、6人が表現者たる所以なのだと思う。

そして、最後のツアー日程が発表。9月4日から11月1日まで全国9箇所を巡るツアーだった。私は残念ながら直接行くことはできなかったけど、解散日に行われる配信ライブに申し込んだのでいまかいまかとその日を待ち侘びた。

そして、デビューであり、解散日でもある11月1日。早くライブを観たいと思う一方で、まだ夢の中にいたい気持ちもあり、何とも表現しようのない感情を抱えながら正真正銘“お別れ”の日を迎えた。その日は朝からずっとそわそわしていた。配信開始は18時。仕事を終わらせ、17:59にPCにログインすると、同じように最後のV6を見届けようと待つファンがたくさんいた。

ライブの細かいことは以前書いたレポートに譲るが、最後の最後のライブで私たちは「常に最新が最高」を追い求めるV6と“出逢う”ことになったのだ。

会場が暗くなると紗幕にメンバーの顔が映し出され、剛くんの声で「僕らがまだ」と会場に流れる。各メンバーの声が流れた後、最初の曲は物静かなピアノから始まる「雨」だった。ラメ入りの黒いスーツを着たメンバーの姿が観えないほど照明を暗くして。色とりどりのペンライトと横からの一筋の光のみが幻想的に映し出される。

お茶の間の誰もが知る楽曲ではなく、“今のV6”を映し出した最初の一曲。26年歩み続けたきた最後のライブとは思えない曲選びに「最新が最高」を追い求める彼らと楽曲だけでなく、リアル(配信)でも“出逢えた”ような気がした。

そして後半になると、『STEP』からの楽曲が次第に増えていった。印象的だったのは剛くんがプロデュースした「家族」と、25周年に発表された「Full Circle」。

「家族」は、一般的な家族に向けて歌っているようでV6のことを表しているかのようだった。歌詞の中に表れる「血のつながり関係なく 俺たち家族」は6人の関係性を、「君は俺の命 二人で一人ひとり」は幼い頃から同じ時を過ごしてきた剛健の関係性を歌っているかのよう。6人を「そばにいない時も近く 俺たち家族」とプロデュースした剛くんは、解散してもV6はずっとV6だと自分自身に向かって言っているように感じた。

20周年のときに「あなたにとってV6とは」と問われ、「なんですかね、仕事仲間ですかね」とドライに答えた剛くんがプロデュースした楽曲。それだけで剛くんが見出したV6としての到達点を覗き見れたような気がした。

そして、25周年に発表された「Full Circle」。

気がつけば 遠くまで来たもんだ (皆が言う)
そんなに急いでどこへ行くの?
楽しければそれだけでいいじゃん (だけど)
遅かれ早かれ 歩み求め続けてきたMy Way

それぞれのTrain Train 次の場所まで

との歌い出しから始まるこの楽曲を初めて聴いたのは、2020年7月。解散なんて頭になく、25周年の歩みと決意を歌った曲ばかりだと思っていた。それでも、「正しい答えなんて一つじゃない みんなカラフルでいいんじゃない?」と歌う彼らを見ていると、26年かけてV6なりの在り方を見つけたことを歌っているようにも思える。俳優への熱が強すぎてメンバーと口を聞かなかったこともある岡田くん、アイドル以外に道を模索した6人を僅かながらも(本当に僅かながらも)見聞きしている分、目頭が熱くなってしまう。

本編最後は、このライブツアーのためにつくられた「目を閉じれば」。

「伝えたいことは山ほどあるんです。多分3日かけても伝わらないくらいいっぱいあるんですけど。やっぱり俺たちらしく、歌でみんなに思いを伝えたいと思います」

と井ノ原くんが話して始まった最後の曲は、まさに6人からファンへ向けた手紙だった。

歌詞の締めは、「ありがとうと 大丈夫を君に」。明日からV6のいない世界を過ごしていかなければいけない私たちに26年分の感謝と、離れていても目を閉じれば目の前にいることを伝えてくれる優しい言葉。ここだけは最新のV6ではなく、いつも微笑んで温かい目線を贈り続けてくれたお兄ちゃんたちがそこにいた。そんな6人のファンでよかった、幸せ者だと思った。

深くお辞儀をし、本編は終了。鳴り止まない拍手を前にもう一度彼らがステージへと現れる。メンバーそれぞれの言葉で“お別れ”を告げた後、正真正銘最後の楽曲となったのは、『STEP』に収録された「95 groove」。26年間ぶつかり合いながら、徐々に独自のグルーブをつくってきた彼ららしい選曲だった。

本日は最後の日で 君の隣踏んだステップ
愛しているなんてのは 嘘にしておくから

26年間踏み続けたステップ。それが今日で一旦終わる。愛しているを嘘にするなんて、恥ずかしがり屋の6人みたいでクスッとしてしまう。おおっぴらに愛を語らない6人だけど、26年経って心の奥底では「家族」以上の何かになったように思う。

そして、深い深いお辞儀をして6人がV6である時間が終わった。

最終日のライブ。実質的には“お別れ”の日だった。それでも、6人は今のV6との“出逢い”の場を用意してくれていた。最後のライブだったのだから、みんながよく知る楽しい楽曲を中心に構成することもできたはず。過去のアンコールのように1曲目はアルバムからで、2曲目・3曲目は有名曲で幕を下ろすこともできたはずだ。

それでもV6はありきたりの集大成を良しとせず、終わりの日が決まっていようがなかろうが、今までにない曲に挑戦し、今までにない踊りに挑戦し、今までにない演出に挑戦した。終わってみて初めて気づいた。このどこまでも追求する姿勢が私の好きなV6だったのだと。

常に「最新が最高」を更新し続けるからこそ、努力を惜しまないし、その先に最高の制作物を魅せてくれる。そんなV6だからこそ好きになったのだし、彼らの姿を追い続けたのだ。

“別れ”は、“出逢い”の始まり。11月1日を迎えるまで解散日はもっと寂しいものだと思っていた。でも、終わってみて感じたのは、新しいV6に出逢えた充足感だった。最後の最後で、「最新が最高」を魅せてくれたV6だからこそ、最後は最高の気分で終わりの時を迎えられたのだ。

V6で得た知見や経験を経て、彼らは2021年11月2日から新たな表現者としての道を歩む。V6の旅路は終わったとしても、それぞれの旅路はまだ終わらない。

そう、事故も病気もなく年順で天へ召され、井ノ原くんが「よお、岡田! みんなでMUSIC FOR THE PEOPLE 踊ろうぜ!」と天国で叫ぶその日まで。

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B09MZT5DYY/ref=atv_dp_share_cu_r

(今なら、Amazonプライムで2021年ラストツアーを観れるので、ファンじゃなくともぜひ。冒頭の15分だけ観てもらえれば森田剛さんにやられます)

このnoteは「書く」と共に生きる人たちのコミュニティ『sentence』 のアドベントカレンダー「2021年の出会い」の4日目の記事です。迷いに迷ったものの、別れと出逢いで執筆しました。(体調不良で4日目が過ぎてしまいました...すみません......)


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