場合の数の考え方と公式の正しい使い方

職業柄、場合の数の質問に答えることが少なくない。質問というのは、その程度によっていくつかのランクがある。最低ランクは『答えを教えて』最高ランクは『解答を見たがこの部分の意味が分からない』。いずれにしても、解答との差異を知りたくて質問してくることが多いだろう。

ちなみに、場合の数については、解答を見て分かる分からないを考えている時点でセンスが皆無であると忠告しておこう。なぜならば、場合の数は解法などいくらでもあり得るうえに、模範解答を作っている人間も大半はセンスが皆無の連中だからだ。

ともすれば、場合の数の問題へはどのように対応すればよいかだが、ここで、数学から算数へのステップアップを提案しよう。すなわち、一般化である。

例題(1) リンゴとミカンとオレンジを合計8個買う。このとき、8個の選び方は何通りあるか。ただし、リンゴとミカンとオレンジのうち、1個も買わないものがあってもよいとする。

例題(2) x、y、zは0以上の整数とする。x+y+z=8を満たすx、y、zの組は何通りできるか。

さて、シンキングタイムが必要だろうか。まるで見当もつかない場合は、答えや求め方などは考えなくてよいので、なぜ、この2題を並べているのかを考えてほしい。

結論から言えば、どちらも答えは45通りである。式については、後述。

すなわち、本質的に全く同じ問題なのである。それに気づけるかどうかが、数学と算数の違いであり、複雑な問題文をより簡潔に考えることこそが、一般化の極意である。

ところで、これを正解した方も多いだろう。どのような立式であったろうか。あるいは、気合で全パターンを挙げただろうか。

ここで、式の作り方だが、『重複組み合わせを使う』というのが中途半端に学習をしている人間の解答である。なぜそこまでこき下ろすかと言えば、重複組み合わせは学習指導要領外だからだ。要するに、それを使わなければ解けない問題があると思っている時点で文系数学の域を出ない。

もちろん、重複組み合わせの本質を理解している方であれば、今からの議論は読むまでもないことであろう。すなわち、『区切り』と『同じものを含む順列』である。

例えば、”〇〇|〇〇〇|〇〇” のように、8個の〇を2本の区切り|で分ける。すると〇は左から順に、2、3、2と分けられる。これをx、y、zに当てはめると、x=2、y=3、z=2となり、答えのうちの1組を作ることになる。

よって、〇×8個と|×2を一列に並べる方法を考えれば、自然とx、y、zの解も作れるのだが、ここで、すべきことをよくよく見てみれば、同じものを含む順列そのものであり、作られる式は、

(8+2)C8×2C2   計算すると、45通りになる。

要するに、だ。数学の問題的な本質を知るためには、与えられた問題文を自分のわかる範囲まで落とし込まなくてはいけない。与えられた問題文をそのままの形で考え、あまつさえ、意味も分からず公式だけを当てはめているうちは、延々と算数のおままごとを続けているだけである。

国語以上に、問題文に真摯に向き合うのが数学の第一歩である。

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