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【詩】 真似事


レストランやりたかった
ずっと昔からやりたかった
 
和風れすとらん料理上手
って木の棒で砂場に書いて
店を構えてみた
 
洗剤の空箱でご飯を炊いて
団子をゆるく握る
沈丁花のスープは香り高くて人気があった
落ちてるのを使うからタダ、
スギナの和え物はシャベルで丁寧に切った
 
   いらっしゃいませ
 
お客さんは祖母と猫のエマ
美味しいねって目を細めて
騙されてくれた
 
淡い時間は急ぎ足で
私は結局
レストランやれませんでした
優しくない人を拒みたくて
病名までつけられて
今は四角い部屋の真っ白い天井を眺めています
 
真似事でもいいから
笑っていられたらよかった
再来年くらいには
パン屋さんとかウエイトレスでもいいかもなって
軽々しく泥を塗る会社勤めのお客さんのことも
つめたいメリケン針みたいなお客さんのことも
上手に騙して言えたらよかった
 
   ありがとうございました
   またお越しください
 
どうどうどうと風が吹きました

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