【アートコートギャラリー@桜ノ宮】空間のアート

大阪・桜ノ宮にある”ARTCOURT Gallery"を訪ねた。
今回、ARTCOURT Galleryのディレクターである大場さんに話を伺った。

ギャラリーの紹介

ARTCOURT Gallery は2003年設立のギャラリーで、主に現代美術を取り扱う。

企画展示を行う作家は若手からベテランまで多様であるが、独自のコンセプトと技術を確立し国際的に活躍している方を多く紹介している。

近年は主に個展形式での展覧会を開催しており、一人の作家を深く掘りさげて、その作品や世界観を楽しむことができるように工夫されている。

そして、ARTCOURT Gallery の特徴には、天井高7mの大きな展示スペースをもつ点も挙げられる。足を運んだ際にはぜひ、この空間を使ったダイナミックな展示作品を見ていただけたらと思う。

(写真:川田知志「open room」
壁画を主軸に、古典技法であるフレスコ画を現代の都市空間へと応用し、
インスタレーション作品を制作する若手作家・川田知志の初個展。
© Satoshi Kawata / 撮影:表恒匡 / 写真提供;アートコートギャラリー)

ギャラリーの役割とは

ギャラリーの主な仕事は、「美術のフィールドにおいて作家を社会に出していくこと、また、その作家を求める人を探して作品を届けにいくこと」。

若手作家は「作品制作と発表を続けて年月を経る中で変化がある」という。「変化という成長の飛躍に期待を込めて、作品がすぐに売れる・売れないに関わらず見守り、共に応援してくれる人を増やしていく」のも重要な仕事のひとつである。

アートに対する考え

アートを敬遠されている方々も多いと思う。

この記事を読んでいただいているあなたはそのようなこともないかもしれないが、一般的にみるとやはりその割合は多いだろう。

しかし、近年ではアートに関する注目が高まっているのは確かだ。

アートの仕事は、もちろん業界の外からは見えにくい。「学生の頃に憧れを抱いていたアートの姿形はいま思うと実はデザインに近くて、美しく編集されたものに引き寄せられていたとある時気づいた。ギャラリーの仕事にも、作家の世界観や作品を紹介するうえでデザインや編集の力が多分に求められる」。

目まぐるしく変化していく現代において、社会で目覚ましく重要視されるようになったデザイン力。これにはwebツールの発達が貢献していることは大きい。

これがきっかけでアート業界が盛り上がって行くのは嬉しいことである。

(写真:「15年」会場風景より
アートコートギャラリー15周年を記念する展覧会「15年」では、若手〜中堅作家を中心にギャラリー取扱作家のグループ展が行われた。
© Satoshi Kawata, Chihiro Yoshioka, Taiyo Kimura, Genta Ishizuka,
Yasuyoshi Botan, Chisato Yamano / 撮影:来田猛 / 写真提供;アートコートギャラリー)


「アートに対して少しでも抵抗が無くなってほしい」と大場さんは語る。
食わず嫌いはせずに、まずは一度ギャラリーや美術館を訪れてみて、その世界に触れることが大切だ。

他ならぬ大場さん自身、子どもの頃から母親がギャラリーや美術館に連れていってくれたおかげでアートに抵抗は抱かず、むしろ一般大を出身後に勉強を始めてこの世界に飛び込んだ方の一人である。

「知れば知るほど、アートとは何かという本質的な問いも深くなっていく。かといって、作家も私たちと同じ空気を吸って、同じ時代を生きるひとりの人間。意外と特別なことはなくて、社会を生きるうえで同じ問題を抱えているし、逆にアート表現からそれまで出会うこともなかった社会や歴史や科学の一端を知り、考えるきっかけを与えられることもある。」

ARTCOURT Galleryは広いスペースということもあり、周囲の目を気にせずにゆっくりと作品を楽しむことができ、圧迫感もなく心が安らぐと思う。もちろん必要ならば展示作品や作家についてスタッフに尋ねてみることは「いつでも大歓迎」だそうだ。

アートの業界に対して思うこと

アートの世界は個性を尊重し独自のクリエイティビティを追求する人々が集まる。社会全体からすれば狭くて規模も小さいと言えるが、業界として「ヒストリーがありマーケットがあり動向がある」在り方は他業界と変わらない。リーマンショック後、日本でも社会格差が開き、新たな富裕層をねらうビジネスも多様化。アート業界にもバブル期とはまた違ったかたちで他業界の企業や人々がアクセスし、新規ビジネスを立ち上げるシーンがさまざまな情報から流れてくるようになった。

「アート業界が今後どのように変化していくのか、それに合わせてアートに携わる人々はどういうスタンスでやっていくのが良いのか、いろいろと考えさせられて思考停止になりそうな時もある。ただ、外の大きな社会とつながるような時にも、アートは誰もが生まれ持つ美しいと感じる心を開かせる存在であるという想いは、変わらずに大事に持ち続けていたいと思う」。

今後について

ARTCOURT Gallery では、スペインの作家ジャウマ・アミゴーと大阪の作家川島慶樹による個展を同時開催する予定である。
(期間:2018.11.6 [tue] - 12.8 [sat] 11:00-19:00 (土曜日17:00まで)
 ※日・月・祝休廊)

ジャウマ・アミゴー「A Background Sound」
© Jaume Amigó / 画像提供;アートコートギャラリー


川島慶樹 「Twiggy Project」
© Keiju Kawashima / 撮影:斎城卓 / 写真提供;アートコートギャラリー


また、11月には、京都の北白川に新しいビューイングルームを展開するそうなので、HP(http://www.artcourtgallery.com/)などでチェックしていただけたらと思う。

関連

ARTCOURT Gallery は帝国ホテル大阪やOAPタワーなどの高層ビルが並ぶ都心にありながら、桜並木や天神祭で有名な大川のすぐ近くに位置する。

また、すぐそばには「OAP 彫刻の小径」という、屋外に8つのアート作品が並ぶ小道がある。

通常、このようなパブリックアートは恒久的にその場所に展示されるものであるが、彫刻の小径に関しては、ARTCOURT Galleryが企画・管理しており、一年半ごとに作品が入れ替わるそうなので、年ごとに違ったものを楽しめることも魅力の一つである。

ギャラリーに足を運んだ際には、ぜひこの道の雰囲気も味わってみてはいかがだろうか。

大場さん、取材をお受けいただきありがとうございました。

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