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東京装甲少女 EPISODE 0  第18話  【  双葉  】



カミーユと幸村LABOのメンバーは


年に1度、神田明神で行われる祭に来ていた。


日本の夏はなんて暑いの!!

とカミーユは思いながらも、メンバーと談笑しながら
秋水達の登場を待ちわびていた



カミーユは、内心、ヒヤヒヤとしていた、、、、、。


あの木偶の坊は、抜けてるから、また、こんな大舞台だと
やらかす
んじゃないのかと、、、、、、。


【 将門塚例祭 】



この祭りは、地鎮祭を兼ねており、火を司る精霊の演武によって
土地の神を鎮める為に


【 錬命新當流 】



 の演武が、秋水と大善の2人メインで




地元の大勢のギャラリーに囲まれながら、神田明神
舞台にて毎年、盛大に行われていた。




カミーユにとって秋水との出会いは最悪ではあったが、
一緒に大学に通い、生活を共にするうちに、

彼の人柄や、町の人と不器用ながら誠実に関わる姿

それと、まさかの、憧れの幸村LABOのメンバーだったこともあり
いつの間にか2人の距離は近づいていた、、、、、。


慣れない国でのホームステイを開始してからは、
初めは想定外の事ばかりで、大変苦労したが、

料理作りや家事全般に関しては、いつしか
真紀のノートのレシピ等を見ながら、カミーユが計画的に上達する方法を
編み出したので、作業を大分、効率化出来るようになっていたので

それ程、苦にならなくなっていた。



そして、口下手な秋水も、いつしか不器用ながら、

少しづつ心を開き始め、日本の解らない事や、大学の事、
その他の様々な事も、時には足を引っ張る時もあったが、
協力して手伝ってくれたりして、拙いながらも

会話も徐々に出来る間柄になってきていた。


野蛮な家主も、カミーユが作る料理を食べる度、

真紀が生き返ったみたいだ!うまいうまい!!と

大男が感動しながらハンバーグを食べる姿を見る度に、

粗暴な所だけではなく可愛らしい所がある人なのだなと感じていた。


大善に言わせると、お嬢ちゃんが来てからアイツ少し変わったよな?
と言うが、

家主も全く清掃能力は無かったが、怒られない程度には
掃除やゴミを捨てるなどの習慣が出来てきて、

いつの間にか、古くて汚れていた、あばら家も、
なんだか、小奇麗になってきてはいた。


フランスでも古いアパルトマンを改装して住んだり、
アンティークの物を大切にする文化などがあるので、
そういった感覚もあり不思議と

この家にも居心地の良さと愛着を感じていた。


それに、母を亡くした自分にとって、

家族というのは、父の思い出しかなかったが、

なんとなく男女が揃い、自分が作る料理を美味しいと
食べてくれる環境や、家事全般をこなし
家や住人を気に掛けたりする行動をすることで、


もし、自分の母がいたら、、、、、、

自分も母の目線ではこう思われてたのかな?

とか両親がいる家庭とはこんな感じなのかな?と

自分と重ね、時々、温かい気持ちにもなっていた。


また、それと同時に一人で私の事を育ててくれた父には
更に畏敬の念が募ったり、何故だか後ろめたさも
感じていたのも事実だった




この家に来た初めての日、


真紀のノートを大善から手渡され


薔薇のしおりが、床に落ち、母を思い出し泣いた、、、、、。



あれから、また泣いてしまうのが怖くて           数日間ノートは開けなかったけど。


秋水が真紀の好きな歌が、自分の好きな歌と同じだったことを

その後、思い出して聞いた時


これはdestin(運命)だと感じ

読むことを決めた。




彼女のノートには、様々な事が記されていた。



その中には、日記のような物も多数あった。




真紀が居た時は、秋水は大善の小さい頃と同じで、
ガキ大将気質で怪我ばかりして帰って来たり、

我儘で言う事も聞かないで手を付けられなかったみたいな事や、

神田の町が大好きな事。



近所の人が、自分が病気で出歩く事が出来なかった時も温かく
支えてくれていた事や、


飼い犬が死んで何日も塞ぎこんでいたあの子は、
私が死んだらどうなっちゃうんだろう?と心配していた事や





真紀が自分の余命が幾何も無いのを悟っていた最後の時に
書かれていた手記には、、、、、。




あの2人を残して旅立たなければならない。
申し訳ない。



幼い秋水が、どうか、
母のような存在の人に出会い寂しくならない様に、

大善が私のことなど忘れて良い人に巡り合えるように等と、

大病を患い大変な状況であるにもかかわらず、

後に残る2人を心配する文章が多く残されていた。



そして、もし、自分の死後


大切な人が大善の前に現れた時の為にと、


最後のページにはこう綴られていた、、、、、。     



まだ、あったことのない優しいあなたへ 



あなたが、これを読んでるという事は、私は多分この世にいないという事でしょう。


このノートは、私がもし、死んで、今度、家族になってくれる 優しい女性の人が来たら渡してくださいと。


大ちゃんに伝えていたものです。


彼は、私が死ぬなんて言うなら、こんな不吉なノートは


焼いてしまうと言うので、彼のお姉さんの様な人に
とりあえず預けておきます。



あなたが、来るまで大切に保管して周りの人に、協力して   もらいながら、あなたの所へ何とか届くと思うので、      いっぱい書いてあるけど少しづつでもいいから、       何とか読んでくれると嬉しいです。



大ちゃんはぶっきら棒でとても乱暴に見えるけど、とても繊細で仲間思いのとても優しい人です。


たまに良くわからない理由で喧嘩をして帰ってくることがあって   ビックリするかもしれないけど、大概、仲間を思っての    事なので、何も言わず許してあげてくださいね。


大ちゃんが、もし、あなたの言う事を全く聞かない時は、
神保町でお店をやっている、時さんという人の居場所を、

近所の誰かに聞いて、叱って貰ってください。
時さんは有名人なので誰に聞いても知ってるので大丈夫です。
そうならない様に願っています。

頑固だけど、多分、何日か経てば、忘れて、

あなたの言う事を聞いてくれるようになると思うので                時さんに言うのは本当に困った時にでお願いします。


それと、大ちゃんから聞いて知ってると思うけど、      うちには小さい男の子が居ます。

多分、あなたが来る時には、もしかしたら元気になっている
かもしれないけど、大ちゃんと同じで、

少し不器用な性格なので、私の事を引きづって、
嫌な態度を取っちゃうかもしれないけど、
時間が経てば、本当は、根は素直で優しくて
かわいい子なので長い目で見守ってあげてください。



初めは取っ付きにくいかもしれないけど、慣れてくると    二人ともとってもいい子だから安心してね。



あと、何か元気がなかったり、ここぞという時は。彼らはとってもハンバーグが好きだから秘伝のレシピを教えておくね。



これさえあれば大丈夫です。


それと、最後にあなたに一言だけ言わせてください。


多分、あなたがこの家に来てくれる時、2人ともお掃除が
ちょっぴり苦手で汚いかもしれないし、不器用だから     うまく伝えられないかもしれないけど、あなたが来てくれて、 とっても、嬉しいと思うので、どうか2人をよろしくお願いします。

本当はあって直接言いたかったけどノートの最後で      ごめんなさい。

差し出がましいけど、私の事は忘れてね。
皆が仲良く笑顔で、楽しく過ごしてくれたら私は嬉しいです。


塩沢家に来てくれて本当にありがとう。
どうか皆をよろしくお願いします。    


真紀より。




このページは多分、大善の再婚相手が、真紀の死後、、、、。


何年かして現れるであろうという事を想定をして、
真紀が綴ったページであったのだろうが、

カミーユは立場は違えど、このページを通じて親子の愛情の深さについて考えさせられた。


自分の母は、自分と引き換えにこの世に産み落としてくれた事、
真紀も自分が死ぬ大変な状況であっても、残された者の事を想っていた事。


親とは愛とは双子葉植物や落葉樹のような存在なのだなと
そう感じた。



枯葉が大地に落ち、新たな命の息吹を紡ぐ落葉樹のように、

双葉は最初に発芽し枯れ行き、本葉の最後を見る事はない。

子の最後や成長を見る事は決してないが、次の世代に無償の愛で
命を紡ぐ存在。


この人たちのような真の生命という存在が、
とても尊くもあり刹那的であり、彼女たち2人には実際
あったことはないが、言葉で表せない生命としての根幹にある


何かのバトンをこのノートを通じて
受け取ったようなそんな気がしていた。




カミーユは、真紀のノートを見ていたので、ある日の帰り道に、秋水に、お母さんが居なくて寂しいか?と聞いたことがあった。


秋水はこう言った。


自分には母親はいないのが、悲しかったが、不思議と
寂しくはなかった。


それは、多分、その分、町の皆が、いつも自分が寂しくならない様に、気にかけて何かと面倒を見てくれていたからだと思うと


だから、この神田という町は自分の母であり家族のような存在なんだと、自分はこの町が大好きだから、もし、家族に何かあった時は、全力で戦うとも言っていた、、、、、。


でも、本当は1人では怖くて戦えないからその時は、

自分のヒーローのまささまに力を借りるよと、、、、。




そんな、事を考えていると会場を取り巻く  

ギャラリーがざわつき始めた、、、、、。




中央に九曜紋があしらわれた大きな太鼓が置かれた舞台にバチを持った
精悍で筋骨隆々な男性が、一礼して太鼓の前に現れた、


男性に向けて拍手や歓声が起こったが、、、、。



客席を背にして鉢を持ち両手を力強く上げたままの状態になると、
辺りは静寂に包まれた、、、、、、。



太鼓の鳴らし手は静寂の中、振り上げている右のバチを太鼓に力強く
打ちつけた。


ドン!


ドン!



ドン!ドン!




両手を使い始めゆっくり交互に打ち付けていたが徐々に太鼓の音が加速し始めた所に




大きな拍手と声援と共に


秋水と大善が舞台に現れた、、、、、、。





東京装甲少女 EPISODE0  第19話へ続く、、、、、。




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