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【読む旅路👣】離島に行こう!

「離島」と聞くと、青い空が広がり白い砂浜に囲まれたリゾート地を思い浮かべる方は多いのではないだろうか。飛行機から雲を見下ろしながら、はたまた船から海を眺めながら目的地に広がる非日常を想像すれば、自然と胸が躍るーー離島とはそんな存在でありがちである。
実は、(公財)日本離島センターによれば、日本では北海道・本州・四国・九州・沖縄本島を本土とし、それ以外の島々を離島とすることが多いという。つまり飛行機や船に乗らなくても、淡路島やしまなみ海道の島々など、自家用車で気軽に行ける島もたくさんある。
私は1年4か月にわたって日本一周をしたことがある。その道中いろいろな離島を巡ってきたが、その中でも結局、飛行機や船で行く離島は別世界であった。行きにくいがゆえに、そこには密閉された魅力があった。
私が訪れた離島のうち、飛行機や船でしか行けないものは32島あった。今回はその中でも特に印象に残った10島をピックアップし、その感動をお届けしていきたい。

①礼文島(れぶんとう)〈北海道礼文町〉

稚内港からハートランドフェリーに揺られて約2時間。そこには「花の浮島」が待っている。
花の浮島と呼ばれる所以は、その多種多様な高山植物。レブンウスユキソウなど、礼文島でしか見られない花も咲いている。
また、青い海と断崖が美しい澄海(すかい)岬や、奇岩群の桃岩・猫岩など、絶景が目白押し。島の南側からは、日本海に浮かぶ利尻富士も見える。
極めつけはウニ。本土の半額で生のエゾバフンウニを頂くことができたが、甘くてとろとろで、とてもまろやかな逸品。

レブンウスユキソウ

②青ヶ島〈東京都青ヶ島村〉

東京・竹芝港から東海汽船のフェリーに揺られて約10時間半。八丈島で伊豆諸島開発のフェリーに揺られてさらに約3時間。そこには二重カルデラの島が待っている。
カルデラとは火山活動によってできた大きな凹地。その凹みの中に火山があり、さらにその山頂も大きく凹んでいるという非常に珍しい地形は、青ヶ島最高峰の大凸部(おおとんぶ)から眺めることができる。360°水平線が一望できる点でもかなり貴重な場所である。
また、青ヶ島には地熱蒸気の噴気孔が至る所にあり、「ひんぎゃ」と呼ばれている。カルデラ内には天然の地熱サウナ(村営)があるほか、じゃがいもやソーセージを蒸して食べられるセルフ地熱釜がある。
夜になれば空はプラネタリウム。集落から離れれば人工の光は一切なく、ひたすらに満天の星に見惚れていられる。

二重カルデラ(大凸部より撮影)

③父島〈東京都小笠原村〉

東京・竹芝港からおがさわら丸に揺られて約24時間。そこには世界自然遺産の島が待っている。
小笠原諸島沖には、体長10mを超えるマッコウクジラが棲息している。ボートに乗って外洋に繰り出せば、運次第でその巨体と遭遇することもできる。ミナミハンドウイルカと一緒に泳ぐという、感動的なアクティビティも体験できる。
また、ボートでしか行けない隣の島・南島にはヒロベソカタマイマイ(カタツムリの一種)の半化石がたくさん落ちている。カタツムリの固有種が豊富であるために小笠原諸島は世界自然遺産に指定されているが、生きている固有種のカタツムリに出会えればとてもラッキーである。
他にもオナガミズナギドリやカツオドリなど、この島では本土では見かけない生き物と出会うことができる。アオウミガメを食べられるレストランもあるので、ぜひ一度お試しを。

マッコウクジラ

④竹生島(ちくぶしま)〈滋賀県長浜市〉

今回紹介する島の中で、竹生島は唯一海に浮かぶ島ではない。どういうことかというと、竹生島は琵琶湖の中に浮かぶ島なのである。長浜港から琵琶湖汽船のフェリーに30分ほど揺られた先に、国宝の眠る島は待っている。
竹生島は周囲約2kmの小さな島でありながら、歴史的建造物が密集している。豊臣秀吉が寄進した都久夫須麻(つくぶすま)神社や、大阪城の遺構である唐門といった国宝のほか、奈良時代に聖武天皇の勅命によって開眼された宝厳寺など、この島に対する古来からの信仰の深さが窺える。
また、本土側のターミナル港のある長浜市内では焼き鯖そうめんが食べられる。歯切れの良い素麺と旨みの凝縮された鯖の組み合わせは、シンプルながら美味しい。

都久夫須麻神社

⑤隠岐島〈島根県隠岐の島町〉

松江・七類港から隠岐汽船のフェリーに揺られて約2時間半。そこには神秘的な杉の島が待っている。
隠岐の島には幹や枝が奇妙な形をした杉がいくつかあり、中でも貫禄を放つ「かぶら杉」は樹齢600年を超えると言われている。島内には水木しげるのルーツということもあって至る所に妖怪が潜んでおり、不思議な雰囲気が漂っている。
他にも、巨人の手の甲のような岩が日本海に突き出す白島崎、遥か高くから静かに水が流れ落ちる壇鏡(だんぎょう)の滝など、ジオパークとしての側面も強い。また、名物のさざえはとても歯応えが良く、噛めば噛むほど旨味が滲み出る。

かぶら杉

⑥対馬〈長崎県対馬市〉

博多港から九州郵船のフェリーに揺られて約4時間半。そこには国境の島が待っている。
対馬は浅茅(あそう)湾によって南北に分断されているが、烏帽子岳展望所から見下ろせば、湾内に広がる多島美と対馬の雄大な自然を一望できる。麓には日本神話の神々を祀る和多都美(わたづみ)神社があり、静かな海に佇む鳥居には心が洗われる。
また、対馬の北端には「異国の見える丘展望台」があり、天気が良ければ釜山の街を目視できる。もし見えなくても携帯が韓国の電波を拾うので、いかにここが日本の端っこかということが実感できる。
対馬の名物はアナゴ。新鮮なアナゴは天麩羅にしてもぷりぷりで美味しいが、刺身にしてもふわっと口の中に広がる旨味と上品な脂が味わい深い。

和多都美神社

⑦福江島〈長崎県五島市〉

長崎港から九州商船のフェリーに揺られて約3時間10分。そこには潜伏キリシタンの島が待っている。
潜伏キリシタンはその存在を暴かれてはならないため、教会のほとんどは非常に行きづらい場所にある。堂崎天主堂も島の片隅にひっそりと建っているが、その可愛らしい煉瓦造りの建築は悲壮な美しさがある。
また、街の近くにあるこんもりとした山は鬼岳。芝生に覆われたなだらかな山で、上から見下ろせばパッチワークのような畑と真っ青な海が一望できる。島の最西端・大瀬崎からは茫洋たる東シナ海が見え、水平線に沈む夕日がとても感動的である。
名物は五島うどん。円筒形の細いうどんは、喉越しが良くするすると食べられる。

堂崎天主堂

⑧甑島(こしきしま)列島〈鹿児島県薩摩川内市(さつませんだいし)〉

川内港から高速船甑島に揺られて約50分。そこには「もう一つの鹿児島」が待っている。
甑島列島は主に上甑島、中甑島、下甑島で構成され、この島々は橋によって結ばれている。中でも甑大橋は狭くはない瀬戸を越える長い橋であり、展望台からは紺碧の海と真っ直ぐな橋が調和した風景を楽しむことができる。
ジオパークとしての側面も魅力的。大迫力の鹿島断崖を望む夜萩円山公園、細長い砂洲が海と池を隔てる長目の浜、豪快な三段の滝が美しい瀬尾観音三滝など、その絶景にただ圧倒されるばかりである。
旬の海産物も豊富。メジナ、ハガツオ、イカ、タカエビ(薩摩甘海老)を頂いたが、どれも新鮮な絶品だった。

甑大橋

⑨西表島(いりおもてじま)〈沖縄県竹富町〉

石垣港から安栄観光または八重山観光フェリーの高速船に揺られて約40分。そこにはジャングル・アイランドが待っている。
西表島の北部を流れる浦内川は、ボートに乗って遡上することができる。亜熱帯の湿気が纏わりつく中、両岸にはリュウキュウマツやびっしりと生えるマングローブが見え、本物のジャングルクルーズ。上流船着場からジャングルの中をトレッキングした先では、カンピレーの滝がその水で疲れた足を癒してくれる。
また、道路が通せないために渡し船が唯一の交通手段となっている集落・船浮集落も見所。集落の果てにあるイダの浜は理想的な海の青を湛えており、楽園そのものと言える。集落にある数少ない食堂ではいのししそばが頂けるが、これも素朴ながら猪の旨みを味わえる逸品。

イダの浜

⑩与那国島〈沖縄県与那国町〉

石垣港からフェリーよなくにに揺られて約4時間。そこには日本最西端の島が待っている。
与那国島の北部にある祖納(そない)集落にはティンダバナという岩の塊がある。かつての女酋長サンアイ・イソバの住処だったという説もあり、岩に登れば集落と東シナ海を一望できる。
東部の東崎(あがりざき)では、日本古来の固有種であるヨナグニウマに出会える。警戒心が低いのか、相手から擦り寄ってくることもあるのであまりにも可愛らしい。
南部の比川集落には、「Dr.コトーの診療所」ロケ地が残っている。「志木那島診療所」の目の前には透明度の高い海が広がっている。
西部の西崎(いりざき)は日本最西端の地。岬は象徴的に盛り上がっており、東を見下ろせば久部良(くぶら)集落、西を見渡せば台湾と日本を隔てる海が見える。ここが一般人が立ち入れる唯一の「日本の端っこ」である。

ヨナグニウマ

タイムパフォーマンスが重視される現代において、離島巡りはその潮流に真っ向から逆行する行為である。飛行機や船に乗る分時間はかかるし、天候の影響を受けやすい。実際私も道中欠航に見舞われ、リスケジュールを余儀なくされたことも何度かあった。
だからこそ、離島は辿り着くことに価値がある。ままならない自然と対峙した先には、本質的な歓喜が待っている。さあみんな、離島に行こう!

※写真は全て筆者撮影

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