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重度のアトピーで1年間寝たきりの生活を経験。その先に見つけた自分らしい生き方は「起業」だった


株式会社Genon 代表取締役社長 高原千晶さん

株式会社Genon
代表取締役社長 高原千晶さん

この記事で起業に役に立つトピック

  • 起業をする際には、「やりたいこと」と「顧客の課題」の双方を考えながら組み立てていく

  • SNSによる集客だけではなく、人と人との繋がりで出せるインパクトを重視

  • やる事とやらない事をチームで明確にし、改善し続けることで事業を継続していく

2022年11月19日(土)に、株式会社SEAFOLKS、新しい働き方コンソーシアム、スタジオ八百萬の共催により、これから起業を志す方、既に起業されている方へ向けて地域横断型の起業交流イベント『CONNECT.(コネクトドット)』(後援:山形県、総務省 東北総合通信局)が開催されました。

「もっと起業を自由に。」をスローガンに掲げた本イベントには、起業に興味がある学生や若い起業志望者が全国から多数参加し、『起業をする側』と『起業を支える側』の登壇ゲストから「実際に事業を立ち上げ成長させていく過程でのリアルな話」を直接聞くことができました。

今回、大阪府から『起業をする側』の立場で登壇された株式会社Genon
代表取締役社長 高原千晶さん。高原さんが起業をする上で大切にしていることや、ご自身のヒストリーをお聞きしました。

重度のアトピーで1年間寝たきりの生活を経験。その先に見つけた自分らしい生き方は「起業」だった

元々重度のアトピーで、1年くらい寝たきりの生活を経験しました。そうした自分自身の肌に関する悩みやトラブルの経験を経て、医療従事者として実際に医療現場に立ち色々な方の問診や診療の補助をさせていただきながら株式会社Genonを2022年の1月20日に設立しました。会社のメンバーも、皆肌に悩みを抱える「患者」の立場を持っている一方で、医師、エンジニアや医療経験者など様々なキャリアを持ったメンバーが参画しているような企業です。現在は大阪にオフィスを構えており、私は代表取締役としてビジョナリーな部分、戦略、人事、資金調達部分を担当しています。

株式会社Genon

起業をする前は、もともとパティシエをやっていました。小学生の頃、好きな子にバレンタインのチョコを渡すという時に、空気・湿度や、生クリームをれる入量やタイミングによってシャバシャバ感が違うということに気づき、他にも発酵というものが季節によって違うといったことに「料理は科学だ」という面白味を感じパティシエになりました。その後、自分はもともと肌が弱く、アトピーが重症化してしまったのですが、「これ以上飲食店では働けない」というドクターストップを聞かずにパティシエを続けていたら寝たきりになってしまいました。症状が落ち着いてからは、ITの物流の会社のモノタロウに入ったのですが、そこでは私と同じように皆肌について悩みを抱えていて、3人に1人は肌トラブルがあるという統計が取れました。そうした経験も後押しして、現在は医療系のスタートアップとして会社を立ち上げました。

何かを思いついたらすぐにやってみる。小さく検証していくことを大切にしています。サービスを作っているときに共同代表の方と出会い、そのあとビジネスコンテストへ登壇し最優秀賞を取ったりしました。2022年の5月、6月頃には資金調達が終わり、現在は色々な病院の方々とサービスを作りデータを溜めていくという事業のフェーズを迎えています。

ディープラーニングによる皮膚治療のマーケットプレイス「ヒフメド」ができるまで

弊社では、「ヒフメド」という、ディープラーニングによる皮膚治療のマーケットプレイスを展開しています。どの患者さんがどんな治療をしていくと治りが早くなるのかということを分析している会社になります。

皮膚科とは、目視で全身を見る診療です。臓器の中で一番大きく、患者様の生活にあわせた個別説明が必要となる診療科です。課題としては、患者様にとって「生活の制限が多い」、「薬の効果が発揮しにくく、治るのに時間がかかる」という点があり、お医者様からは、患者様の待ち時間が長いことでひとつひとつの診療にかけられる時間がなく、またそれぞれの薬の効果や治り具合を後追いできず、治療の個別化を行えないというお話を聞きました。

そこを私たちが解決していくということで「ヒフメド」のサービスが誕生しました。患者様にどのような治療が効率的なのかということを統計学で出そうとすると、これまでは2年~60年ほどかけて患者様を見ていたのですが、ヒフメドのサービスを使うとそれが1分でわかり、治療を効率化して提示してあげるという「診療を補助するアプリ」を開発しております。

「ヒフメド」サービスイメージ

現在はこのサービスを関西の3つの病院と提携をして実証実験をまわしています。患者様からは、「自分に合う治療法・生活の見直しができた」、「治らないという不安が解消された」、「診療のストレスが減った」というお声を頂き、お医者様からも、「従来の2倍の患者様を見られるようになった」、「非常勤のコスト削減ができた」、「患者様の待ち時間が減った」、「マイナスの口コミが減った」という報告をいただきました。今後はオンライン診療も手がけていきたいと思っています。

もともと、私の母も妹もアトピーということで肌に関しては遺伝要素が高いと思っていて、弊社の名前が遺伝子を意味する「ゲノン」という言葉を取っているのですが、今両軸で遺伝子検査というものも進めています。メンタルや、食事、介護やペットなど別の分野でもニーズがあるということがわかったので、事業の展開を考えています。

思い立ってからどのように準備を進めたか、具体的な手順や期間

準備に関しては常に逆算で考えていました。思い返すと、スタートアップなので資金調達をするまでが大変だったなと思っています。起業の最初の1年間は、大阪第一ビルのインキュベーション施設に入って準備をしておりました。

「開業するため」や「資金調達を得るため」のHOW TOみたいなことは私は一切やっていませんでした。弊社の共同代表の高砂という者がCOOとして入っているのですが、私は好奇心が旺盛なのでやると決めたらすぐやりたくなってしまう、例えるなら裸で走り出すような性格で、高砂は「せめて下着は履いていけ!」というような真逆な性格でして、そんな彼と組んで事業をしています。

共同代表の高砂が資料を用意したりしてくれて、私がどのようにやっていきたいかというビジョナリーの部分を担当して準備を進めていった感じです。実際に資金調達したときも、間口ホールディングスの川田さんという方からのご紹介でIPOをしている代表の方と話をしたりと、やはりいろいろな方をご紹介いただいた繋がりということが大きく、今があります。また、当時は生活を犠牲にして起業をしたということもあり、今まで土日は休んで生活をしていたので、その中でジムにいったり身体を動かすことができましたが、今は身体がなまりすぎているということが課題として出てきています。2023年の夏からはトライアスロンをしたいということなどを考えながら起業準備をしていました。

「起業したいな」から「起業する!」覚悟を決めたタイミング

覚悟を決めたのは27歳くらいなのですが、遡ると小学校3年生のときに、お姉ちゃんの友だちがゴミ屋敷とまではいかないのですがモノが多い家に住んでいて、でも私にとってそれらは全部「売れるモノ」に見えたという経験から、実際に私も公園でフリーマーケットをやってみました。

ここでモノが売れたことで「人と関わりながらビジネスを作り上げる」ということに興味を持つようになりました。また、家族が起業しているという家庭環境も関係しているかもしれません。幼少期から年末には、家族でそれぞれの通帳を「せーの」で見せ合い自慢したり、それぞれのお金の使い方で話が盛り上がったりという行事もあり、楽しかったのを覚えています。親からは、「あなたに会社員は無理」と言われており、「そんなことはない!」という気持ちで会社員を経験しましたが、「やっぱり無理だな」と思い27歳の頃に起業をしました。なので覚悟は自分が幼少から育っていく中で決まっていった感じです。


起業してからの集客手段と地方での考え方

SNS、特にTwitterで患者様や医療従事者の方を集めています。あとは、患者様から通院している主治医の方につないでいただくなど、人と人とのつながりというものをネットではないところで発揮することがインパクトとしては大きいなと思っております。地方では、患者様が病院の方々に私たちのアプリ「ヒフメド」をご紹介くださる場面が多いのですが、実際に病院に導入していただく際には私たちが地方に訪問します。そこで病院が地域の病院間連携で口コミを広めてくださるので、人と人との繋がりというのは全国どこへいっても変わらないのだということを実感しております。

ただ2つ悩みがあります。地方に行ったときにはWi-Fiが通じないので、ネットに繋がらない前提でメモできるツールなど色々準備をしていかなくてはいけない点です。もうひとつは、ドクターや患者様と地方でお食事をするときに、お酒を飲む場所があまりないので、山形へ行くときにはせめて22時くらいまではやっているお店に行きたいなと思っています。誰か紹介してください(笑)


一番大変だったことと、継続するために大事にしていること

「仕事」と、「仕事をする環境」の2つが私にとって壁になっていたと思います。ひとつめの「仕事」の部分では、始めこそ「自分がこれをやりたいから起業した」というところがあったのですが、自分がやりたいことと、世の中のニーズのあることというのは全然違うということを実感しました。私はもともと遺伝や遺伝子といったものがすごく好きで、専門学校で遺伝子や栄養学を学んでいたのですが、遺伝に関する事ってみんな興味があるんじゃないかと思っていました。そこで、みんながどういう生まれ方をして、どういう亡くなり方をしてどういった疾患を持っているのかということを家系図にするというサービスを考えていたんですけど、なかなか遺伝子というものは世間体的にも仕事的にも扱いが難しく大変だということで、1年間くらい試行錯誤して現在のサービスの形になったというところがあります。もうひとつの壁である「環境」ですが、どういった場所でどういった机で仕事をするかなど、こだわりがちょっとある方なので、色々考えました。また、自分の性格的に、自由奔放で少し変だと自覚しているところがあるので、「少し変だけどまともな人間にはなりたい」と思った時期があり、どうすれば人に迷惑をかけずに仕事ができるかということを今でも考えながら仕事をしております。

継続するために大切なこととしては、やる仕事とやらない仕事を明確にしようと心がけています。紙に十字を描いて、「緊急だけど必要でない事」などを分類していく方法は私も何かを考えるときに沢山書き込みます。それをメンバー内で共有して誰が何をするかを役割分担するという作業を一週間ごとに実施しています。継続するときに「この事業のままで本当にいいのか」と疑問に思ってしまうことが自分の中で多々あり、そう思う時は、今実際に課題を持っているというユーザーの声を大事にして進んでいます。それが一番の栄養源であり、進んでいくための源になります。

株式会社Genon
代表取締役社長 高原千晶(大阪府)
自身の原体験となる皮膚病の課題を強く感じ、2021年1月に会社を発足しアトピーやニキビの症状を集めデータで病気を解決するPHRサービス『ヒフメド』を開発。ヒフメドは症状を記録すると、症状を分析し最適な治療法を医師とともに解明したあと、お薬までお届けするワンストップサービス。


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