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J-POPの歌詞の語尾が気になる現象

音楽を聴く時に、人は歌詞の意味をどの程度理解しているのでしょうか。自分の体験上、普通はそんなに気にしてはいません。どこを聞いているのかというと、やっぱりリズム(BPM)が一番大きいし、それと全体の音圧、各楽器が出すサウンドパワーと、歌ものであればヴォーカリストの声の質と歌唱の個性、そのあたりを受け取っています。

そんな中、歌詞に意識が向くのは、印象的なフレーズ、言葉選びの面白さがリズムとメロディに嵌ったとき、その瞬間は棘のように刺さってくるのを感じます。この「刺さる」のが印象に残る一つのパターンとして、口語体で書かれた歌詞の語尾が面白いな、と思いました。

King Gnu 「〜でしょう」

〜でしょう、といえばKing Gnuでしょう。僕の中ではジョニー・デップ似のイメージの常田大希さんを初め、メンバーはいずれも男臭い雰囲気でオラオラ感すらあるのに、井口さんのヴォーカルの美しさといったら。その彼が歌うフレーズの語尾が、中性的なニュアンスを持つ「〜でしょう」というのが耳に残ります。

milet 「〜んだ」

コロナ禍でファンのことを想って作ったというこの曲、歌詞の語尾は意識的に「〜んだ」を多用しています。自身の気持ちを確認するかのようなこの繰り返しは、上昇音階を伴って、韻を踏むだけではない強い意志を感じます。一つの音符に「んだ」と二語を割り振って歌っている感じもして、それも印象を強めているのかもしれません。

雨のパレード 「〜ぜ」

ミドルテンポで優しく背中を押すようなこの曲、ヴォーカルの福永浩平さんの甘い声と相まって、気にしなくていいぜ、頼っていいぜ、という言い回しが暖かい優しさを醸し出しています。この声ありきのこの言葉遣いの妙。関係ないけどこのバンドのドラマー、めっちゃ美人だなと思います。

TOMOO 「〜さ」

ジャクソン5の『ABC』のようなモータウン系の雰囲気がある人気曲。MVを見ながら聴くと特に楽しく、TOMOOさんのヴィジュアルにぴったりだなぁと思います。アルトの声域とボブカットのガーリーなイメージにしっくりきます。

サカナクション 「?」

この曲を聴くたびに、サビのファーストラインの語尾が気になっていました。歌詞は「ショックで目が開いた」なのですが、「開いたん」に聞こえていたのです。

今回、初めて歌詞を見ながら聴いて驚きました。歌詞通りに歌っていないのです。思い返せば山口一郎さんは以前からそういう節はありましたが、ここまでとは思わなかった。というか、楽曲の形で完成させてから、歌詞を文字起こしするときに余計な部分を削る作業をしているのでしょう。そこからも山口さんの拘りが感じられて面白いなぁと思いました(カラオケでは歌詞はどのように表示されるのだろう?)。

山口さんの艶っぽい声質で、語尾の最後の最後が軽く裏返って上がる感じで歌うと、「ショックで目が開いたん」「ショックでうずくまったん」に聞こえるような気がして、そこが殊更に印象に残っていたのでした。