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人は1人で生きていけばいい。

彼女と別れて半年。約7年間付き合った彼女だった。
高校時代、人と付き合うとは何かもわからないまま、二人で歩んできた7年間に、自分から終止符を打った半年前。
後悔も懺悔もするつもりは毛頭ないのだけれど、それでもふとした時に胸をかすめる感傷から目を背けたくなくて、そろそろちゃんと気持ちの片付けをしないといけない気がした。この7年間を清算する。
こんな時に聞く「さよならミッドナイト」はやけに染みる。

こんなに長く付き合って、何で別れたんだろう。

きっと、二重の意味で結婚したくなかった。
「まだ」結婚したくなかった。「この人と」結婚したくなかった。
1つ上の先輩は、大学卒業と同時に結婚するらしい。
「今」結婚しよう。「この人と」結婚しよう。
そう思える一つ上の先輩は、自分よりずっと大人に見えた。

きっと、自分の足をひっぱられている感覚があった。
今時間をかけたい仕事より、いつもの二人の時間。
気の置けない友達より、僕の気持ちを頼りにする彼女。
どこか、自分の不可侵領域を常にまさぐられていて、それでいながら、その行為を許してしまう自分がいた。もっとちゃんと拒否していたら良かったのかな。
なにより、自分の足を引っ張られているという感覚が、とてつもなく上から目線で、僕の彼女を見る眼差しそのものだった気がする。

きっと、最後まで分かり合えなかった。
相手のわがままなところ、自分のだめなところ。
たくさん喧嘩して、たくさん泣かせて、たくさん話し合って、たくさん仲直りした。最初から感じていた違和感は、価値観のズレは、きっと時間をかければ揃うと思っていたのに。段々と近づいて行ったけれど、一緒にはならなかった。結局は、他人と他人だった。

きっと、そんなに好きじゃなかった。
二人で歩いた夜のコンビニも、遠距離で高速バスにのって仙台に向かった5時間も、一緒に作った朝ご飯も、全部本物だった。
たくさん伝えた、好きも、大好きも、愛しているも、嘘じゃなかった。
けれど、一生一緒にいたいと爽やかに言えるほど、好きじゃなかった。この人と共に残りの人生を生きていきたいと思えるほどじゃなかった。もっと他にいるんじゃないかと思ってしまう自分が消えなった。自分の心に正直に、クズだった。

きっと、自分がからっぽだった。
なんにもない自分から出る言葉は、自分で呆れてしまうほど浅くて貧相だった。その底の浅さが嫌で嫌で、一人の時間が欲しかった。本を読み、心響く物語と体温感じる言葉を自分の中に蓄えたかった。思索にふけり、自分自身の有様を見つめたかった。出来ないことを出来るようになりたくて、そのための修業がしたかった。
うすっぺらいアウトプットに辟易して、一人で深みを欲していた。

でも、二人で生きた時間は、甘ったるくて、温かかった。
お互いがお互いの傷をなめあった。
家族とも社会とも打ち解けられない二人が、身を寄せ合って、二人で唯一の居場所を作っていた。
必要以上の優しさを差し出し、それを受け入れては、気持ちよさと同時にちょっと気持ち悪くなっていた。

こんなに人のぬくもりがやわらかくて、あったかいなんて知らなかった。大学生にもなると、親にしてもらったはずのだっこやおんぶやハグのぬくもりなんて忘れてしまう。

二人とも、初めての事ばっかりで。でも慣れてくると、僕がワンパターンでちょっと怒らせちゃって。それ以降、マンネリ化しないようにって、ちょっと気を使いながら、気を張りながら触れていた気がする。そんな時くらい、身勝手に、何も気にせずくっつけたらよかったのにな。

一緒に暮らして、自分の興味のなかったことをたくさん教えてくれた。
例えば洋服。着たい服を一人で選べるようになったのは、きっと君のおかげ。じゃないと、服なんて全然こだわりがなかったから。それでも、新しい服を着て、ちょっといい気分で外に出かける楽しさが、今ならわかる。

例えばダンス。残念ながら、今でもあんまり興味はないし、自分が躍る予定もない。君のダンスは上手だと思うし、素敵だと思う人もきっと多いよ。けれど、僕はあんまり見たいと思っていなかった。嫌だったんじゃなくて、あんまり興味がなかった。君のアイデンティティをわかってあげられなくて、ごめんね。

例えば女の子のこと。
月に一回体調が悪くなる日がやってくるって、こんなに大変なんだね。君のおかげでちょっとわかった。そんな日は、僕は全力の優しさで接するように心がけていたけれど、本心はちょっと面倒だった。そんな自分が嫌だった。好きな人のために、自分の都合や犠牲なんて気にせず身を投げ出せるような人だったらよかったのに。

体調のことだけじゃない。思っていることは言葉にしてほしいって言われた。我慢しないで言ってほしいって言われた。記念日や良いことがあった日はお祝いをしたがっていた。特にサプライズがあるととっても嬉しかったみたい。これって、男の子より女の子っぽいなぁって思ったよ。そんな価値観も君が身をもって教えてくれた。

ついでに、人前でけんかしたこともあったね。彼女をいれて女の子3人に男子は僕一人っていうのが良くなった。もう、とことん情けなくて、何を言ってもうまくいかなくて。途中から君は泣き出しちゃうし、僕は周りから見ても、自分で見ても、どうやっても悪者だった。

7年って、どうやっても長い。書けば書くほど、こんなこともあったし、あんなこともあったしで、終わらなくなってしまう。
簡単には清算なんて、させてもらえないってことが、ここまで書いてようやくわかった。一種の罪滅ぼしだと思って、この感傷という名の痛みと、しばらくは付き合っていこう。

まだまだ大人になれない僕は、ふらふらと人を好きになり、痛い目を見て、それでも懲りずにまた誰かと付き合う。そんな若くて青くて苦い、ありきたりな若気の至りな恋愛をしたい。
本当は、言葉を綴っているうちに、次の恋愛に活かせる教訓があればいいなと思っていたけれど、あんまりそう上手くも行かなかったなぁ。人生にマニュアルなんてないのかもしれない。

人は1人で、勝手に生きていけばいいよ。7年付き合った人がいたって、思うがままに、好きなように生きていけばいい。今はただ、そう思う。

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