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バリウム

A:こないだ健康診断行ってきたんだけどさ、バリウムってどうにかならんもんかね。
B:ああ、胃の検査をする時に飲むやつか。たしかに微妙だよな。
A:そうそう。俺、バリウムが嫌だって話を家族の前でしてたのよ。
B:お前いくつだよ。
A:同じこと妻にも言われた。「そんなにバリウムが嫌だって娘に刷り込んでどうするのよ。将来この子が健康診断する時に怖がっちゃうじゃない」てさ。
B:だね、まったく。てか自分の娘を娘って呼ぶんだね。
A:伏せてんだよ。わかるだろ。
B:ああ、そうなの。
A:で、ヤバいと思ったんだけど次の瞬間に頭フル回転させて言ってやったの。
B:お、なんて。
A:娘がバリウムを飲むのは、およそ20年以上先だ。その頃にはバリウムの味も改良されてるだろう。プロテインも昔はまずかったけど、今はおいしいと言われるぐらい改良された。だから味の点において心配はいらないさ。
B:おお。また娘って。
A:だから伏せてんだよ。しつけーな。
B:ああ、ごめん。
A:そしてもう一つ。俺はあえてバリウムに不信感を抱かせるようなことを言っているんだ。
B:どゆこと。
A:将来、バリウムを飲んで驚くだろう。「バリウム、別においしいじゃん」と。今、良くないイメージを植え付けておき、実際体験した時に良いギャップを生む。
B:ほえー。
A:PCやスマホと同じさ。技術の発展を甘くみてはいけない。ゲームや映画のCGもそう。稚拙なCGに興醒めしていたのは昔の話。今やアカデミー賞の視覚効果賞を獲得するぐらい進化したじゃないか。
B:あ、ゴジラの話?
A:ちげーよ。
B:だよね。
A:バリウムもこの先20年で進化しないはずがない。それどころか、そもそもバリウムという形で存在しているかすらわからないね。俺はそのために今、意図してバリウムのネガキャンをしているのだよ、とね。
B:はあ。よくわかんなくなってきた。
A:そうか。我ながら完璧に打ち返したと思ったんだけどさ。「キモ」と一蹴されてこの話は終わったよ。
B:だろうな。
A:てかほんと嫌なんだって。だいたい飲んだらゲップ我慢しなきゃならないアレとか、言われるがままに体勢ゴロゴロ変えてしんどいアレとかさ、しんどくない?
B:そう言ったってしゃあないだろ。だったら胃カメラやれよって話だよ。
A:もっと嫌だわ。
B:で、結果はどうだったの。
A:ここから先は有料会員にご登録いただき……
B:しゃらくせえな!

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