【読書感想文】優しい暴力の時代 チョン・イヒョン著 斎藤真理子訳

遅読にも程があって、本当は2冊読んでいた本があったのだけど、全然読み進められなくて、延長してもダメで…

返してしまったタイミングで、予約していたこちらの本に出会えました。

前の2冊は、ひとつは内容が重くてなかなか噛めないでいて、ひとつは翻訳物だったので、背景を知らないとなかなかスッと入ってこないことが多くてこれも全然噛めなかった。

それに比べてなんて読みやすいのだろう。。。サクサクっと読めてしまったことがうれしかった。読む力が落ちたわけじゃなかったと。

気づけばこれも短編集だった…結局、やっぱり読む力は落ちていて、短編集しか読めない身体になってしまったのかもしれない…

優しい暴力の時代というタイトルだけど、どの辺が暴力なのか分からないで読んでいた。けど、今気がついたことだけど、チョン・イヒョンさんも優しい暴力について書こうとしたわけではなく、束ねた時に、そういえば、共通項は優しい暴力と言えるかもしれないと言っていたのだから、テーマが優しい暴力というわけではないんだね。そっかそっか。

あんなに国語得意だったのに、作者の言いたいことつかめてないのかと思ったわー

そかそか、単純に物語を読めばいいんだよね。物語の中に、優しい暴力が隠れているというね。はーはーはー

全部の話の感想を書こうと思ったけど、ひねり出す感じがするので少しだけ…

・ミス・チョと亀と僕

主人公は、起きてないことは僕の内側のいちばん奥にそっとしまっておきたいと、冒頭で言う。

私は全く逆で、起きてほしくないことほど言葉にして、起きないようにしておきたい。言葉にしないことほど、起きてしまう人生だからだ。

大学を卒業する頃部活の顧問が親の介護のせいで独身だと話した時に、口にしてしまえばよかったのかもなぁ…私もそうなったらどうしようって。

話に戻ると、ミス・チョ女史とお父さんの話がめちゃくちゃせつなかった…

あと、私なら亀の相続はしたくないなと思った。んま私を知ってる人はそうしないか…


・引き出しの中の家

バラエティとかドラマを見てなんとなく感じていたベースがあったから、韓国の不動産事情への理解がまた一段階深まったように思う。

オチもオチなんだけど、私はこの夫が自分事を他人事にして妻に押しつけるトリックのところが、うわーいるわー!!となった。

自分の子供なのに、妻だけの子どものように振る舞うところとか、自分だけが大変だと言うところ…腹立つわーってなった。

タイトル思い出せないのだけど(雑だな…)

高校生の娘が産んだ子を助けようとしないでいる話も実際こういう、決断しないでいる人っているよなぁって思った。非難されたくない割に絶対やりたいことと絶対にやりたくないことが明確で、だけど本人は自覚的なのか無自覚なのかしらーっとしてる。結論は出さない、もしくは周りが出すのを待ってないフリして待ってる。

こういう人いるんだよなぁ…こういう人は責められると私だって辛いんだみたいなこと言って逆ギレてくるんだよ…

あー今後の人生で出会いたくないわー

あと、アンナもすごく後味悪かったなぁ…しゃべれなくなっちゃった子供がかわいそうだなと思った。この先も親の希望を叶えるために、気持ちをずっと無視されていくんだろうな…そして、自分も夫に支配されて…あー苦しい。

三豊百貨店も、生き残ったことを喜べなくて辛いんだろうなって思った。うっすい感想だな…私も高校の時は仲良くなかったけど、卒業してから仲良くなって、今また疎遠になった友達がいるので、なんかせつなくなった。

そして、これがフィクションでないことがショックだし、こうやって、ちゃんと描かれることに、また成熟さを感じてしまった。

こういう後味の悪さが残る作品ばかりで、具体的にどんな後味の悪さなのかは説明されない。そこがさらにじんわり持続的なモヤモヤをもたらす。

はっきりとした悪者ではない、それが優しい暴力ということなのかもなぁ…

そして、相変わらずの斎藤真理子さんの翻訳と訳者あとがきで理解が深まりました。


正直なところ、前評判がすごく良すぎて、そこまで思えなかった温度差を常に感じながら読み終えた。だから読み返したんだけど、結局、評判ほどの絶賛は自分に起こらなかった。だから、この感想も書き上げるのに1ヶ月以上かかってしまった。

この次は、誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノを読みました。

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