見出し画像

一括で買ったベンツで帰宅

まあそんなことはできないわけですが。

タイトルはAwich、NENE、LANA、MaRI、AI、ゆりやんレトリィバアの『Bad B*tch 美学 Remix』のゆりやんのパートの一節。
Awichのそれも数曲しか聴いたことないのでメンツはよく知らない。AIはまあわかるけど。
にわかヒップホップヘッズなのでフィメール方面に疎い。

なんでこのタイトルにしたかというと、パンチラインの話をしたかったから。
パンチライン。簡単に言うと印象に残る箇所。
話のオチとか決め台詞とかだけど、ヒップホップ用語でいうとリリックの中で特に印象に残るワンフレーズ。
ゆりやんのコレは間違いなくパンチラインだと思う。

前回、文章を書くことについての記事を書いたので、

それの続きみたいなノリ。

自分は歌詞を書くということはないけど、noteを書くときにパンチラインを時々は意識した方が面白さが増しそう。
というわけで、自分の好きなヒップホップのリリックを中心にパンチラインの紹介・解説をしながら、そのエッセンスを学んでみようと思う。

俺は東京生まれHIP HOP育ち 悪そうな奴は大体友達

Dragon Ash/Grateful Days

たぶん日本で一番有名なパンチラインなんじゃないかと思う。
Dragon Ashの『Grateful Days』から、ZEEBRAパートの一節。

パンチラインに必要な要素として、「ツッコミどころ」があると思う。
ふーん、と聞き流せない感じというか。
これで言えば「HIP HOP育ち」ってなんだよ、みたいな。
冷静に考えると意味がわからないんだけど、なんとなく納得させられる。
「そりゃ東京生まれでHIP HOP育ちなら悪そうな奴は大体友達だろうなあ」と感覚的に思わされる感じ。

"一括で買ったベンツで帰宅"も同じで、「え!ベンツを一括で?!」から、「金の使い方かっこいいなあ」になる。
冷静につっこめば「そんなことして大丈夫?」なんだろうけど、パンチラインには聞き手を冷静にさせないパワーがある。
力でねじ伏せて納得させる。

その意味では、「何を言うか」と同じくらい「誰が言うか」も大事。
ZEEBRAもゆりやんも、そのパンチラインを吐いて頷かせる、いや、唸らせる生き様が背景にあるからこそ人の心に残る。

パンチラインのエッセンスを学ぶとぶち上げておいて身も蓋もないけど、結局のところ理屈ですべてカタがつくような話でもなさそう。
どう生きてきたか、どう生きていくか、その重みがパンチラインになる。
文章力を磨くことは人間力を磨くことなんだろう。

それでいくと、

毎日磨くスニーカーとスキル

LAMP EYE/証言

これもヒップホップのクラシック、『証言』からTWIGYのパート。(今日の記事ヒップホップ興味ない人置いてけぼりでごめんなさい。ここまで読んでるか知らんけど)

このラインは人間力の表れだと思う。
意識しないとスニーカーはなかなか毎日磨けない。ラップのスキルも同じなのかもしれない。
それを愚直に毎日コツコツ続けていくことが成功への道ということなのかな。
TWIGYはラッパーだからラップスキルの話だけど、このマインドは全ての物事に通じるのでは。

2つ、ちょっと古めの曲からの引用が続いたので次は比較的新しめの曲から。

川崎区で有名になりたきゃ 人殺すかラッパーになるかだ

BAD HOP/Kawasaki Drift

新しめといってももう6年前の曲だけど。
解散が記憶に新しいBAD HOPのT-Pablowのパンチライン。
これも普通の人からしたら「そんなわけないだろ」とつっこみが入るであろうライン。
でもT-Pablowの生きてきた川崎は本当にそうだったんじゃないかな。
周囲の治安も家庭環境も悪く、不良文化の中で育ってきて、テレビに出るには人を殺すのが一番早いような環境。
一般の人からするとスポーツ選手になるとか他にも手段はあるんだろうけど、T-Pablowが吐く言葉だからパンチラインとしてのパワーがある。

あと、劣悪な環境で育ったラッパーのパンチラインといえば特に紹介したいのはこれ。

洗濯物干すのもHIPHOP

ZORN/My Life

これこそ前段で書いたような「誰が言うか」の最たるもの。
幼少期の家庭環境も悪くて、少年院に入ったりしたこともあるZORN。
それが今は人の親になって、家事や子育てをしながら仕事をして、その人生を表現した一節。
タトゥーバチバチの腕で洗濯物干すのはそりゃHIPHOPだな、と思ってしまう。

余談だけど、このラインの解釈で同じアウトロー系ラッパーのSIMON JAPが炎上してたりもした。

まあこれは極端な言い方だけど、あながち間違ってもないと思う。
「ZORNが吐くからパンチラインになる言葉」なのは間違いない。
SIMON JAPいうところの「お前ら」の日常の中にも、それぞれのHIPHOPな振る舞いがあるとは思うけど。

というかラッパーであるSIMON JAPがTwitter(当時)でこれを言っちゃうのはちょっとダサい。
フリースタイルダンジョンとかでカッコいいところも見てるから、当時は少しがっかりした記憶がある。
それこそ、このツイートにHIPHOPは感じない。

自分にしては珍しくわりと長くなった。
話題もニッチだしここまで読んでる人いるかな?
まだ紹介したいパンチラインはたくさんあるけど、とりあえず今回は次で最後にしておきます。

やくしまるえつことボブ・マーレー iPod shuffle繋ぐ夜まで

TOKYO HEALTH CLUB/CITY GIRL 2015

パンチラインとして世間で認知されてるか知らないけど、個人的にすごく好きなライン。
ここまでアウトローでアンダーグラウンド気味な生き様のリリックを紹介してきたけど、そんなもの(好きだけど)は自分にとっての参考にはならない。
それに対してこのラインは日常感がいい。

この曲の主人公はたぶん少しルーズな感じの女の子。
そのiPodには2015年当時のサブカルチャーの象徴たるやくしまるえつこと、ブラックミュージックのレジェンドであるボブ・マーリー(曲中では韻を踏むためにマーレー表記)がシャッフル再生で流れてくる。
すごく良いセンスだと思う。この2人をプレイリストに同居させる感じが。

曲中の架空の人物なんだけど、このラインでその生き様がわかる。
ZORNのように壮絶に生きていなくても、日常の中にパンチラインの素はあると感じられる。

この曲中にはこんなフレーズもあって(さっきのが最後じゃないのか)、

美女もブスも概念 ルーペで見れば 細胞 サイエンス

同上

日常の切り取り方次第で面白い表現、印象に残るフレーズはいくらでも作れるんだなと思わされる。
美人は飽きるとかブスは慣れるとか、そんな屁理屈を捏ねるわけでもなく、「ルーペで見たらどっちも細胞じゃん」はズルい。
これもまあ冷静に考えるとそんなわけないんだけど、どこか「確かに」と思わせる勢いがある。

だいぶ長文になったけど、個人的に思うパンチラインのエッセンスは次の3つ。

①ちょっとしたツッコミどころ、フックを作る
②日常をキャッチーに切り取る
③自分の生き方や哲学を投影する

というわけで、強く伝えたいことがあるときはこの3つを意識して書いていこう。
今後もときどきnoteを書いていく中で、誰かの印象に残るフレーズを残せたら。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?