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ダイヤモンドの選択肢ひとつで、世界は変わるかもしれない

読者の皆さん、初めまして。読んでいただきありがとうございます。私はアクセサリーブランド「gray(グレイ)」を経営している株式会社BRHの代表を務める恩地祥博と言います。

過去の取材記事:
https://www.wwdjapan.com/articles/1251165
https://www.fashionsnap.com/article/gray-brh-onchiyoshihiro/

突然ですが、実は今日から渋谷駅(銀座線、京王井の頭線)、JR恵比寿駅、梅田駅に「gray(グレイ)」として初のOOH広告が掲載されています。見たよって人がいたらぜひコメントやその様子を共有していただけたら嬉しいです。今回、ブランドとして様々な想いを込めて取り組んできたので、本当にスタッフ全員が喜びます!掲載は12月19日までの予定です。

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なぜインスタグラムをはじめとしたデジタル領域を主戦場に戦ってきたブランドが、ジュエリーやアクセサリーの繁忙期に、効果測定が難しく取り組むことを躊躇うようなOOH広告にメッセージを軸とした広告を掲載したのか。その背景について少しお話しさせていただきたく、よかったら数分だけ僕に時間を使ってください。

人生を賭けて挑戦したいことが見つかった

皆さんは自分の人生を賭けて、何か挑戦したいことに出会ったことはありますか?実は最近、僕はそれが見つかりました。それは「ファッション業界におけるサステナビリティについて考え、取り組んでいくこと」です。

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ちなみに僕がとても共感しているのは、丸井が発表しているこの「VISION BOOK 2050」です。時間がある方はぜひ読んでみてください。

会社経営を始めた2017年からの4年間、最初は事業を伸ばすことにとにかく必死になっていました。「会社をデカくしたい!とにかく成長したい!」というのが目的になっていて。でもあることがきっかけで「なぜそれをやるのか」にきちんと向き合うきっかけがありました。

「WHY」や「WHY NOW」を考えて

それは今年の3月に娘が産まれたこと。その時から、ずっとずっと考えてきたのが「この子達が大きくなった時、この世界はどうなっているんだろう?」ということでした。

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考え続けた結果、僕としては特に「ファッション」はこのままでは存在しない方がいいといわれる産業になってしまうのでは、と思ったのです。なぜなら石油業界に次ぎ二番目の環境汚染要因がファッション産業と言われており、現在世界的に大きな課題となっている気候変動問題にファッション産業が与えているインパクトはとても大きい。

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※環境省のSUSTAINABLE FASHIONより引用

ファッションを楽しむ、という以前に安心して暮らすことが脅かされるならファッションなんてない方がいいと言われる未来が来てしまうかもしれない。嗜好品のファッションは特に。そう思うようになりました。

その時から僕は、この会社を今まで通りに経営していくことに価値はないと感じるようになりました。たくさんのアクセサリーを作ってお客様にたくさん買ってもらって、満足してもらえればそれでOK。それだけではもう十分ではない、もっと先の環境や社会のことも真剣に考え、実際に行動していかなければという危機感がとにかく大きくなっていきました。これは、これから新しい企業として社会に存在する意味であり、私たちの責任だ、と。

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そこで会社の存在意義を再考する機会を作り、2021年9月に「グリーンイノベーションを通じて、共創社会を発展させる」というパーパスを作りました。

子どもたちの未来でも、心の底から安心してファッションを楽しむことができる世界に貢献できるなら、どんなことでもやりたい、自分の人生を賭けるのも惜しくない。僕自身の覚悟も決まって、心の底からそう思うようになりました。

サステナビリティって険しい

ただ実際に、“サステナビリティ”に事業として向き合い、取り組むのって本当に難しいことを実感しています。やはり、外から見ているのと当事者として取り組むことって、全然違うと痛感したのですが。

”サステナビリティ”と一言に言っても、様々な視点で課題が存在し、それにひとつひとつ取り組んでいくことが必要であり、どのような優先順位で、時間軸で遂行していくかをプランしてマネジメントしていくのは、すぐにできることじゃない。なぜなら、既存のつくり方や構造の変革から取り組まなければ、本当の意味で「取り組んでいる」とは言えないからです。

だけど気候変動などの環境問題は待ったなしで進んでいて、一刻も早い解決が求められる。僕らは当初純粋に「できるだけ多くの人に、ファッションを楽しんでもらいたい」とスタートしたブランドだったために、僕らとしては何から始めるべきか、サステナブルに関する取り組みを行い、発信していくことについて、グリーンウォッシュに繋がる可能性はないのか、独りよがりに見えてしまうのではないか、など色々思うことももちろんありました。今まで違う葛藤が多くあったのも、事実です。

でもそんな中でも、動き始めなければ何も変えられない。僕らができる選択はあるし、すべきことがある。WHY NOWを考えたときに、今じゃなきゃいけない理由もある。完璧にしてから動くことが絶対ではないと思ったから、まず実際にアクションを起こしていくことを大切にしてみたいと考えるようになりました。

HOLIDAY COLLECTION 2021

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そのひとつとして始めたのが、「素材」の見直しです。今回、ホリデーコレクションでブランドとして初めて導入したのがラボグロウンダイヤモンドというダイヤモンドで、世の中的には「合成ダイヤモンド」「人工ダイヤモンド」と表現されているものなのですが。そもそもラボグロウンダイヤモンドってなんだ?という人が圧倒的に多いと思います。

そんな方には、今回fashionsnapさんに取り組みの背景を取材してもらっているので、ぜひこれも併せて読んでいただけると嬉しいです。
https://www.fashionsnap.com/article/gray-labgrown-diamond/

OOH広告の背景

そして、なぜ「屋外広告に取り組むことを決めたのか」という本題に関してですが、なぜ今回OOH広告を使ってダイヤモンドを使ったプロダクトについてのメッセージを発信をしたいと思ったかというと、世の中の合成ダイヤモンドのイメージを変えたかったからです。fashionsnapの対談取材の中でも話したのですが、言葉のイメージってすごく強い。「人工」「合成」と聞くと、偽物感や安っぽさを感じる人も多いのでは、と思います。

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でも、実態は生み出される環境が違うだけでダイヤモンドの構造自体は全く一緒で、鑑定士の人でも見分けれないものだったりするのです。それでいて、現在天然石の発掘の背景で問題とされている児童労働や紛争のきっかけになっていることもないと言われており、天然ダイヤモンドに比べて環境への負担も少ない形で生み出されている。

新しい素材の選択肢を、自分が改めて知って理解したとき、この事実を正しく知ってもらえれば、ラボグロウンダイヤモンドも「ひとつの選択肢」だともっと多くの人に感じてもらえるのではないか。そう思ったことがきっかけで、ラボグロウンダイヤモンドについて知り、新しいイメージを連想できるポジティブなコピーを作ろうと思いました。

そして、何度もコピーライターさんと話し合いを重ねて生まれたのが「誰かにも、やさしいダイヤモンド」というコピーです。

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誰かにも、やさしいダイヤモンド。

誰かにも、やさしいダイヤモンド。

誰かにも、やさしいダイヤモンド。
私たちのダイヤは「天然」ではありません。
それは、ラボグロウンダイヤと呼ばれる
研究所育ちの鉱石。

天然とまったく同じ成分・構造を持ちますが、
環境への負担が少なく、紛争との関わりを持たない
これからの素材です。

ダイヤモンドを身につける喜びが、
決して、誰かの悲しみに繋がらないために。

gray は、始めます。
一粒からのサステナブル。
ラボグロウンダイヤという選択を。

補足をすると、僕自身は天然のダイヤモンドを否定するわけではなく、今の段階では新しい選択肢を知ってもらうことが何よりも重要だと思って今回の広告を出しています。というのも天然ダイヤモンドに比べて持続可能な環境下で生み出されているものではあるが、現段階では一概に地球環境に"良い"という根拠がはっきり示せないというのも事実です。「MORE GOOD」というよりは「LESS BAD」というニュアンスが正しくて、このあたりはもっと僕自身も勉強をしたり生産している背景を把握し、素材の調達については透明性を重視したいと考えています。

「ジュエリーにも新しい選択肢がある」「サステナブルな選択肢がある」と言うことが伝わって、それを誰かが発信してくれたり、取り上げてくれたり、選んでくれて、誰かに共有する機会を作ってくれたり、そんなことから少しずつ、自分たちにとっていい未来を考えるきっかけができるのではないか、と考えています。

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そういった強い想いから今回の取り組みをしたわけなのですが、包み隠さず話すと、勿論色々な面でリスクもあります。

そもそもまだまだ良さを知られていない、選ばれづらい現状の人工ダイヤモンド(ラボグロウンダイヤモンド)を使って挑んでいること、(ほとんどのブランドのホリデーコレクションには、今まで通り天然ダイヤモンドが使われています)デジタルマーケティングを軸として展開してきたブランドだけに、効果測定しづらいOOH広告は費用対効果がふわっとしてしまうのではないか、いきなりこの規模でやらない方が良かったかもしれない、まだ早かったかもねと言われるかもしれない。シンプルに、まだスタンダードではない新しい素材について発信するとき、全然選ばれない可能性だってある。正直、はじめてこんなビビっています...。

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でも誰かが始めること、選択すること、発信することからしか変えられないのだとしたら、僕たちはそれを背負ってブランドをつくっていきたい。それが、人生を賭けて挑むと決めた人間が起こすべきアクションなんじゃないかと考えています。

ホリデーシーズンという、ジュエリー・アクセサリー業界では一番注目が集まるこの時期に発信することが、新しい素材について一番注目してもらえるタイミングであり、今ここで動き始めなければいつまでたっても「ああ、なんか偽物っぽいあのダイヤモンドね、やっぱり天然ダイヤモンドじゃないとね」と、既存のイメージは変わっていかないかもしれない。

僕らが全てを変えていけるわけではないけれど、僕らが切り開いていきたい未来への意志を、世の中にきちんと示していきたい。これが大失敗に終わったら、というかすでに現段階で僕は経営者失格なのかもしれないけど、これがきっかけでもし世の中が少しでも変わり始めるなら、そこが僕のスタートです。

ここまで読んでくださったあなたに

ここまで読んでくださった方へ、まずはありがとうございます。この文章を読んで、もし一緒にファッションを安心して楽しめる未来を考えてみたい、共感したよという方は、誰か近くの人と自分が身につけているものについて、少し想いを馳せたり、考えてみてもらえると嬉しいです。そしてもしよければ、grayのラボグロウンダイヤモンドをあしらったHOLIDAY COLLECTIONを、ギフトの選択肢のひとつに入れてみてもらえたらと思います。

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最後に、自社のパーパスにも「共創社会」と明記しているように、ファッション産業の環境問題は絶対一社では解決できないし、それこそ大企業がドラスティックに変わらないことには大きく前進しないと僕は思っています。だけど大企業も中小企業も問わず、それぞれが事情を抱える中、大きく変わる挑戦にはとてつもないリスクがあるし、守るべきものも異なる。だから、世界や社会のために動かなくいいなんてことは絶対にないが、これは本当にサステナブルな選択肢だと言えるのか?に現状明確な正解がない中、既存の仕組みを変え、反映させていくにはとてつもない時間がかかり、発言一つとってもとてもセンシティブに考えないといけない。だから、それぞれがまず、現状を見つめ直し、できることからはじめていくことでしか変えられないと思います。

そんな時にこそ、僕らみたいにつくり方や届け方がまだ確立されていないスタートアップが率先して、既存の仕組みや構造に囚われず、新しいあり方を模索し、実践することでメッセージを発信していくことができたらいいなと。持続可能な社会を推し進める、台風の目となり、ユーザーの皆さんとも、同じような未来を目指す企業とも手を取り合って考えていきたい。半人前以下の僕が偉そうに言えることじゃないんですが、みんなで協力した方が、きっと早いし遠くに行けると信じて。

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こういった想いで事業をやっているので、ぜひ協業の可能性や、社会のより良い未来を目指してアクションを起こすための提案などをしてくださる個人、企業の方は会社のメール(pr@brh.jp)でも個人のSNSでもご連絡いただけたら嬉しいです。

今回は、僕たちのこれからの取り組みの背景をご紹介しました!ちょうど先週末に、タイミング良くVoicyのパーソナリティに選んでいただけたので、ファッションのサステナビリティや事業の裏側なんかも、これからはラジオを中心に話をしていけたらいいなと思っています。

https://voicy.jp/channel/2515

読んでいただき、ありがとうございました!









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