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【エヴァ考察】 アヤナミ四姉妹とそのゆくえ

今回は、破の次回予告に登場するアヤナミ四姉妹についてです。
ここでは次のことを所与とします。すなわち、同予告は破からQのいわゆる空白の14年を描いたものである。

1.ゼーレチルドレン

まず、本記事でアヤナミ四姉妹というのは次の4人を指します。

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同予告の次の人影もこの四姉妹です(下記コンテC-16)。

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破コンテ(マーカーは引用者。以下同じ)

そして彼女らはカヲル君と同じくゼーレの者ということもわかります(同C-17)。

ゼーレチルドレンといえばQ本編のアヤナミレイ(仮称)、いわゆる黒波が思い出されます。というのも、Qのシンジと冬月の将棋シーン、その没カットにそうした記述があるからです(C-866)。

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Qコンテ.「あの複製体」とは黒波を指します

いったんまとめると、四姉妹と黒波はネルフの関知しないゼーレのアヤナミタイプとなります。今回、彼女たちを考察することで空白の14年に多少なりとも切り込んでいければと思います。

いきなり脱線ですが、上記コンテの「レイ(ブラック)」(破C-16)の“ブラック“が彼女のプラグスーツの色を指しているならば、彼女と黒波は同じ人物という可能性もでてきます。

というのも最初の画像の大きいレイが着ている白ニット・赤ネクタイと同じ物が、Q本編で黒波の部屋の外にあったダンボールに見られたからです。もっとも以下ではこれについての判断を留保して進めます。

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2.アドバンスド・アヤナミシリーズと四姉妹

さて、アヤナミタイプは最終的にアドバンスド・アヤナミシリーズに行き着いたといえます。

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冬月「アダムスの器の贄となる、雌雄もなく純粋な魂だけで造られたけがれなき生命体。アドバンスド・アヤナミシリーズの再生」(シン・エヴァ)

ここではまず、このアヤナミシリーズが単なるヒトのクローンではないこと指摘したいと思います。冬月先生の上記セリフから考えます。

「雌雄なく」というのは単独で完全な生命体である使徒を連想させます。
「けがれなき」という言葉も次に述べるように使徒や生命の実を連想させます。

聖書では、アダムとイブが神の言いつけに背いて禁断の木の実の1つ、知恵の実を食べたことを「原罪げんざい」といいます。
 このことからけがれなき生命体というのは、原罪を負わない・知恵の実を食べていない、ヒトとは異なる生命の実に由来する生命体を意味しそうです。

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(C–388) ゲンドウ「〔セカンドインパクトの爆心地は〕ヒトさえ立ち入ることのできぬ、原罪のけがれなき、浄化された世界だからな」〔〕内引用者 補足〔〕内引用者補足

これは南極を眺めているシーンのもので、上記の設定が表れていて参考になります。アドバンスドシリーズはヒトとは異なる生命体のようです。

蛇足になりますが、先生のセリフの残りの部分「純粋な魂だけで作られた」というのは前述将棋シーンの没カットを想起させます(下記C-863、864)。

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Qコンテ

アドバンスドシリーズは、不自然に目を開いたまま裸で倒れており、およそ人らしいことは何もしなさそうな様子でした。ユイという個別具体的な人の情報はおろか、もっと基本的な情報すら転送されていない気がします。ゆえに純粋と。

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最後にシン・エヴァから黒波の消滅シーンです。彼女がアドバンスドシリーズかは不明ですが、上述の通りゼーレが作ったアヤナミタイプです。彼女はコア化した大地も平気でしたからヒトではないことが確認できます。そして、彼女がネルフ跡地で消滅した際に現れた、プラグスーツ上の光の十字柱と虹の輪がさみしげでした。

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これまで光の十字柱と虹が現れたのは、使徒やエヴァが消滅したときでした。新劇場版で人が消滅するシーンは冬月先生くらいで、彼の場合、LCLに還ったもののそれらは生じませんでした。

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黒波も生命の実由来といえそうです。結局、ゼーレのアヤナミタイプは生命の実に由来する生命体である。

そして冬月は上記台詞で「シリーズの再生」と言っていることから、アドバンスドシリーズは一度失われていることがわかります。これについては、同シリーズと4姉妹はともに使徒封印用呪詛紋様が壁に並ぶ部屋にいたことを思い出したい(上記最初の画像と下記画像参照)。劇中で人外を示唆するこの紋様を両者は共通にするため、これらは同じシリーズと考えられそうです。

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以上から、冬月の言う失われたシリーズとはアヤナミ四姉妹であり、彼女らも使徒に近い生命体だったのではないか。このように仮定し以下進めていきます(この点結論出ました→「人類補完計画とコア化」)。

3.四姉妹の行方

さて、四姉妹はQ及びシンで登場しなかったため、おそらく空白の14年のサードインパクト前後でお亡くなりになった。その経緯を考察するにはあまりに材料が少ないですが、ここでは次の画像と画コンテをきっかけに少し考えてみます。

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Qコンテ

これらはQの第12使徒のシーンです。Mark.06の中から出てきました。画コンテではっきりとアヤナミを匂わせています(C-1270等)。Mark.06は何者なのか。

このMark.06は使徒から作られたという考察を見つけました。

私自身も前回、Markシリーズは使徒シリーズという考察をしましたが、異なる視点からの考察で参考になります。

このMark.06はQ本編でMark.09に首を切られるのですが、Mark.06本体が使徒由来ならば、次の画コンテ(C-1258)も理解できます。

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Qコンテ

つまり、Mark.06の装甲あるいは拘束具の中が空洞なのは、飛び出してきた全身コアの使徒自体がMark.06だったからというわけです(はじめはエヴァの中身が使徒に食いつくされた、つまりMark.06と第12使徒は別物と思っていました)。

さてここからが本題ですが、気になるのは破で真のエヴァだったMark.06がQで第12使徒に認定されていたのはどうしてかです。
まず、そもそもMark.06自体が初めから使徒だったとすれば、破で月から地上に降下した時点で使徒と認定されるでしょう。すると直ちに殲滅作戦が遂行されそうですが、物語的にニアサーの後処理、国連軍によるネルフ施設封鎖も控えているのに、どのように話が展開するのか。少々無理があるように思われます。やはり、サードの際なんらかの原因でMark.06に変化が生じたのではないだろうか。

ここで第12使徒がアヤナミの顔をしていたことを手がかりに仮説を立てます。
アヤナミとMark.06で第12の使徒が生まれたのではないか、と。
使徒に近い生命体であるアヤナミと、使徒由来のエヴァであるMark.06。
もはや使徒化する展開しか考えられない組み合わせではないでしょうか。

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「——これは、私?」

このように考えれば、上述黒波(別レイ)の戸惑いは、単純に目の前の使徒が自身の顔に見えたこと以上に、根源的に自分と同じものを感じとったからとに落ちます。まさしく目の前でうごめく物体は自身と同じクローンが変形したもの(あるいは取り込まれて生まれたもの?)なのだから。黒波もひるがえって「私は、何?」と自身の存在を自問します(上記C-1271)。



4.アヤナミタイプの運命

ここでアヤナミタイプとは何であったかに立ち返って考察したいので、人類補完計画という物語におけるレイとアスカについておさらいします。
シンエヴァでサイクロプスゲンドウは次のように言います。

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「綾波と式波型パイロットはもとよりこのために用意されていたもの」

アスカは、自身の目に宿していた第9の使徒を解放し、使徒化した状態で13号機に取り込まれることで13号機の覚醒(シン化)のにえとなりました。

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レイは、第10の使徒に吸収され、初号機に使徒ごと取り込まれることで初号機の覚醒(シン化)の贄となったといえるでしょう。

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(破C-1833)冬月「やはり、あのふたりで初号機の覚醒は成ったな」

2人とも自身を犠牲に覚醒の贄となる使徒をエヴァに運ぶ役割を担っていたのではないか。使徒とは別にエヴァ覚醒の贄となるのが彼女らに仕組まれた運命


ちょっと何を言ってるのかと思われた方。おそらく覚醒について説明が抜けているからだと思われます。

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ゲンドウ「初号機パイロットが覚醒したか」

シン・エヴァで、パイロットの覚醒という設定が明らかになりました(翻って、破でこのとき機体はいわゆる擬似シン化第1形態)。そこからパイロットとは別に機体の覚醒段階が考えられることになり(擬似シン化第2形態)、後者では使徒が取り込まれることが関係してくるといった話になります.

ここで破の初号機覚醒シーンをおさらいすると、①パイロット覚醒(綾波を返せ)、②初号機が擬似シン化第1形態になり(天使の輪等)、③第10使徒殲滅(虹)、使徒は形象崩壊と共に巨大な綾波に変形、④初号期に取り込まれるといった流れでした。詳しくは次の動画を紹介することで省かせていただきます。


話を戻すと、四姉妹はサードインパクトで各々この役割を担ったのではないか。


まず1人は先ほどの第12使徒との可能性。下記画像のように同使徒はMark.06から飛び出し、自ら13号機の口元に向かい取り込まれたように見えました。これはアヤナミが使徒をエヴァまで運ぶというまさに彼女が介在した描写に思えます。

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もう1人はリリスとの可能性があります。リリスの頭部がアヤナミの顔をしていたことは、四姉妹が接触していることを示唆する描写ではないか。ただし、リリスがエヴァ覚醒の贄となるとは考えにくいため、異なる経緯がありそうです。

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さらにもう1人。Qでカヲルが言うにサードインパクトのトリガーは初号機(詳細は「セカンドインパクトと13号機」)。仮にそのインパクトには初号機の再度の覚醒が必要で、もう1体の使徒(第11の使徒?)を贄とする必要があったなら、アヤナミの出番ではないか。

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(Q・C-0809) 「一度覚醒し——ガフの扉を開いたエヴァ初号機は、サードインパクトのトリガーとなってしまった。リリンの言うニアサードインパクト。全てのキッカケは——
(Q・C-0810)  君なんだよ」

ここで再度の覚醒が必要というのは、シン・エヴァで再起動した13号機がインパクトのための覚醒(シン化)に新たな使徒を取り込んでいだことを参考にしています。インパクトの儀式を行う度に贄は求められる。サードの時の初号機も使徒を贄として必要としたのではないか。

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以上、4人のうち3人の行方について何となく妄想してみました。
となるとあと1人は黒波なのでしょうか?

このように考えていくと、Q予告の「ついに集う、運命を仕組まれた子供たち」とはなるほど”過酷過ぎるな“ですね。

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今回はここまでです。アヤナミ4姉妹から空白の14年を考察してみました.

論旨が追いにくい文章になったのではと危惧してますが最後まで読んでいただきありがとうございました。
綾波レイや空白の14年を考察するにあたって参考になれば幸いです。
何か質問、感想等あれば遠慮なくお願いします。

※2021/05/24大幅に加筆修正

画像:©khara/Project Eva.

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