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【孤考①】”記憶”と”物語“で私は動く

”今まで”と違う日々。

毎日正午に「新型コロナウイルスの完全予防のため、不要不急の外出は控えましょう…」という防災無線が流れる。このアナウンスを今日までに何回聴いただろうかと思いを巡らせる。
まだ2か月程度なのに、感傷的になる。
トップの画像は、3年前の弘前城の桜。
NHK仙台に勤めていたときは、東北各地を休みのたびに訪れていて、とりわけ弘前には何度も何度も車を走らせた。雪に閉ざされた冬、桜でにぎわいが増す春。新緑の奥入瀬、リンゴの花が咲くころ。夏の弘前ねぷた。色づく岩木山。それに、一人で円卓を囲んだレトロモダンなフレンチ。仲良しのお嬢のお父さんがやってる気のいい居酒屋。繰り返し、繰り返し焼き付けた情景は今でも記憶に残っている。
今年は弘前城が閉鎖され、桜は人々の目に触れることなく、満開を迎えて散っていった。出産前ラストの旅行で、桜の弘前に行けたらと半年前くらいから計画していたけれど、もちろん叶わなかった。
来年、家族三人で行けるといいなと思う。
beforeコロナとは異なる日々を送る中で、”記憶”に残っている温かさを心から希求している自分に気づく。

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”記憶”が、未来へも繋がる。

朝起きる。
屋内で軽く体を動かす。
たまに散歩したりする。
朝昼晩の三食を作る。
テイクアウトを利用したり、レストランのレシピを参考にしたりする。
大体の日々の動き。ニュースで既報だけれど、我が家でも食料品・生活必需品をベースに自粛要請期間はお金を使っている。それ以外だと、在宅ワークのための事務機器や電子機器を買い足したり、自宅を快適にするための収納グッズや生活雑貨、あと忘れちゃいけないのが、ネットフリックス。人生で初めて韓流ドラマにドはまりしてしまった。夢にまで見る重症度。それはさておき、購買意欲に関しては明らかに衰退していると自覚せざるを得ない。
(この経済分析のコラム、割と納得度高いです。)
そんな状況下でも、贅沢かしらと思いながら、「お取り寄せ」や「テイクアウト」したりする。夫と、あるいは友人とよく行っていた、あのお店。看板メニューの味が忘れられない、あのお店。失恋して大泣きした友人を囲んだ、あのお店。話すのがとても楽しかったイケメンの店員さんがいる、あのお店。beforeコロナの”記憶”が、衰退してしまった私の購買意欲を確実に刺激する。それぞれにショートショートが書けそうなくらいの思い入れがあって、「落ち着いたらまた行きたい」「また会いたい」と、私の未来にもその”記憶”は作用している。

強烈な”物語”に、惹かれる。

弊Twitterでもレシピを参考にさせてもらって、たまに呟いているけれど、【sio】の鳥羽周作さんの”物語”に心奪われている。
レシピの無料公開、オンラインの料理教室、テイクアウト、デリバリー。これらをとんでもないクオリティとスピードで提供し始めた。料理の価値、レストランの価値、そういうものを鳥羽さんの思いが飛び越えている…と感じる。インタビューの内容を一部引用させていただく。

「僕らは一番シンプルで根本的な状態に立ち返ったのです。飲食店はお客様に何かを提供して始めて利益が生まれます。“お客様を大事にしなかったら自分たちも元気になれない”という発想のもとに全部を考えているのです。今はビジネス的な発想よりも“GIVE”の精神が問われています。危機的状況だからこそ、本質の部分が問われているんです。極端な話、海で10人が溺れているときに、一艘しかないボートに我先に乗ろうとするのか、ギリギリまでみんなが助かる道を選ぶのかといったら、僕は後者のタイプです」

鳥羽さんの”物語”は、未来を創る。
少なくとも無料公開のレシピを作り、感動したあまりデリバリーも利用した私は、「落ち着いたら行ってみたい」「この人の”物語”に触れてみたい」と思った。

私が今動かされるのは「”記憶”と”物語”だ」と独り考え至ったのでした。


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