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怪獣映画やパニック映画とかだとOPでいきなり退場するタイプです。ええ、私が。な話

牛を多数飼って絞った乳を売る仕事を生業にしてます。

と、人に言うと「素敵ですね!自然と共に生きてるって感じ!」と、非常に好意的に受け取ってくれる人がいらっしゃいます。「牛とか馬ってとても賢くて優しいんですよね〜!一緒に暮らせるなんて幸せですね!」

いやいやいやいや。
皆「牧歌的」って言葉に騙されてる。でもまあ仕方ないよな。私自身嫁に来る前そう思ってたもん。

牛は牛には優しいのかも知れんが、向こうが人間に忖度する必要全ッ然無いからね。
だって対等な関係じゃねーもん。特にフィジカルで言うとコッチが圧倒的弱者。なんで大人しく乳絞られてんだろうって思うもん。たまッたま歴史上人間が搾取する側になってたってだけ。
まー、折角だから牛がどんだけ強者か・人間がどんだけちっぽけか、分かりやすいエピソードをひとつしようと思う。

ウチの牛舎は普段は牛を首輪で所定の位置に繋いでおくんだけど時々鎖が外れて脱走する個体が居る。
大体は牛舎内をうろついてる間に捕まえるんだけど、その日は運悪くいつもは開いていない重機用の入り口が開いていてソイツは外に出てしまった。
コレはヤバい。ウチは敷地の周りをぐるっと小川がお堀のように巡っているから落ちたりしたら600kg以上ある巨大じゃタダでは済まない。牧場の人間総動員して皆必死に確保しようとしたんだけど、裏山に逃げられてしまった。

牛歩って言葉有るけどアレ嘘だかんね。山道駆け上る脚の早いのなんの。
牛は山岳動物のヤギと親戚で蹄の形が悪路向きなんだ。馬と違って不安定な地面を踏み締められる構造をしてる。しかもヤツらは四輪駆動だから二本足の人間なんて話にならんのよ。
人間が怯む藪や蜂の羽音にもビクともしない。多勢に無勢で囲い込もうとしても間隙を突いて牛若丸のよーに逃げまくる。たった一頭の牛に振り回されたまま日も傾いて、その日の捜索は打ち切りになった。

でも明日見つけたとしても、捕まえられる気がしない。牛の能力の強さは知ってる気でいたが、だいぶ弱く見誤ってたと思い知らされた。



ジェシー・Jの声を可視化すると正六角形の集合体に見えるんじゃないかな。
力強くて爆発力の有る声なんだけど、どちらかってーと攻撃的と言うよりは自然が作る堅牢な蜂の巣のイメージ。安定してるんだ。

六角形のハニカム構造って、互いに支え合ってる辺の数が多いから外部からの力を分散しやすいよーで構成はシンプルなのに非常に強固。コレしかも受け流し効果も兼ね備えてるってコトだよね。
(コレで調べて初めて知ったんだけど、サッカーゴールのネットの編み方が六角形になった理由がそれでらしい。キャプテン翼で散々破って来たから‥。)

野生と科学って相反するような不思議な感じもすんだけど、自然って実は支離滅裂でも出鱈目でも無い。一定の時間を置いて同じルートで縄張りを見回ったり・1年の内で子を設けたり子育てする期間が決まってたり、野生動物は必ず何らかの規則性を持ってる。
ジェシーの声って正にそう言う感じ。ワイルドなんだけど雑な勢いとかじゃ無いんだよね。幾何学的な形を理科的に組み合わせてるからこその安定だし、そうやって成り立たせた安定感が有るからこそオフェンシブパワーに満ち溢れてるのだと思う。

(圧倒的歌唱力のジェシー・Jの楽曲の中でも、力強いパワータイプの歌とそーっと歌ってる曲選んでみた。声の強弱だけに依存していないこの感じ。静かな歌い方でも不思議と声の質は強いんだ。
ジェシーの声は単純に広がっていくだけじゃ無くて、爆縮の作用も有るよーな気がしてる。声が引き締まってて隙がない。)



冒頭の行方不明になった牛のコトだけど、次の日の朝には逃げた牛舎の入り口の前で待っていた。家出してみたものの水もエサも自動で配給される環境を思い出して帰ってきたんだろうな。まあ、熊にやられなくて良かった。
あんなに必死に追っかけたのに‥。「いや戻って来たんかい!!」と思わず突っ込むと、ウンコまみれの尻尾で叩き返された。

牛が賢いのはソレは結構本当です。馬鹿にしていい人間を見分けます。
私達牛飼いは彼女らとこれからも勝てる訳ない死闘を繰り返すのです。

ええ、毎日。

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