なぜ郵便料金を値上げするのか?
約1200文字の記事です。
郵便料金の値上げ
2024年10月に郵便料金が値上げされる。これは燃料費などの高騰も一因だけれど、私たち日本国民の生活スタイルの変化も一因である。
減る郵便物数
まず、郵便物数は年々減っている。2012年に約189億通だったけれど、2021年には149億通に減っている。
郵便物数が減っているのならば郵便配達の手間は減っているのだから郵便料金を上げずに郵便配達に携わる人員を整理すれば済む話のように思える。しかしことはそう単純ではない。実は、郵便配達の手間は減っておらず、むしろ増えている。
住宅戸数と配達箇所数の増加
少子化や人口減少が言われているけれど、日本の住宅戸数は増えている。2013年には6063万戸だったけれど2023年には6502万戸になっている。
一方で、空き家も820万戸(2013年)から900万戸(2023年)に増えている。しかし空き家は80万戸しか増えていないのに住宅戸数は上記のように400万戸以上も増えている。そしてたとえ空き家となっていても差出人が郵便物を差し出し、かつ配達原簿に名前が残り、かつ受箱が塞がれてなければ配達せざるをえない。
ちなみに、この住宅戸数の増加は、単独世帯の増加や不動産業界の収益構造が原因と言われている。単独世帯について言えば、2013年には1328万5千世帯だった単独世帯は2022年には1785万2千世帯に増えている。一方で三世代世帯は2013年には332万9世帯だったけれど2022年には208万6世帯に減っている。(厚生労働省「世帯数と世帯人員の状況」)。
話を本筋へ戻す。住宅戸数が増えているのだから受箱も増えていると推測できる。日本郵便が2018年にまとめた「郵便事業の現状について」にも下記のような記載があり、受箱の数、つまり配達箇所数は1996年から2017年にかけて1000万箇所以上増えていることが分かる。
通数は減り箇所数は増える
まとめると、郵便物数は減っているけれど、戸数は増え受箱の数も増えている。つまり、収入は減っているけれど仕事は増えている、という状況になっている。これは郵便配達員がよく口にする体感である「通数は減っているけれど、箇所数は増えている」と合致する。
この郵便物数事情は個数≒収入が増えて仕事も増えている宅配便とは無関係に起こっている事態だ。
三世代世帯など大家族を避け、単独世帯を好む生活スタイルの変化を一因として住宅戸数が増えている。そのため受箱の数が増え郵便配達員の仕事が増えているのにトータルでの収入は減っている。そのため郵便制度を維持するためには一通あたりの収入、つまり郵便料金を値上げるしかないのだ。
郵便料金の値上げは止まらない
郵便制度は大家族を前提とする時代にはじまった。その前提はすでに崩れている。生活スタイルの変化は誰もこれをとどめることはできず、ゆえに郵便料金の値上げはこれからも必要になるだろう。
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