「良くも悪くも何かが変わる」今週の俳句(2021.02.21-28)

春は不安定で、ナイーブで、脆くて触ってみたくなる生命力に溢れている。どん底ではなく、絶頂期でもない。ただ何かが変わりそうな予感がしている。そういうときにこそ僕は生きているって強く感じられる。

天道虫 デスクで摘む マドレーヌ

仕事中のおやつは季節によっていろいろと変わる。今週は少し暖かくなってきたから、バターをたっぷり使ったマドレーヌとブラックコーヒー。一息ついて窓を眺めると、春の陽気に誘われて出てきたてんとう虫がよちよちと窓枠を登っている。

春ニット 一輪挿しの ビール瓶

春だから部屋にも春っぽさを取り入れようと思い、ニットを着て出かけて、花屋さんで小さな花を一輪買ってみた。うきうきしながら家に帰ると花なんて普段飾らないから花瓶がない。どうしようかと思い部屋を見渡してみるとちょうど良さそうなビール瓶。冬だったら、花瓶を買いにまた出かけ直さなくちゃと思ったかもしれないけれど、春は僕をおおらかで優しい気持ちにさせてくれる。

水温む いちご白書と 白ビール

社会を変えようという若者の熱い思いに触れたくて、久しぶりにいちご白書を観た。日本人にとっていちご白書は、松任谷由実の"いちご白書をもう一度"と切っても切れない関係にあるだろう。僕はもう、既得権益の、大人の側の人間に変わってしまいつつあるのかもしれないと思いながら、冷えたグラスに注がれた白ビールをすすった。数年前まではピルスナーをビール瓶からラッパ飲みしていたのに。

大試験 付箋だらけの レシピ本

試験前になると勉強以外のことが気になりだしてくるのは誰にとっても経験があることだろう。僕もその例に漏れず、試験前には模様替えをしたり小説を読み直したりしたくなってしまう。でも完全に勉強から離れたことをするのはなんだか罪悪感がある。だから本を読むのなら遊んでいるんじゃないんだという自分なりのルールを作り、部屋にある本を片っ端から読んでいった。試験が終わる頃には、買ってからほとんど読まずに放置されていたレシピ本まで付箋だらけになっていた。

四人掛け パステルカラーの スニーカー

僕は電車のボックス席が好きだ。同じボックスに座っている人たちと目的地に着くまでの間、ボックスという自分たちだけの空間を共有できる気がするからだ。とはいっても知らない人の顔をジロジロ眺めるのも失礼だから、だいたいは目線を落として四人の足がぶつかり合うようになっている足元を眺めている。
乗客がどんな靴を履いているかで最近の流行や季節感、その路線の利用者層がだいたいわかる。特に冬から春に変わるタイミングでは、ブーツからカラフルなスニーカーに履き替えられていく様子が、土から芽が出て花が咲くようにも感じられる。

俳句の説明書

これまでは俳句の作り方やセオリーを勉強せずにとりあえず直感だけで作ってきましたが、#今日の一句 を始めてから一ヶ月が経ったので、入門本でちょっと勉強してみました。新しく買った家電を適当にいじってみて、しばらくしてから説明書を読んでみるときの気持ちに似ています。僕は新しいことを学ぶときに先に理論を知りたくなってしまう癖があるんですが、それだと整然とした理論に圧倒されて自分がしょうもない作品を作るのが恥ずかしくなったり、作品を公表するハードルが上がったりしてしまうので、今回は意識して俳句の理論を学ばずにまずは一ヶ月遊んでみました。

この入門書のなかで初心者のためのトレーニングとして紹介されていたのが、まず5音の名詞を見つけて句末に据え、それを修飾する7音をその前に置いて、最後にその句の雰囲気を決める5音の季語を頭に付けるという方法。

例)春ニット(3.季語) 一輪挿しの(2.修飾) ビール瓶(1.テーマの名詞)

だから今週の俳句はほとんどその構成になっています。この構成を使うと簡単に俳句が作れる一方で、構成ありきになってしまって自由なリズムや発想が制限されるようにも感じました。このテクニックを最初に知ってしまっていたら、おそらくこの構成を使った俳句ばかりを詠んでいただろうと思います。ものごとを自由に楽しむためにはまずは自分でやってみて、足りないところをあとから補うという順番がいいんだろうなと実感しました。
でも急に一句詠んでみて、と言われたときにはさっと作りやすいので(そのリスクがあるから俳句が趣味ですって言いづらい)、覚えておいて悪くないテクニックではあると思いました。

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