マガジンのカバー画像

せんちめんたる・なんせんす

24
嘘吐きは夜の海を散歩する。嘘吐きの僕の日常のことです。
運営しているクリエイター

#FtM

前の人生を思い出したと云う友人の話(1)

「僕の產まれる前の人生は、明治生まれの男で閒違ひないやうだ」 さう言つた幾野君は手に持つた白いマグカップに口を付けた。 「小さな弟たちが居たり姉が居たりとそんな夢を見る事がある。皆んな着物を着て居たよ」 「突然呼び出したと思つたらそんな話かい?」 僕は首を些か右に傾けて、彼に向かつて歎息とも笑ひともつかない聲を溢す。 「否、それだけでは無いんだけどね。ここ最近、生まれてこの方體驗した筈が無い事を思ひ出し續けてしまひ、氣持ちを持て餘して居るんだ。けれど此樣な事を誰彼構はず話した

僕と戀(2)

僕にとつて最も「初戀」に近いエピソードは、小學3年生の頃に少年團の活動で一緖になつた他校の同學年の女の子との事かもしれない。 僕が入つてゐた少年團はボーイスカウトに近い物で、夏休みには他校の團員も一緖にキャンプの活動があつた。 彼女とはその2泊3日ほどを一緖に過ごした間柄だつた。 可愛くて、面白くて、冗談のノリが合つて、繪もうまくて、瘦せてゐて、何なら名前もすごく可愛く思へて、とにかく大好きだつた。 キャンプの間は何時も二人でべつたり行動してゐた。かう言ふのは此の年頃の女子

僕の戀(1)

「溫子は好きな男の子、誰?」そんな風に聞かれたのは小學1年の頃だつた。當時、岡田あーみん目當てでりぼんを購讀してゐた僕は、掲載されていた恋愛少女漫畫を讀んでゐたこともあり「戀愛」がどう云ふものか、7歲とはいへ形式の上では理解してゐた。 近所には女の子が多く、この質問を投げかけたのは何時も構つて呉れてゐる小4と小2のお姉さんたちだつた。人見知りで內氣な僕は、可愛い可愛いと妹のやうに扱つてくれるこのお姉さんたちと何時も一緖に遊んでゐた。 僕は非常に素直な子供だつた。女體化して