文學の神に愛されて居る訳では無かった。
靑白い顏をした幾野君は卓の前に僕が座ると「ああ君か、よく來てくれたね。有難う」と云ふ。
「どうしたんだい」と僕は笑ひながらミルクティーに蜂蜜を注ぐと木のマドラーでかき混ぜた。肉桂の香りが彈む。
「僕が小說を書いて居ないと不仕合せになる體質だと云ふことは、君も知つての通りだが……」
「ああ、さうだつたね。君はいつもさうだ」
「此れは唯の强すぎる野心や自己顯示欲に由來するものだと思つて居たけどどうやらさうではなかつたらしい」
「どう云ふことだい?」
幾野君がかう切り出した時は僕に