周庭さんの逮捕と戦略について(2-0)

 先日、香港で、周庭さんやディリーアップル(新聞社)の方々が逮捕されました。
 僕は「感情」として、こういう方たちをもの凄く応援していますし、心配もしておりますし、尊敬もしております。純粋な人間が好きなので、今回の一連の事件に関しては、本当に悲しく思います。


滅びの美学

 けれども、「事実」を元にした戦略という面から見ると、香港の民主主義運動は下策だなと、ずっと思っていました。こうなる結果は見えていましたから。
 だって考えてみてください。あなたは、凶暴で腹を空かせたライオンの檻に入っていって、「仲良くしよう」と叫べば、喰われずにすむとお思いですか。ほぼ喰われますよね。

 正論が通じるのは、正論が通じるコミュニティにいる者に対してだけです。そのコミュニティにいない者にとっては、正論は正しくありません。第1章でお話したように、「正義」と「悪」は「事実」ではなく、「感情」に過ぎません。立場が変われば、真逆にもなります。

 そして、どんなに「俺は正しいことをしている」と叫ぼうとも、「世の中は力が全て」です。

 力の強い者の気持ち次第で、現実は決まる。「事実」はこれだけです。

 僕は、これからの人生、なるべく純粋に生きていきたいので、本当に、この方達の運動は素晴らしい、美しいと思います。そして、「個人」的には、何年も前から、ただデモを繰り返して、各国に現状を訴えるだけの戦略しか持っていないのならば、正面から闘わずに、逃げて欲しいと思っていました。

 活動家としての「役割」を剥がすと、普通の人間と変わらない、あんなにも生き生きとされている方々が、ただ自分の思想に殉じるということが、とても美しく、そして悲しいと思いました。


出来ることをやる

 と、こんなことは、普通の方も、手を替え言葉を替え、仰っています。
 ただ、文句と感想だけでは世界は変わりません。#FreeAgnesもデモも、あくまで戦術の一つに過ぎません。

 たくさんの方が声を上げるという戦術は、相手を考えて、場所を考えて、中身が伴っていなければ、効果はあまり期待できません。今回の件では、#(ハッシュタグ)を誰に届かせて、どういう戦略を立てたくて拡散しようとしているのでしょう。もちろん、言わないよりは言った方がマシですし、声を上げることも重要です。人それぞれ、自分の出来ることをおこなえば良いと思います。

 ただ僕は、現状に不満があるのなら、不満だと口するだけではなく、変えるための戦略を提言したいです。みんなが#FreeAgnesと拡散出来るように、戦略を提言することが僕の出来ることです。

 そこでまずは、デモシストの戦略についてのお話をさせていただき、それから、世界を変えるための戦略である、第2章「日本の基本戦略」への前書きに繋げさせていただこうと思います。 

 今回も楽しんで、とはさすがに言えませんが、他の方には書けない記事だとは思います。是非お読みください。


デモシストの失敗

 先程は、デモシスト(周庭さんのいた民主主義グループ)の戦略が、なぜ失敗だったのかについてお話しました。次に、どうすれば成功していたのかについてお話します。

 僕が戦略家としてデモシストに入っていたのなら、構成員の多数が中国人なので、中国人という立場を利用していました。

 まず、自分たちに賛同する多数の優秀な人材を共産党内、特に、宣伝系と軍事系の部門に送り込み続けます。彼らとは連絡をとらず、出世して力がつくまでは、共産党員に扮して本音を隠させます。そして、徐々に軍事系の実行部隊に賛同する人員を増やし、中央の機能を一時的にでも麻痺できる力を持ったタイミングで、一気にクーデターを起こすのです。同じ外見なので、中身がわからないというのは強みです。

 政治系のトップである「チャイナ7」に出来るだけ近い位置まで出世する、という戦術も、一応しても良いとは思いますが、これは時間がかかり過ぎますし、政治家に何人か忍び込ませるくらいでは、おそらく中国は民主化しません。香港も独立できないでしょう。
 なぜなら、今の中国政府は、トップが何人か変わったくらいで今の路線から外れることが、もう出来なくなっているからです。


 自分の意見を通したい時、力には力で対抗するしかありません。力がないと、まず話すら聞いてくれることはありません。
 なぜなら、力の強い中国政府が、力の弱いデモシストの意見を聞いたところで、中国政府にとって何の得にもならない、むしろ損をするからです。中国政府から見たら、「うるせーハエだな」くらいの感想しかないからです。

 そして、圧倒的な力がある相手と対峙する時には、力が無いなら正面から立ち向かおうとせずに、背後から一撃で相手を仕留める戦術を使用しなければなりません。
 先程のライオンで例えるのならば、親切なふりをして毒を飲ませ、弱ったところを回復される前に絶命させる、という戦術です。


 これに加えて、アメリカをはじめとした世界各国に対して、今の中国政権が倒れて民主主義になることがどれだけ有益なのかを説く、海外の別部隊も用意しましょう。他国の力も利用できるところは利用するのです。これに関してはデモシストもかなり頑張っていましたが、僕なら、各国に対岸の火事だと思わせないようにするために、さらなる悪い戦略を立てていました。他人は、人ごとだと思っているうちは、動いてくれないからです。そして、他国がその力を有効に利用できて、国際世論から褒められる場所を提示していました。

 さらに、共産党内の高官に裏切り者が何人もいることを匂わせるようにして、総書記の側近達同士で、お互いを疑心暗鬼にさせていきます。
 スパイや暗殺者に狙われているという噂を流すことで、この流れから降りたいと思わせたり、洗脳によって、実際、暗殺する人が出る可能性にかけるのも、戦術の1つとしていいでしょう。


 香港は、中国本土に比べたら力の弱い国です。香港だけでなく、中国ごと変えない限りは、中国の横暴台風はますます強く吹き荒れます。

 この作戦の最大の肝は、中国政府を一撃で崩しさる戦略と、自分たちの政権に変えた時に、どれだけそれが中国人にとって誇り高い国になることが出来るのかというはっきりとしたビジョンを国民全員に示せるのかというところです。

 日本や他の国と同様に、国民たちは日和見です。誰だって目の前の生活中心に生きていますし、自分の命が惜しいからです。その国民たちが、デモシストが一瞬だけ中央政権の軍事力を封じ込めた瞬間に、どれだけ自分たちの味方をしてくれるのかに、勝敗の行方は握られています。


力でしか正義は語れない

 誰かと敵対する時に、戦略で一番大事なところは、いかに相手の力を削って、いかに自分の力を増大させるか。これだけです。力関係を逆転させた瞬間に、自分たちの言葉はみんなに伝わります。
 
 デモを成功させたかったら、力を増大させるために「表」と「裏」を使い分け、周庭さんや黄之鉾さんが表、僕のような戦略家が裏を担当しなければなりませんでした。
 僕は、権力者達のもとで、ずっとこういう裏の戦略を練り続けていたので、裏世界の戦略コンサルタントなのです。(ただし、犯罪は犯しておりません)

 ちなみに、僕のクライアント様たちの側から考えると、利益があるのならデモシストの手伝いはするが、するならデモシストがどのくらいの力とやる気を持っているのかを計算して、成功率をはかり、実際に政権を握った後に、どのくらい自分たちが利権を得られるのかまで戦略を立てます。そして中国政府は、力がいかに大事かということを知っているので、世界中の権力者の方々に利益を約束しまくっています。

 こうして「理想」とは別に、世界のあちこちでは、「力」の奪い合いが起こり続けているのです。

 デモシストは、理想は素晴らしいですが、潔癖すぎました、ゴールに向けた「理想」と「行動」を分けることができませんでした。民主主義の持つ力を過信し過ぎました。つまり、最初からゴールにたどり着く可能性が薄い戦略をとり続けていました。

 戦略が無いまま、人を信じ、思想に殉じたことが敗因です。強いて言えば、自分たちが犠牲になることで世界の感情を動かすという、滅びの美学ですかね。大好きですが、結果は最初から明白で、やはり残酷です。


第2章「日本の基本戦略編」の前書きに変えて

 さて、この中国の強権台風。次はもちろん、日本にも、世界にも、徐々に勢力を増しながら襲いかかってきます。今食い止めないと、弱いものから順番に、この脅威に晒されていきます。というか、次の記事でお話しますが、もう晒されています。

 世の中は、力が全てなのです。
 力が無いと、どんなに正論だろうが、何も聞いてもらえないのです。 

 僕は、第1章で、これから世界はどこに向かっていったら幸せになれるかという「人類のゴール」についてお話しました。
 第2章では、これから日本はどのようにしたら良いのか、という、第1章よりも具体的な戦略をお話させていただきます。

 先述した戦略は、もし僕がデモシストにいて、中国政府に言うことを聞かせたいのなら、という前提で、戦略のお話をさせていただいております。この戦略は大綱であって、もっと細かい戦術をたくさん絡ませれば成功率は上がりますし、戦争と比べれば微々たる犠牲ではありますし、成功すれば中国人であることに誇りを持てるようになるとは思いますが、たくさんの血が流れることは確実です。実行して欲しいという気も毛頭ありません。

 なぜなら、世界が良くなるための、もっと革新的な戦略を持っているからです。


 血が流れる歴史の先には、やはり血が流れる歴史しかありません。

 ただ、幸いなことに、日本は、国としてGDP世界3位。1団体、1新聞社、1都市と比べると、かなりまだ力を持っています。資産運用と同じで、大きな力を持っているほど、より大きな力を生み出すことが可能です。

 また、日本政府を動かすことに関しても、クーデターを起こさなくても現実的に、話し合いによって変えることができる環境も整っています。そして、まともな政治家や官僚も、志と能力を兼ね備えた優秀な人材も、日本にはたくさんいらっしゃいます。

 僕の提案する日本の戦略は、デモシストに提案したかった戦略とは全く違います。中国やアメリカほどではありませんが、多少力があるからこそ実行できる、裏を全く使わずにすむ、むしろ、裏を使うことが逆に戦略に破綻をきたす戦略です。
 もう、裏の戦略を練ることには疲れました。周庭さん達のように正々堂々と生きていきたいものです。


 ただ僕は、表世界では活動していなかったために、あまりにもこの表世界での信頼がありません。信頼がないと力がありませんし、力が無ければ、どんなに素晴らしい戦略を練っても、誰も聞いてはくれません。

 今書いている「新しい世界の1冊目」を全て発表し終えた後で、日本の戦略をみなさんに知ってもらうための戦略も、もちろんあります。物量作戦から札束の殴り合いまで、いくつも策は用意してありますが、まずは、先進的で世界平和を願っているインフルエンサーの方達に協力していただく戦略からとっていこうと思います。

 けれども、僕は本当は、誰か1人でも、僕がまだ知らない方達が、良い戦略だと思ってくれて、助力をしてくれて、大きな声になることを期待しているのです。日本の民度や知識レベルに期待をしているのです。こういう、後に繋がる戦略がある時こそ、拡散が役に立つ時、「#新しい世界」が力を持つ時だということをわかっていただきたいのです。「役割」としては現実主義者ですが、「個人」としては理想主義者なのです。まぁ、これは可能性の極めて低い、ただの希望であり、策でもなんでもないことはわかっております。真夜中のロマンチな戯言だと思って、「新しい世界の一冊目」を全て発表し終えるまでは、儚い夢を見ることをお許しください。


 多分、第2章の1つ目の記事、「世界の現状と未来(2-1)」は、早めにあげられそうです。
 次回も興味深くて楽しいお話になると思いますので、是非お読みください。よろしくお願いします。

 本日もお付き合いくださいまして、誠にありがとうございました。 

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