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アパレルブランドNIGELLAの永冨さんに聞く。ものづくりに対する思いとomusubi不動産のユニフォーム制作の裏側

「omusubi不動産でユニフォームを作りませんか?」。元アパレルデザイナーであるomusubiスタッフ・おおのうさんからの提案で、一年前にユニフォーム制作プロジェクトがはじまりました。誰と一緒にユニフォームを作っていただくか考えたとき、真っ先に浮かんだのがNIGELLAの永冨さんだった、と代表のとのづかさんは言います。

今回は、プロジェクトのメンバーであるおおのうさん、さのさん、とのづかさんとともに、omusubiのユニフォームを作るまでのお話、NIGELLAさんがものづくりで大切にされていることなどを、NIGELLAデザイナーの永冨さんにうかがいました。

きっかけは、お客さんの偶然の一言から


――「omusubi不動産でユニフォームを作ろう」というアイデアは、どのようなきっかけから生まれたのでしょうか?

▲左からおおのうさん、さのさん

おおのうさん:オフィスに人が少ない日に、私と市川さんだけ出勤していたことがあったんですね。途中、お客さんがいらっしゃり、ふたりで接客したのですが、その日の洋服が偶然ペアルックみたいで(笑)。いっちーさんはカーキのジャケットに黒いパンツで、私はカーキのジャケットに黒いスカート。そしたらお客さんに、「omusubiさんってユニフォームも可愛いんだね」と言われたんです。

――ユニフォームに見えたんですね(笑)。

おおのうさん:それで、「あ、違うんです」みたいな(笑)。omusubiは一般的な不動産屋さんよりもカジュアルな服装をしている人が多いので、パッと見てスタッフだとわかるユニフォームが実際にあってもいいかもな、と思いました。また、ちょうどその時期に好きなカフェのインスタを見ていたら、「スタッフジャケットをみんなで作りました」っていう投稿を見かけて、素敵だなと。そんなふうに「うちでもお揃いのユニフォームを着れたらいいな」と考える機会が何度かあって、社内に相談したのがはじまりです。

▲おおのうさんが最初に永冨さんへお渡しした企画書

――お客さんの偶然の一言が、ユニフォーム制作のきっかけになっていたんですね。

とのづかさん:実は2020年の春ごろに、そういうのがあったらいいなとぼんやり思っていて、一度僕から永冨さんへご相談したことがあるんですけど、アパレルの知識がなさすぎて、イメージを全然うまく伝えられず……。数年経って、アパレルデザイナーの経験を持つおおのうさんが改めて提案してくれたことで、実現することができました。

▲代表のとのづかさん

おおのうさん:私が言い出した企画だったので、基本的には私が窓口となっていたのですが、同じくアパレル出身の佐野さんにも相談に乗ってもらって一緒に進めていきました。

永冨さんがomusubi不動産を知ったきっかけ


――永冨さんは、omusubi不動産をどのように知ってくださったのでしょうか。

永冨さん:私が家を探していたときに、母から「合いそうな不動産屋さんあるよ」と教えてくれたのがきっかけだったんです。母は、物件探すのが趣味で(笑)。実際に見てみたら、条件もタイミングも合って、とんとん拍子に契約まで進みました。

――そのときomusubiにはどんな印象を持ちましたか?

永冨さん:いい意味で、不動産屋さん……?っていう(笑)。小さい頃は親の転勤で何度も引っ越しをしていて、なかなか地域の人たちとコミュニケーションを取るっていうことが なかったんですね。でも、松戸へ引っ越してきて、初めて「この地域なら、自分でも人と交流できそうだな」と思えました。住む人がまちとのかかわりを持てるように、omusubiさんが活動してくださっているおかげですね。制作と向き合う時間が長いので、つい引きこもりがちになってしまうんですが、人の手を借りてみようと相談してみたり、外と接点を持つ機会が作れるようになってきて、今は居心地よく暮らせています。

――今のアトリエも、omusubiの管理物件に入居してくださっていますよね。

永冨さん:だんだん自宅が手狭になってきていたんですが、ひとりでやっているブランドなので、「自分がアトリエを持てるだろうか」とか、「資金的にどうだろう」と、しばらく悩んでいたんです。そしたら展示会に来てくれたお客さんのひとりが、自分のお店を持っている方で、「別フロアが空いているよ」と教えてくれたんですよね。自分のお店を持って、前向きに頑張っている彼女たちの姿に勇気づけられたこともあり、勧めてくれた場所にアトリエを構えることを決めました。

暮らしの中で、すっと背筋が伸びるような服を


――普段、永冨さんは「NIGELLA」というブランドを運営されているんですよね。

永冨さん:はい。服のデザインをして、シーズンごとに展示会を開催し、注文いただいた分をすべて自分で作る、完全受注のブランドを運営しています。ときどき、舞台衣装を作ることもあります。

――実際にオーダーされた服一点、一点をご自身で制作されていらっしゃるということですよね……! 一般的には工場に量産をお願いするブランドが多く、すべてご自身で作っているところはめずらしいと思います。

永冨さん:実のところ、NIGELLAを始めたばかりの頃は、一般的なアパレルメーカーさんと同じく、工場さんへ量産をお願いしていたんです。展示会にもバイヤーさんに来ていただいて、 セレクトショップさんへ卸す、ということを最初の2年ぐらいまではやっていました。でも、1人でやっていくにはリスクが大きいですし、お客さんの顔が見える方が自分の性格には合っているな、と感じるようになったんですよね。それで、途中からは個人に向けた受注生産のみを行うスタイルに変えていきました。

――なるほど。一度工場での量産も経験されてみて、今のかたちがより合っているなと気づいたんですね。永冨さんがものづくりで大切にされているのはどんなところですか?

永冨さん:見た目の美しさはもちろんですが、着る人にとって無理がないような服を作りたいな、と思っています。日常的に着られるようお手入れがしやすかったり、 着るときも、着ている間もしんどさを感じない服ですね。また、ただ楽なだけではなく、着るとスッと見えたり、ちょっと背筋が伸びるような要素も取り入れるようにしていて。「日常着としての着やすさ」と「着たときの印象」のバランスも常に意識しています。

omusubi不動産のユニフォームができるまで


――ユニフォームのコンセプトはどのように決めましたか?

おおのうさん:不動産屋なので、テイラードジャケットのようなきちっとしたユニフォームがいいのかなと考えていたんですが、omusubiが取り扱っている物件には古い建物が多く、服が汚れることもあるんです。また、社内には不動産チームだけじゃなく、企画運営のチームやイベント運営をするチームもいるので、むしろかちっとしすぎない方がいいかもしれないな、と。実際の着用シーンを踏まえ、「かしこまりすぎず、ちょっと機能性があるジャケット」がいいなという結論になり、永冨さんにもご要望としてお伝えしました。

永冨さん:アパレルの経験をお持ちだったので、サクサク進みました。生地1つ選ぶにもや、慣れていないと大変だと思うんです。生地の見本って小さい布なので、完成のイメージが湧きにくいですし。事前に企画書を作ってご要望をまとめてくださったこともあり、コンセプトの共有はスムーズでした。

――ユニフォームを作る上で、何か意識されたことはありますか?

▲スタッフの実用性を考えて作られたポケット

永冨さん:以前、他のお店のユニフォームを制作したことがあるのですが、仕事の日だけでなく、普段もみんな着てくれているみたいで。ある意味、ユニフォームっぽさは前面に出していないかも。意識していたのは、ワークウェアとしての機能性の部分ですね。いわゆるワークウェアの立体ポケットにしてしまうと、打ち合わせや仕事着として着るにはワーク感が強く出すぎてしまうので、フラットのポケットにしています。また、メジャーやペンなどをポケットに入れることが多いようなので、しゃがんだりしたときに、物が落ちないように可動域があるデザインにしました。

――実際にスタッフが着るシーンを踏まえてデザインされているんですね。

永冨さん:そのほかにも、後ろにはゴムを入れつつ、前見頃はスッと見えるデザインにして、くだけすぎない印象にしたりもしています。生地は、軽くてシワが気になりにくいコットンナイロン。汚れてもガシガシ洗える素材ですね。

――完成するまでに大変だったことや、想定外だったことはありますか?

おおのうさん:個人的に想定外だったのが、サイズですね。最初は2サイズのつもりでいたんですが、小柄な女性スタッフもいれば、身長の高い男性スタッフもいるので、サイズの幅が思ったよりもありそうだなと、途中で気づいたんです。それで、一度全員に試着してもらい、希望のサイズを聞いて。結果、オーバーサイズで着たいスタッフもいれば、ジャストサイズで着たいスタッフもいることが分かって、それも制作の過程で得た発見でした。

▲最初のサンプルで作っていただいていたのは、完成品よりも濃いベージュでした

さのさん:あと生地の色も、事前に松戸店と下北沢店のスタッフ全員にアンケートをとりました。最初はサンプルを濃いベージュで作っていただいていたんですが、どちらのベージュがいいかスタッフへ多数決をとったら、一票差で薄いベージュのほうに決まって。omusubiのスタッフみんなで意見を出し合って何かをやる機会が、田んぼ以外にないので、普段なかなかない貴重な経験だったなと思います。

もっとシンプルに。NIGELLAさんのこれから


――永冨さんが今後やってみたいことはありますか?

永冨さん:普段つくらないものを作る機会があることは、すごくいいなと思っていて。 それがゆくゆくはブランドにも返ってくるので、ありがたいです。一方で、これからの仕事はもう少しシンプルにしていきたいな、とも考えています。表に出ていない部分で、いろいろと仕事が増えてきてしまっているので、今後はなるべくブランドに注力していきたいですね。

――NIGELLAさんの服を待っている方は、きっとたくさんいらっしゃいますもんね。次の展示会はいつごろ開催される予定ですか?

永冨さん:予約制です。SNSにて詳細をお知らせしています。

松戸展
日時6/17(sat)〜18(sun)
12:00〜18:00
場所 ym.

本郷展
日時 6/24(sun)-25(sun)
12:00〜18:00
場所 珈琲FARO

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ご取材後、できたてほやほやのユニフォームをお受け取り。みんなの反応に想像を膨らませながら、松戸事務所へ戻りました。

後日談
松戸事務所、下北事務所のスタッフへそれぞれ受け渡しが完了。取材翌日のomusuBEERに、早速みんなでユニフォームを着て記念撮影。それぞれの気に入ったサイズで着こなしている様子が素敵でした。


プロフィール
NIGELLA
年1〜2回の展示会にて受注生産で製作を行なっているブランドです。
制作に時間がかかりますが一点一点丁寧にお作りしています。
https://nigellaonline.stores.jp/


取材・撮影=ひらいめぐみ

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