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当事者から見た国際バカロレア

近年ようやく認知されるようになってきた「国際バカロレア教育」。
「これからの時代を担う人材を育成する素晴らしい教育だ!!」と言われていますが、どこがどういう風に素晴らしいのか。また、同様な点が課題なのか。当事者ならではの視点で国際バカロレア(IBDP)の長所と短所について改めて考えていきたいと思います。

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現在は19歳の国内で大学生をしています。「不合格体験記 ~国際バカロレア生による国内大学入試~」という記事(日記)に私自身の国内大学入試体験を綴っています。(個人的な経験ではありますが、IB生の国内入試の実態が少し分かるのではないかと思うのでぜひ)

国際バカロレアとは。
端的にいうと、国際バカロレア=パスポート

日本の高校卒業資格のみであると難しい海外進学でも、国際バカロレアの学位を持っているとスムーズに海外大学に入学できる。海外ではIBDPがかなり認められている。(国内大学では散々な結果だった私でも、国際バカロレアのスコアを提示するとクイーンズランド大学をはじめかなりの名門大からいくつかオファーを頂いた)実体験、そして同じくIBDPを修了しクラスメートが海外の名門に進学している現状からも、海外進学を目指す場合、国際バカロレアはかなりのメリットだと言える。

海外大学出願は、各大学によって異なるが「国際バカロレアのスコア」「語学力証明書(IELTSやTOEFL」「高校の成績証明書」場合によっては「志望理由書」と「面接」で合否が判断されることが多い。(エストニア・オーストラリアの3大学しか受けていないので確実とは言えない)

反対に国内大学に進学する場合はどうだろうか。
私立大学の場合は、海外大学と同じような方法で合否が判断される。上智大学、国際基督教大学などIBに理解のある大学も数校ある。
国立大学の場合は、国際バカロレア入試を設けている大学は少なく、国際総合入試・特色入試などを通して入試に挑むことになる。しかし、海外大学のようにIBDPのスコア提示だけでは合格はしない。IBDPはあくまでも資格の一つとしてしか見られていない。他にも武器が必須だ。(トビタテ入学Japanを通した海外経験や全日模擬国連の出場、部活動の参加などの活動をした)IBDP45点中40前後でようやく戦う土俵にたつ。ちなみにオックスフォード大学は39、ハーバード大学は38が合格基準だ。(なのにと言っては失礼だが、世界ランキングを遥かに下回る国内大学がそれ以上のスコア出願条件として求めているのは少し滑稽だ笑 京都大学は出願条件42 誰が取れるんだろう。。。)国内大学、特に国公立大学は、国際バカロレアに対してまだかなり閉鎖的である。(面接で国際バカロレアってなんですか?と某国公立大学の面接でに尋ねられたことからも理解されているとは言い難い)

何が言いたいかというと、国内大学進学とIBDPはあまり直結しないということだ。よく、IBのディプロマが取れたら終わりでしょ?と言われるがそうではない。国内の国公立志望で、一般入試で戦うだけの知能があるのならIBDPは正直お勧めしない。(IBDPの学習と一般入試に向けた勉強の両立は、かなりの超人出ない限り不可能だ。そもそも学習内容が全然違う。)一般入試の方が簡単とは言わないが、確実な方法だろう。しかし、私のような一般では戦えないだろう人間にも、有名国公立へのチャンスを与えてくれるのがIBの良さでもある。


今まで、大学入試、実績主義的なことばかりについて述べてきたが、ゴールを大学進学においてしまうと、IBの良さが失われてしまうように感じる。結果、客観的には失敗に終わってしまった私でも、IBDPでの経験は本当に貴重で自分を成長させてくれたと今でも感じている。



IBDPの学習は、コア科目グループ1〜6、課題論文(日本語8000字/英語4000ワード) そして知の理論(TOK)と課外活動のCASで構成されている。


本来は、個人の興味に合わせ、自分自身でカリキュラムを作り学習することができる。私の場合は、1期生ということもあり科目は全員統一されており、以下を履修した。

グループ1 日本語 A (HL)
グループ2 英語 A (HL)
グループ3 世界史 (HL)
グループ4 生物 (SL)
グループ5 数学 (SL)
グループ6 視覚芸術 (SL)
※グループ1と2の言語は、A(第一言語者向け)とB(第二言語者向け)に分かれている。HLはハイアーレベル、SLはスタンダードレベルの略だ。HLは最低3つ履修する必要がある。グループ1〜5はエッセイ形式や口頭試問の最終試験があった。

国際バカロレアは「英語特化コース」と思われる傾向にある。しかし、2年間の学びを通して決してそうではないと断言する。私が履修した国際バカロレアは日本語ディプロマであるため、English Bは英語で履修し、Mathは英語のテキストを用いて日本語で学び、その他4科目は全て日本語で学ぶ。

授業では、教師が一方的に知識を与えるのではなく、生徒9人それぞれが主体となって意見を持ち寄せ、ディスカッションやプレゼンテーションを中心に展開される。これまでの受動的に知識が与えられる授業形態ではなく、自ら問いを見つけ分析し解析案を探求しなくてはならない。そのため、ディスカッション型の授業では、個々人の予習がその授業での学びの深化に多大な影響を与える。各授業において予習が必要不可欠であったため、より深く理解しようとする姿勢が身についた。ディスカッションを通して、同等の歴史的資料や事象、また文学においても考え方や価値観は異なることを何度も実感した。ディスカッションを通して、物事を多角的かつ論理的に物事を分析し、それを効果的に他者に伝えることができる者へと自分自身を成長させることができた。

視覚芸術が一番自分自身を成長させてくれたように感じる。視覚芸術では作家研究や一つのテーマを決めて複数の作品を制作し、制作過程やコンセプト・インスピレーションなどをまとめたポートフォリオと展示会の風景を提出する。当初、私は見ている人が美しいと感じ驚くような芸術作品を制作しなくてはいけないという概念に囚われすぎ、自分自身の理想に実際の技術力が沿わず、何度も挫折した。しかし、私は自分自身の内面を作品制作のテーマとし強いメッセージ性を持った現代アートで自分自身のありのままの姿を表現したような作品を制作するようになりました。今まで気づかなかった美術は私にとって副教科に過ぎなかったが、その重要性を感じることができた。

また、IBDPではIA(Internal Assessment)というそれぞれのコア科目の研究論文の作成に加えて一科目とテーマを自分自身で考え課題論文を制作する。私の場合 グループ 2 English B カテゴリー 3 の文学を選択しHow does Roald Dahl use the power of the underdog in order to enable his main characters to overcome seemingly impossible difficulties? というリサーチクエスチョンをたて、心理学の観点から文学を分析した。いわゆる、大学でいう卒論のようなものを書くということだ。

そして、知の理論(TOK)がある。常識は本当に常識か、知っているとはどういうことかなど「知識を得るための方法」(WOK) 「私たちが持つ知識が基づく分野」(AOK)を用いて批判的に思考する教科だ。最終エッセイで私は「「信頼性のある知識が、確実性を欠くことはある。」2 つの「知識の領域」に言及しながら、この主張を探究しなさい。」という問いについて考えた。

最後にCASがある。それぞれの頭文字、Creativity(創造), Activity(活動), Servicy(奉仕)与えられたものではなく、自らクリエイティブに考え、社会のためにニーズに合わせ行動する。CASがIBDPを取得する上で必須である点から、IBはただ勉強ができる人材を育成するのではないことが分かる。ボランティアをはじめとするCAS活動を個人と団体で最低でも週3時間程度行う必要がある。私の場合、留学先やそろばん塾でそろばんを教えるボランティア、幼稚園でのボランティア、バトミントンなどの活動をした。

これらのことを同時並行でこなすにあたって、タイムマネージメントと計画性がカギを握る。また、IBDPは個人戦ではなく団体戦だと強く感じる。その点において、協調性を高めることができる。これからの人生において、間違いなく大切なスキルを養うことができたと感じている。

暗記型、探究型両方の教育を受けた私は、双方の長所と短所を知った。暗記型教育では同一の課題を精度よくこなすことが要求されるのに対して、探究型教育は問いを立てる力、批判と分析など社会で生きていく知恵や重要なスキルに結びつく訓練がなされる。また、暗記型教育は知識の量など数値化されるもので評価されるが、探究型教育は自身の学びの深化や到達度で評価される。しかし、探求型教育で知識量が不要なのではない。むしろ探究型教育でリサーチや考察を深めようとするとより多くの知識や教養が求められる。IBDPでは、知識を聞かれるのではなく、知識をどういう風に表現するかが問われているように感じた。「暗記型教育をやめて、探究型教育を普及させるべきだ!!」という声が増えているように感じるが、この教育が絶対と決めつける必要もない。ただ、教育制度の選択肢が増えたら良いと感じる。IBが導入されている学校は、インターナショナルスクールが多く、一条校は少ない。IBのEnglish DPはかなりの英語力が求められること、また費用面からハードルが高い。文部科学省が掲げるIB導入の推進にはこれらの課題があるだろう。

自由で夢のある教育制度としてとらえられているIBだが、実際はかなり厳しい教育プログラムだ。(絶対にあの頃に戻りたくない)しかし、自分自身を勉強面だけなく、IBが掲げる10の学習者像にもあるように人間性など人材育成型のプログラムだと思う。



結論、私のようにIBの学習スタイルに惚れた人はぜひIBDPに挑戦してほしい。メリット、海外への挑戦権・スキルを得られる。デメリット、国内の大学、特に国公立の入試は賭けのようになってしまう。

ここまで読んでくださった方ありがとうございました。質問等がございましたらぜひコメントの方で待っています!!

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