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◆仕事が大好きな私が、妊娠報告をしたくなかった話


準備万端で出産にむけて歩みだしたつもりだったのに、オフィスでも妊婦であることを極力さとられないように、服装や行動に気を使っていた(最低限の範囲にだけ妊娠報告をとどめていた理由はまた別の記事で書けたらと)

この、「別の記事で」という部分を書いてみた。


念願の妊娠

結婚3年目のわたしたちにとって、妊娠は念願だった。ふたりともすごく子どもがすき!というわけではなかったが、子どもがいる家族の形に憧れていて、「いつか」子どもがほしい、そう思っていた。

「妊娠してますね」病院でそう言われた瞬間、嬉しさと気恥ずかしさ、そして安堵の気持ちがこみ上げてきた。子宮の中の黒い部分にちょこんと白い粒があって、それが我が子なのだと思うと、帰り道の風景がいつもより明るく見えた。

しかし家で落ち着いた後、「親に」「職場に」伝えなければと考えると心が曇った。親とも職場とも関係が悪いわけではなく、むしろ良好。伝えれば我ごとのように喜んでくれる様が目に浮かぶほど。

そう、それが気が重い理由だった。

妄想と現実の狭間で

妊活中は指紋がなくなるんじゃないか、ってくらい「妊娠」について検索した。どうすればうまくいくのか?うまくいくために何をしなければならないか?
できることはすぐに取り入れた。
さらに自分にとってより有益な情報を得るためにどんどん検索を進めていくと、自然と目に入ってくるのが「妊娠初期 注意すること」「初期スクリーニング したほうがいい」といったもの。

そこではじめて、「流産のリスク」「染色体異常」といったことの知識を得た。もちろん他人事には思えず、「自分がどれくらいの確率で該当するのか」をさらにどんどん検索していった。その脱線におわりはなかった。

だから、「職場に報告したあとに流産したら?」「もしなんらかの異常があるとわかったら親にどれだけの心配をさせてしまうか」といった妄想は止まることを知らなかった。あぁいう妄想って布団に入るとすごいスピードで加速していくもので、悲劇の主人公になった自分を思い浮かべては何度も泣いた。

しかし、どんどんわたしは妊婦の体になっていく。報告しないという選択肢はもちろんなかった。

いざ報告

10週になって動き始めた。

離れて暮らす両親には電話をした。
「なんでもっと早く言わないのよ」と怒られたが、その声は言葉とは裏腹に弾んでいて、わたしも嬉しくなった。

問題は職場だった。上長へ声をかけて、ミーティングルームへ呼び出した。

わたしが所属する人事部は小さな部署だったことと、かつ仕事の割り振りなどをわたしの裁量でさせてもらっていたので、部内への共有や引継ぎのタイミングや方法は任せてもらえた。
一方で、人事部といっても人事労務だけでなく採用や庶務の領域も兼ねているため、いくつか存在する拠点の部長たちと直接仕事をしており、彼らにも業務上知らせないわけにはいかない。

直属の上司はわたしの報告が終わると「部長たちには話していいかな」とコンセンサスをとってくれた。もちろんです、と答えた。

それから1週間後。

「体調大丈夫ですか?」と当分会ってなかった同僚から声をかけられた。「へ?」と気の抜けた返事をしてしまったが「大丈夫ですよ☺️」としっかり愛想笑いで返せた。
これはまだよくて、時には露骨に「女の子なの?男の子?」と聞かれることも。そして極め付けは、部内で引き継ぎスケジュールを合わせて報告した際に、「実は〇〇さん(直接話すことのない他拠点の人)から『××ちゃん(わたしのこと)っていつまでなの?』と聞かれて、そのときからそういうことなのかなと思ってました」とメンバーに言われる始末。。。

個人情報保護法は廃止になったんですかねw

今ならそう笑い返せるが、当時のわたしはどんな顔をしていただろうか。目の前のメンバーは苦笑いをしていた。

「万が一」とは思えなかった


まぁ「めでたいこと」なので誰も悪気はないことは明白。

ただ、報告していないはずの人から声をかけられる、その度に「ちゃんと産めなかったらこの人にも報告しなきゃいけないのかな」とか「そのときにこの人にも悲しい思いさせちゃうのかな」とか、ネガティブな考えが渦巻いた。考えすぎじゃない?と身内には言われた。

「流産」「染色体異常」「難産」ーー

そりゃ、すでに健康で生まれてきた子を持つ方からすると「万が一」なんだろうけど、これから迎える私には「そうかもしれない」出来事のひとつにしか見えなかった。

今我が子をみても、やはり健康に生まれてきてくれたことは奇跡だと思っている。産み落とすその瞬間までわたしは、宿った命への喜びと未知の世界への不安、この狭間でどっちつかず、ウロウロと彷徨ってる、そんな感覚だった。

これから妊婦と出会うあなたへ

「妊娠報告」をしたくなかった。
そんなわたしのことを周囲の人たちは、変にクールで可愛げのない人間だと思っただろう。ただ、我ごとのように喜んでくれる家族や同僚を悲しませたくない、神経質な小心者だったのだ。

同じように考える妊婦の方はどれほどいるのだろうか。多いのか少ないのか、わたしには想像できないが、妊婦がその報告をためらう場面に直面したら、ぜひともひと呼吸おいてしっかりと言葉を選んであげて欲しい。そう願う。

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P.S. 授乳後寝落ちした我が子がなにかに似てるなぁ〜と検索しまくった結果、たどり着きました。完全にポニョ。

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