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経営危機に陥ったイギリス老舗大型百貨店が展開する、VRやAR技術を活用した再建施策とは。|John Lewis

【一言で言うと】AR&VR技術や店頭受け取りを武器に、2018年の経営危機から再起を図る老舗イギリス大型百貨店

基本情報

主に展開する国:イギリス
設立:1864年
店舗数:50店舗(2019年10月時点)
ジャンル:百貨店
売上高:5460億円

なにが特徴か

John Lewis(ジョン・ルイス)は150年以上も続く老舗百貨店であり、優れたアフターサービスを通じ長年イギリスでの支持を集めてきた。Never Knowingly undersold(どこよりも安く)というスローガンを掲げており、消費者に商品を必要以上に高く売りつけることはせず、もし他社よりも高い場合には値引きに応じる姿勢を打ち出している点が長年支持を集めてきた背景だ。公式ウェブサイトにも記載されており、もしイギリス国内において、オンライン&オフラインで同社よりも売っている価格が安い商品があれば、その商品の値下げに応じると述べている。しかしながら、2018年には、Never knowingly undersoldによるライバルとの値下げ競争により、99%の減益を記録し経営危機に陥った。John Lewisは、同社が提供するサービスVisualize Your Space、Click and Collect、Virtual lipstickなどを武器にOMO戦略に力を入れ販売促進を試みる。

1. 自分の部屋を仮想空間上で実現

Visualise Your Spaceは、John Lewisの店員によるサポートを受けながら、顧客のリビングルームやベッドルームを模した部屋をiPadのアプリ内に作成した後、購入候補の家具を画面上で配置し、その部屋をVR空間上で確認するサービスである。顧客はアプリを介して、追加したい部屋の寸法、ドア、窓をなど配置し、同社の商品を配置しながらインテリアのアイデアを確認する。これは、Alibabaが出資するHome Timesとは違い、事前に自宅リビングの写真を撮って家具を配置できない。それゆえ、このサービスで自分のリビングルームを完全に仮想上で再現する事は難しいが、家具の配置後に顧客はVRヘッドギアを装着し作成した部 屋を仮想空間上で体験する事が出来る。
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2Dでリビングルームを店員と作成する。(Photo by John Lewis

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作成した空間を3D化し、VRギアを活用して部屋の雰囲気を確かめることができる。(Photo by John Lewis)

2. イギリスではおなじみの店頭受け取り

Click and Collectは文字通り、オンラインで注文した商品を、宅配ではなく指定した店舗で受け取るシステムである。EC大国(EC売り上げ規模 世界2位)のイギリスでは特に普及しているシステムである。同社公式サイトによれば、オンラインで注文した顧客の57%がClick & Collectを活用し店舗で商品を受け取っている。30ユーロ以上の買い物だと手数料無料で受け取る事が出来、最大7日間まで商品を預かってくれる。受け取り店舗は、John Lewis本店舗やWaitroseなどの提携店舗で受け取り可能だ。もし近くにJohn Lewisの店舗が無い場合であっても、Click and Collectと提携している個人経営の店舗(コンビニなど)が近くにあれば、2.5~3.5ユーロほどで届けて貰える。

3. 何種類ものの口紅をスマホのカメラで試す

John Lewisは、同社のアプリ(John Lewis & Partners)にAR技術を搭載したVirtual lipstickを発表した。同アプリは化粧をモバイルアプリ上で試すものだが、PerfectのアプリYouCamとは違い、バーチャルでの化粧は口紅のみ利用可能。主に、MAC, Bobbi Brown, Charlotte Tilbury, YSL, BECCA、LANCÔMEなどのブランドについて、300種類以上ものの商品を試すことができる。ちなみにVirtual lipstickは、iPhone X以降を所有している顧客のみでしか利用できないことは注意されたい。

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色をタッチする事で、色合いを変える事が出来る。(Photo by John Lewis

Banner photo by Khadeeja Yasser(Unsplash)

関連ニュース

Waitrose and John Lewis to stop putting plastic toys in Christmas crackers
https://www.bbc.com/news/uk-50122005

参考



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