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店舗はショールームに特化。アプリ経由での販売促進によって効率的な小売ビジネスに取り組む中国デザイン家具・インテリア雑貨ストア|造作

【一言で言うと】店舗は商品のショールームと位置づけ、アプリ経由での決済・購入を促すことで在庫を極少化した店舗運営を行う、中国発のデザイン家具・インテリア雑貨ストア

基本情報

展開する国:中国
設立:2014年
店舗数:15店舗
ジャンル:家具・インテリア
売上高:―

なにが特徴か

「造作」は中国で増えつつある新興ミドルクラスの若者を対象に、著名なデザイナーが設計した家具・インテリアを売って急成長をしている。サイズの大きい家具等を中心にアプリ経由での決済・購買を促すことで、在庫を減らした店舗運営が成功の秘密だ。

1. 急成長する中国の家具・インテリア業界

中国では今、家具やインテリアの需要がうなぎのぼりである。急速な経済発展に伴い、新興ミドルクラスの若者が増えているためだ。裕福になった彼らは良い家、良い家具を求める傾向にあると言える。

業界関係者によれば、中国の現状は西欧諸国の1950年代から1960年代、日本でいえば1980年代から1990年代、ちょうど西欧ではIKEA、日本では無印良品が出てきた時代に似ているという。

2018年時点で中国の家具・インテリア業界の市場規模は約75兆円と推定され、家具等を扱う業者は5000社ほど存在している。そんな中で最近注目を浴びているのが、北京に本社があるスタートアップの「造作」。同社は2014年、米国スタンフォード大学のMBAを持つ才女・舒為(Shu Wei、シュー・ウェイ)がオンライン、デザイン、製造業の三つの業界から人材を集めて創業した。

「造作」はオンラインでの販売からスタート。しかし「やっぱり家具は見て買いたい」という声に押されて、2016年からは実店舗をオープンした。店舗数は次第に増えて現在では北京、上海ほか8都市に15店舗を構えるに至っている。

2.「全世界があなたのために家具をデザイン」

「造作」のキャッチコピーは「全世界があなたのために家具をデザインする」。その名に違わず、イタリア、ドイツ、スウェーデン、スペインなど国内外の27か国100名を超える著名デザイナーと契約をしている。デザイナーのリストの中に日本人を探すと、東京に建築設計事務所を持つ芦沢啓治氏や、中国で活躍している青山周平氏の名前が見つかる。

「造作」のアートディレクターはイタリア人のルカ・ニケット氏。中国の消費者に、中国はもうコピーキャットで満足している時代ではないと伝えることに意義がある。ニケットは舒為から話を持ちかけられた際、そう考えてアートディレクター就任を快諾したという。

かつて多くの模造品が中国で流通していたことも意識して、「造作」の扱う商品にはすべてデザイナーのサインと「造作」の承認印が押されている。実際に商品を製造するのは、中国国内に散らばっている100以上の工場である。品質管理はかなり綿密で厳しいようで、「造作」のチームが、モダンなデザインの商品を一般の人が購入できる価格で提供するために尽力しているのが分かる。

3.店舗はショールーム。アプリ経由での決済・購買を促す

「造作」の実店舗を訪れた人は、並べられた商品の数が思いのほか少ないことに驚く。実店舗はあくまでショールームとしての、そしてブランド発信地としての位置づけなのだ。

店舗に配置されたスタッフの人数もかなり少ない印象だ。そのかわり、商品のタグにはQRコードが印刷されていて、それをスキャンすればスマホで商品情報の詳細から利用方法、そしてデザイナーへのインタビューなどを見ることができる。特段スタッフとやり取りをする必要がないように工夫がされている。

壁にはニケットがデザインした原色の椅子が何列も掛けられているが、これはデザイナーの方で家具を配置してしまうのではなく、見る人に自由にイメージをふくらましてもらうための工夫なのだという。いずれにせよ、従来の家具・インテリア業界の常識から自由な発想をしていることがうかがえる。

「造作」はネット上でも興味深い試みを行っている。商品を製造する前に、顧客に購入したいデザイン等の詳細について投票してもらうのだ。投票の結果によって製造するデザインの種類を絞ることで、在庫を減らしコストカットにつながるという。アメリカではThredless.comというサイトがTシャツのデザインを投票にかけ、得票数が一番多かったものを商品化しているが、この発想を家具・インテリアに応用した形だ。

業界関係者の中には、オンラインメインで家具を売る手法が長続きするかどうかに懐疑的な向きもある。しかしもはや「造作」の動向を無視しては、中国の家具・インテリア業界を語れなくなりつつあるのは確かなようだ。

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「造作」の経営陣/Photo by造作

Banner Photo by  Patrick Perkins (Unsplash)

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参考


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