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OMOの実装を考える #3 : 国内OMO事業者カオスマップ - BtoC編 -

OMO事業者マップについて初回はOMO事業者マップのうち、インフラ・ソフトウェア・テクノロジー領域、前回はコンサルティング・システム導入領域についてご紹介しました。

最後の今回はOMOの具体的な実装現場となるBtoC領域についてです。

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テクノロジー、時事性で注目された国内の実証実験

OMO事業者マップでは、実際の店舗をもつ有店舗事業者と、その事業者へ顧客接点を創出するプラットフォーマー、そしてメーカー自身がOMO型の店舗をもつ流れを記載しています。

2019年はOMO Timesでも取り上げたローソン氷取沢町の無人店舗実証実験や、JR赤羽駅での無人決済店舗など、無人で運用する技術的側面(センサー/AI)と社会的側面(人材不足の解消など)で注目される傾向がありました。

また、セブン&アイグループのComfort Market(中延)やSUNTORYのTOUCH-AND-GO COFFEE(日本橋)など、あくまでその店舗だけの実験、ということで展開されている事例は存在します。

そういった大手の実証実験が、そこまで数や面の戦略として出てこないなか、例えばクラスメソッドのDevelopers.IO CAFÉKITASANDO COFFEEなど、スタートアップによるOMOの挑戦によって、大手が大規模な投資をしなくても、日本の生活者のライフスタイルにあった実装例が出てくるかもしれません。KITASANDO COFFEEを運営する株式会社カンカク創業者で元メルペイの松本龍祐氏が以下のように語っています。

「『カフェがやりたい』というか、個人的には『ニューリテールをやりたい』という思いが強かった。そして、日本でニューリテールや流通系のスタートアップがあまり上手くいかない理由の大半は『コンビニがあるから』だと考えていました。毎日のように行くコンビニで、大抵のものは手に入る。でも、顧客体験の質は高くない。その質に取り組めたら面白いんじゃないか、と。」 - 元メルペイ松本龍祐が北参道でカフェを始める理由 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

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KITASANDO COFFEE (by KITASANDO COFFEE)

OMOはより肉体的な体験が重要であるがゆえに、地域単位など局所的にチューンナップされた事例が今後様々な形で出てくることが期待されます。

商業施設からはじまる実装

一方で、商業施設によるOMOの動きが顕著になっています。昨年末にリニューアルオープンした渋谷パルコは1Fにb8ta型の新製品トライアル店舗BOOSTER STUDIO by CAMPFIREの展開、地下には体験を重視した飲食店フロア「カオスキッチン」、チームラボによる施設アプリと連動したタッチパネルディスプレイなど、施設全体がOMOの実証実験場になっています。

また、マルイは2020年3月期第2四半期決算説明において店舗戦略について「モノを売る店」から「体験を提供する店」への進化(体験型店舗を5年後には全体の60%へ)を表明しています。

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マルイ2020年3月期第2四半期決算説明資料より

さらにマルイはD2Cブランドへの積極的な投資をおこなっており、D2Cブランドと協業をおこなっていくための新会社 D2C&Co.(ディーツーシーアンドカンパニー)を2020年1月31日に設立しました。

百貨店含む商業施設は長らくEC化の波に晒されながら試行錯誤してきたところで、OMOの潮流により、むしろ店舗をもつことの価値をレバレッジする機会を狙っていると言えます。

逆に、今まで通り店舗とECを分けて事業をおこなったり、「店舗で売るために」テクノロジーを活用する、といった発想の商業施設や店舗はより淘汰されていくでしょう。

デバイスやテクノロジーによる店舗体験のインフレと多様化

最後に、店舗体験について、Nike house of innovationの000店(NYC)から1年半ほどが経過し、テクノロジーデバイスを活用したギミックにもやはり早晩消費者の慣れが訪れます。

体験は必ずしもテクノロジーだけで補完されず、例えばGentle Monster(日本未上陸)やSTYLENANDAなど、韓国勢が得意とするようなターゲットオーディエンスに特化した店頭のデコレーション、VMDの重要性がより高まってくると考えられます。

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Gentle Monster上海店内

その効果を定量的に測るためのテクノロジーの活用は進むでしょうが、その効果がわからないと投資判断ができない有店舗企業と、上述したマルイなど、経営判断として体験型店舗へ振ることをトップダウンで決定してから施策を実行していく企業の明暗が分かれていくことが先5年程度で予想されます。


以上、3回にわたって国内事業者マップから2019年までの傾向と今後の展開について解説しました。各領域が噛み合いつつ、中国や米国の単純なコピーでない実装例が2020年から本格的に出てくることが期待されます。


シリーズ「OMOの実装」過去ログ:
OMOの実装を考える vol.1 : 国内OMO事業者カオスマップ - インフラ・ソフトウェア・テクノロジー編 -
OMOの実装を考える vol.2 : 国内OMO事業者カオスマップ - コンサルティング・ソリューションプロバイダー編 -


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