星よ

 もうこの頃は、すっかり冬の様相を呈している。暖房を入れてないと寒くて眠れないくらいだ。日のあたる時間帯ならまだしも、僕が主に生活を営む夜の間は、少なくとも太陽の恩恵に預かることはできない。そういう時間は大抵の場合、とても寒いか少し寒い。それにここ最近は寒暖差が体調を好き放題していたから、僕は引っ張り出してきた毛布の中に包まり多くの時間をそこでうごうごと過ごした。ザムザが虫になったときもこんな感じだったのかもしれない。

 なので、僕がこれからここに書く話なんて、本当はなに一つとして事実が含まれていないのかもしれない。100%の嘘で、口から出任せかもしれない。だって最近の僕は、あまりにも、ベッドの中に籠もりすぎているから。けれど僕は口に戸が立てられないタイプで、言葉を置いておくことが好きなタイプだから、どうか許して欲しい。

なにか、冬になると思い出すことってあるかな。僕はなんとなく、おおいぬ座を思い出す。正確には、それが持つシリウスのことを。シリウスは青く、明るく、美しい星だ。この部分を書くにあたって調べたところ、僕たちが見る空の中で太陽の次に明るい恒星らしい。すごい、どうりで僕もその存在を知っているわけだ。(僕は残念ながら、星や花や草木や鳥の名前なんかにすごく疎い。ポケモンも半分くらいしか覚えていない)

 なにはともあれ、僕はその星が好きだった。理由は自分でもよくわからない。だけど、好きなのだ。青く白く輝くその星は、冬の夜空の中でも一等冷たそうに見える。本当はとても熱いはずだけど、それを見上げるときに吸い込む冷気が、冷たいのだと錯覚させる。いや、もしかすると、その星が地球上の熱を全部吸い取っているのかもしれない。そう思ってしまうくらい、シリウスは、冬の空を青く冷たく切り取っていた。

 よだかが空に昇るために訪ねた星の一つも、シリウスだっただろう。しかしそのときの彼は、よだかに辛くあたっていたのを覚えている。(彼だけでなく、すべての星がよだかの訴えを退けていたと記憶している)小さい頃の僕は、そのことを悲しく思ったものだ。誰でもいいので、よだかに優しくして欲しかった。今も同じように考えるのかは分からない。優しさは時々見にくかったり変な形をしているから気付けないということを理解しているし、それが特効薬ではないことも知っているからだ。だけど僕は、最後には宙に昇れたよだかのことを嬉しく思う。

 そういえば、よだかも青く美しい星だった。どうやら僕は、昔からそういうものに弱いらしい。いや、弱いという言葉には語弊がある。わざわざそんな言い回しを使うこともない。僕はただ、青く白く美しいそれが好きなのだ。それが光り輝くのが、びっくりするほど愛おしいのだ。今日の話はきっと、それだけが伝えたかったのだ。

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