妻の想像力という魔法

妻によく「これどう思う?」と質問される。制作途中に作品の方向性が間違っていないかを確認したいのだと思う。しかし、羊毛フェルトに関してはズブのど素人で、美術もどちらかといえば苦手科目だったぼくには、分からない場合が多い。

そんな時は、「どんどん出来てきているね!」とか「いい感じになってるねー!」とか、当たり障りのない返答になってしまうことも多い。妻としてはもう少し具体的なアドバイスが欲しいのだと思うが、どうしてもぼくには造形に関する想像力が欠如している様だ。時に「少し大き過ぎない?」とか言える時もあるのだが、それでもそのアドバイスに自信はない。悪気はないのだが、本当に分からないのだ。

特定のクリエイティブに精通した者のみが得られる想像力

そういったものが存在するのだと思う。例えばぼくは、いわゆる「音楽」のプロなので、音に関しての想像力はあると思う。例えば、何も味付けのされていない、弾き語りのデモテープを聴いた時に、これをどういう風にアレンジして、どの様に録音し、どんな感じにミックスすれば、より素晴らしい作品になるか、という事が大体想像がつく。しかし、こと「羊毛フェルト」となると、その想像力は全くといっていいほど発揮されない。

妻の羊毛フェルトにおける想像力は凄まじい

本当にそう思う。見た事がない方もいらっしゃるかと思うが、羊毛フェルトは、元々本当にただの「ワタ」なのだ。お布団の中に入っているものとか、部屋の隅で丸まっているホコリの様な(そんな事を言うと妻に怒られそうだが)ものなのだ。それを小さな突起のついた針を刺していくだけで、様々なキャラクターや動物、時に絵画の様なものまで、ありとあらゆる芸術に昇華していく。

魔法使いみたいだ・・・

僕からすると正にそんな感じだ。途中までは本当によく分からないじゃがいもの様なものが、「出来た!」という言葉と共に「ドラ○もん」やら、犬やら猫やらに変貌を遂げるのだ。そこには妻が長年の経験から会得した「想像力」という魔法が存在しているのだ。それは一朝一夕に得られるものではないと言う事は分かっている。ぼくだって、音楽に関する「想像力」は中一でギターを始めた時から少しづつ育ててきたものだ。

もし出来るなら、妻に出来るだけ適格なアドバイスをしてあげたい

夫としてはどうしてもそう思ってしまう。なので、ぼくもこれから少しづつ、羊毛フェルトという「魔法の秘密」に迫っていきたいと願っている。


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