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週刊 表の雑記帳 第六頁_尖閣諸島に常駐しよう

 今週の目についた報道は、twitter参照。

チャイナの領海侵入が続く

 さて、尖閣諸島周辺におけるチャイナ公船の航海が相も変わらず続いているが、そんな中ついにチャイナ外務省が「日本の漁船が中国の領海内で違法な操業をした」などと言い出した(こちら)。盗人猛々しいとはまさにこういうことを言う。諺辞典で事例として挙げても差し支えないレベルだ。チャイナ公船が尖閣諸島周辺の我が国領海内に侵入したことも勿論初めてではなく、寧ろそれが常態化しつつあるような恐ろしい状況だが、これは単にいつものことと片付けて良い問題では断じてない。

 なぜか。嘘も言い続ければ真実になってしまうからである。認知バイアスやプロスペクト理論の研究で知られ、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンもその著書『ファスト&スロー』にて次のように指摘している。

認知しやすいかどうかの印象に基づいて判断を下していたら、予測可能な、つまり系統的な錯覚は避けられない、ということである。連想記憶マシンをスムーズに動かす要因は、例外なくバイアスを生む。誰かに嘘を信じさせたいときの確実な方法は、何度も繰り返すことである。聞き慣れたことは真実と混同されやすいからだ。独裁者も広告主も、このことをずっと前から知っていた。だが、真実らしく見せかけるのに全部を繰り返す必要がないことを発見したのは心理学者である。「鶏の体温」という表現を繰り返し示された人は、「鶏の体温は四四度である(もっともらしい数字なら何でもよい)」という文章が出てきたときに、正しいと判断しやすい。文章の一部になじんでいるだけで、全体に見覚えがあると感じ、真実だと考えるからだ。

 もう上記の引用部分が全てを説明している。チャイナが、尖閣諸島周辺を自国の領海などと世界に対して表明し続けることで、いつの間にか世界ではそれが真実かのように受け取られるようになってしまうのだ。はっきり言って、尖閣諸島がどこの領土であろうと、世界の多くの人間にとってはあまり関心のないことだ。仮に米国とカナダがアラスカの領有権を争っていたところで、どのくらいの日本人が強い関心を示すだろうか。同じことだ。関心がなければ、嘘であろうと繰り返し目にし耳にしていれば、それを真実と誤解するようになっても全くおかしくない。日本政府及び外務省は、しつこいくらいにチャイナに反論し、しつこいくらいに世界に向けて尖閣諸島は我が国固有の領土であると発信し続けなければならない。最低でも英中韓の言語を用いて発信することが必要だろう。それも外務省のウェブサイトに声明文を載せるだけとかでは明らかに不十分だ。そこは政治力をしっかり発揮し、他国の議会で演説をしたり、他国のメディアのインタビューを積極的に利用したり、あらゆる機会を受け身で待つのではなく自発的に作り出していく水面下の努力が絶対に必要である。

最早無害通航ではない

 チャイナが展開する軍の政治工作として、有名な「三戦」がある。三戦とは、輿論戦・心理戦・法律戦のことであり、我が国の防衛白書にてそれぞれ以下のように説明されている(令和元年版防衛白書第I部第二章第二節)。

①輿論戦:中国の軍事行動に対する大衆及び国際社会の支持を築くとともに、敵が中国の利益に反するとみられる政策を追求することのないよう、国内及び国際世論に影響を及ぼすことを目的とするもの、②心理戦:敵の軍人及びそれを支援する文民に対する抑止・衝撃・士気低下を目的とする心理作戦を通じて、敵が戦闘作戦を遂行する能力を低下させようとするもの、③法律戦:国際法および国内法を利用して、国際的な支持を獲得するとともに、中国の軍事行動に対する予想される反発に対処するもの。

 尖閣諸島についても、まさにこの三戦の論理で挑んできているわけだ。外務省も尖閣諸島についてよくまとまった資料を作成していたり(こちら)、内閣官房の委託で充実した調査が実施されていたりする(こちら)。しかしこうしたものをどのくらい有効に活用できているだろうか。そもそも、最早情報だけで戦うような段階はとっくに過ぎ、日本人が実際に危険に晒されるような状況になっている。何せ、チャイナの船に我が国の漁船が接近、追尾されているのである(こちら)。しかも我が領海内で。国連海洋法条約(正式名称:海洋法に関する国際連合条約)の第三節に領海における無害通航(Innocent passage in the territorial sea)について規定があるが、その第19条(Article 19)に以下のように記載されている(こちら)。

Passage is innocent so long as it is not prejudicial to the peace, good
order or security of the coastal State. Such passage shall take place in
conformity with this Convention and with other rules of international law.

 つまり、沿岸国の平和、秩序、安全を害しない限り、その通航は無害とされるということである。では、日本の漁船が他国の大型船に追い回されている実情は、果たして無害と言えるのだろうか。素直な目で見て、平和、秩序、安全が害されていると考えるのは極めて自然であり、これは最早無害通航と言える範囲を明らかに逸脱しているのではないだろうか。

活発化するチャイナと台湾の活動

 チャイナ公船等による尖閣諸島周辺海域における動向は海上保安庁のウェブサイトにて以下のようにまとめられている(こちら)。

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 チャイナが領海内に侵入してきた最初は2008年12月8日。日本を公式訪問した胡錦濤国家主席と福田康夫総理(いずれも当時)が「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明に署名したおよそ半年後である。素人が考えても、戦略的互恵関係を都合よく解釈されいいように使われているだけではないかと思われる。要するに舐められているのだ。

 そしてグラフはある時を境に大きく異なる様相を見せる。2012年9月11日に我が国が尖閣諸島のうち三島(魚釣島、北小島、南小島の三島、他に久場島、大正島、沖ノ北岩、沖ノ南岩、飛瀬がある)の民法上の所有権を民間人から国に移した直後からかなり活発化しているのが分かる。こんな国のトップを国賓待遇で迎えようなんて、いくら外交儀礼上仕方がないとしても看過されるものではない。しかもこの話は延期されただけでまだなくなったわけではない。野党やメディアがいくら出鱈目に攻撃しても耐えてきた安倍政権だが、この一件だけで倒れてもおかしくないと個人的には考える。

 そしてこの件に関して忘れてはならないのは台湾だ。チャイナがいつも取り上げられるので印象が薄くなってしまいがちだが、台湾も尖閣諸島の領有権を主張している。そして実際に(公船ではなく漁船という違いはあるが)領海への侵入を繰り返している。平成二九年のデータで少し古いが、台湾漁船に対する領海からの退去警告隻数は増加傾向で、平成二九年は96となっている(こちら)。いくら安倍首相と蔡英文総統が良好な関係でも、いくら台湾は親日だといっても、それとこれとは別問題。毅然と対処していく必要がある。

 つい最近こんな報道もあった。「中印兵、国境で殴り合い 負傷者も」日本はチャイナと陸続きで国境を接していないことが幸いしているが、いつ同じことが尖閣周辺で起きてもおかしくない。そもそも我が国は、尖閣諸島について領土問題は存在しないと主張しているのだから、こういうことは起きてはならないのだが、そこは相手がチャイナであるから、油断のならないところである。

米軍が尖閣に軍を置くという報道も

 実は尖閣諸島には、米軍がマルチドメイン作戦の一環として軍を置くことを検討しているという報道もある(こちらこちら)。しかしこれは素直に歓迎すべき話だろうか。米軍は、当然ながら米国の国益のためにここに軍を展開することを検討している。それが一部我が国の国益と重なる部分はあるだろうが、やはり自国の領土及び民は第一義的には自分で守らねばならない。米軍との同盟は非常に重要だが、これ以上我が国に米軍基地を増やして良いのだろうか。そして細かいようだがこうした記事の一つ一つにも我々は声を上げていかなければならない。記事を読むと、Senkakuと並んでDiaoyuと記載されている。これは尖閣諸島のチャイナ側の呼び方だ。我々は、尖閣諸島について領土問題は存在しないと言っている。Diaoyu Islandsという名称が併記される余地はそもそもないはずだ。こうした何気ないところから、三戦は始まっている。

尖閣諸島に常駐しよう

 では、我々は尖閣諸島及び周辺で漁業を営む国民を守るために、何ができるだろうか。私は尖閣諸島に海上保安庁を常駐させるべきだと考えている。令和二年度の海上保安庁関係予算(こちら)を確認すると、予算は年々増えており、尖閣領海警備体制の強化と大規模事案の同時発生に対応できる体制の整備のための要員として40名増員してもいる。しかし果たして十分だろうか。実際にチャイナによる周辺領海への侵入は続いており、減少する気配もない。そうは言っても、住むには恐らく過酷な環境であろうし、任務にも危険が伴う。そこで尖閣諸島に海上保安庁の職員を常駐させるため、駐在員に年間二千万円の手当てを付けるのはどうか。お金で解決というわけではないが、そこはせめて分かりやすく気持ちを示すことも必要だ。これなら給与は実質的に平均給与(単純に人件費1,038億円を定員の14,328人で割った数字)の四倍程度になる。仮に交代制にし、例えば三か月毎の入れ替えで対応するにしても、五百万円の手当てである。

 更に言うと、人を配置するだけでは何もできず、人が継続的に住み維持管理できるように整える必要がある。そこで島の管理に必要な予算として、年間一億七千万円程計上するのはどうだろうか。離島振興の公共事業予算(こちら)から計算するのも雑すぎるとは分かっているが、これを離島振興法の対象の島数255で割るとおよそ一億六千八百万円だ。建て付けとしては、奄美群島や小笠原諸島の振興特別措置法があるのだから、尖閣諸島振興特別措置法があっても良いだろう。仮に20名を常に配置すると、必要な予算は年間五億七千万円。これを一五歳以上の人口およそ一億一千万人超(こちら)で割れば、一人当たりおよそ六円。これをどういう名目でどのように徴収するかは大いに議論の余地があろうが、できないことではないのではないだろうか。無駄なお金をたくさん使っているのに、必要なことにお金を使えないというのでは道理が通らない。国民は馬鹿ではない。

 以前は安倍首相も自由民主党も、尖閣への公務員常駐を選択肢に入れていたが、それもいつの間にやら有耶無耶になっている(少し古いがこちら)。理由は明言されていないが、まあチャイナを刺激するのは得策ではないというようないつものお決まりの文句だろう。しかしそのような曖昧な態度は自国を守ることには繋がらず、国際社会からも歓迎されず、何よりもチャイナがそれを慮って便宜を図るようなことはまずない。つまり何も良いことがないということをいい加減認識するべきだ。もう猶予はない。早く決断を願いたい。


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