Curse Of Halloween 8話①

「べーた だったら、おとこのこ と おんなのこ で『ケッコン』するんだよね?」
「そうだね。ケッコンして、もっと なかよし になれば、こども が やってくるんだって。」
「『ウンメイノツガイ』だったら、おとこのこ にも、おんなのこ にも、こども が やってくる んだよね?」
「そうだね。べーた なら おんなのひと、ツガイ なら おめがのひと の おなか に、あかちゃん が やってくるんだって__」


治療を終えたリスノワールの瞼は重く閉ざされたままだった。
その間にリスノワールの兄弟だという白猫の猫人族のマハナはウルフェルに連れられ、屋敷にある大浴場へとやって来た。
猫に獣化していれば服を脱ぐ必要はないと高を括ってしまったマハナは、大狼に獣化したウルフェルの前足で押さえつけられた。
「な、何をするんですか!?」
「浴室に来てすることと言えば、身体を綺麗にすることでしょう?じっとしていてくださいね。」
そう言うとウルフェルはマハナの顔や体をペロペロと舐め始めた。
「や、やめてください!!ボクもαですよ!?α同士でこんなこと……!!」
「おや?何を勘違いされているんですか?これは私達獣にとっては至って普通の毛繕いですよ?」
「で、でも……種族が違います!!」
「種族を越えた愛情もあるんですよ?ほら、ココもキレイにしなくては……」
白猫のお尻に大狼の鼻が当たる。
「ひっ!そこはダメ……っ!!」
固く目を瞑り、身体を強張らせる。
が、それ以上舐められることはなかった。
「……とまぁ、獣化している場合、こういった手法で体を洗うことなりますが、続けられますか?それとも人型で服を脱いで洗いますか?」
白猫を押さえつけていた前足が離れた。
「うぅ……ぬ、脱ぎますけど、自分で洗わせてください。」
「残念ですが、私も命じられているので……それとも、何か不都合がおありなのですか?」
「……あの、実はボク……」

「オレ以外にも医療系で心当たりが?早く呼びなよ?」
「あぁ、居るには居る。信頼もある。が、ちと面倒でもある。」
「何か訳ありなの?」
「まぁ、そんなところだ。だが、やはり背に腹は代えられん。呼ぶしかねぇな……」
「ちなみに、どんな感じの御方なの?女性だとオレも会いたいな~なんて。」
茶化すヴァンにため息を吐きつつ面倒くさそうに回答する。
「……あたしの姉達だ。二人いる。」
「ちょっと待って、詳しく聞かせて。」
女性だと知るや否や、ヴァンは姿勢を正し、真剣な顔つきで話を聞き始めた。
「長女はそこそこすげぇ魔女だが、ガンガン攻撃するアタシとは対照的で回復や補助魔法を得意としている。問題はクール系に間違われるほどの極度の人見知りだ。」
「デリケートなお姉様ね、了解。」
「次女はアタシや長女と真逆でコミュ力のバケモンだ。町まで買い物へ行くと何かしらオマケを貰ってくるほど可愛がられるような愛想の良さと、莫大な薬草の知識が強みだ。問題は姉と妹の二人の魔女に挟まれていながら、自分だけ魔力が無さ過ぎて魔女になれなかった事を気にしている。 ” お母様のお腹の中に忘れて来た ” とか言っているが、相当悔しいだろうな。」
「こちらもまたデリケートでいらっしゃる……」
「まぁ今は無口な回復魔術師とフレンドリーな助手兼薬剤師って形で、医者が不足している町を巡回しているらしい。」
「へぇ……もしかして、オレよりずっと優秀なのでは?」
「そうかもしれねぇな。」
「じゃあなんでいつもオレを呼んでくれるの?お姉様方ならすぐ解決しそうだし、費用とかも俺より安くしてもらえそうなんだけど……」
「理由はいろいろあるんだが……一番面倒なのは ” 早く良い番を作れ ” って煩いところだな……」
「あ~……心中お察しします……ちなみに、お姉様方にお相手は?」
「あたしが知る限りではいねぇよ。自分のことは棚に上げて、あたしにだけ番を求めやがる……」
「なかなか大変だねぇ……俺がつg」
「それは断る。」
「厳しい世の中だわ……」
「そんなことより、その姉貴達を呼ぶと決まったなら準備が必要だな。」
重い腰を持ち上げるように椅子から立ち上がり、軽く伸びをする。
「準備?」
「あぁ。まずは……」

「……それで私に裸体を見られたくなかったのですね。それならそうと早く言ってください。流石にこの時間ではムーナは呼べませんし……仕方ありません。ご自身で洗って頂いて構いませんが、マハナさんの身体に怪我が無いかだけは確認したいので、可能な範囲で脱ぐか捲るかして頂けますか?」
脱衣所に戻り、人型の姿で
「す、すみません……まさか、αのボクに手を出されるとは思わなくて……」
「おや、ご存じないのですか?αが相手のうなじを噛むことで番になりますが、相手はΩ以外でも成立します。その相手がαだった場合、噛まれたαはΩへ体質が変化します。それに、猫人族は生きる愛玩人形として、先ほどのフリークショーや闇市などでは奴隷と同じように売買されます。施設でもまともな待遇は受けていませんでしょう?つまり、あなたがどれだけ威嚇しようとも、身動きの取れない状態でαに噛まれてしまえば、強制的に番のΩになります。」
「そ、そんな……」
「たとえαであっても、うなじを噛まれないよう気を付けなくてはなりません。猫人族であるマハナさんは特に、です。ご理解頂けましたか?」
「……わかり、ました……」
「それは結構です。こちらも手荒な真似をしてしまい、申し訳ありませんでした。」
ウルフェルはそっとマハナの頭を撫でた。
衝撃の事実に気を落としたかと思われたが、俯いていた顔が不意に上がった。
「あ、あの!ボク、アーヴァエを守れるくらい強くなりたいんです!だから、戦い方を教えてください!!お願いします、ウルフェルさん!……いえ、師匠!!」
「切り替えの早さには感服しますね……ですが、弟子を取るつもりはありませんし、私もそのような指導者の真似事は出来かねます……」
「お願いしますウルフェル師匠!!何でもしますから!!」
「……わかりました。せめて護身術だけでも身に着けておかないと、この先が思いやられそうですからね……ただし、一度御嬢の確認を頂いてからになります。御嬢から了承を得られれば、マハナさんに稽古をお付けします。よろしいですね?」
マハナの表情が分かりやすいほど明るくなった。
「本当!?やった!!ありがとうございます!!師匠!!」
「まずは御嬢の了承を得てからですよ。それと、早く体を洗って来て下さい。その後、怪我の確認をします。」
「わかりました!師匠!!あ、あとでさっきの話も聞かせてくださいね!!」
ウルフェルが脱衣所を出ると、マハナはすぐさま服を脱ぎ捨て大浴場へと足を踏み入れた。
しかし間もなくして大浴場から声が響いた。
「師匠!!大変です!!使い方が分かりません!!」


* * *

6月5日更新分です。
まだキャラ増えます。
過去に出そうとしたキャラがまだ出てません。
もう8話ですわよ。
あと、過去の話でチラホラとした部分をしれっと修正しています。
エイハンの氷骨が骨氷になってたりとかね。
一人称とかも時々間違えてたわね。
書き上げたら見直してから更新しましょうね。
もう8話目ですわよ。

5月29日更新分の番外編はちょっとまってね。

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