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かまどの科学

かまどの科学

 今日の話は「かまどの科学」、英語でいうと " Science of Fire ! " だ(… と、林間学校でボクは話し始めた。野外でのカレー作りの説明です。それを再現)。ポイントは3つ。

 まず、1点目。火は熱いぞ。ところで「やけどに気をつけよう」なんてことを言いたいんじゃない。そんな野暮なことは僕は言わない。やけどしないようにするのは簡単だ。火をおこさなければいい。でも、おこさないわけにいかないでしょ。
 じゃぁ、やけどする危険を冒してまで、なぜ火をおこすんだろう? 答えは、火が熱いからだ。だから、ご飯が炊けて、カレーが作れる。人間は火を使うようになって、おかげで食材リストが圧倒的に増えたんだよね。火を使う以前は、食事のメニューはものすごく限られていたはずだ。
 考えてもみよ。生麦、生米を食えるか? まぁ生卵なら食えるけど、生麦、生米は食えんだろ。ところが、火にかけると食えるようになる。さて、生肉、生芋は食えるかな? 生ニンジンはどうだろ? それは、火をおこせなかった班が答えを出してくれるだろう。やけどするのは仕方ない。火は熱いから。

 続いて、2点目。火は上に広がる。当たり前だなんて言っちゃいけない。かまどに火をつけるには、これは重要なポイントだ。なぜなら、火が上に上がるのか下に下がるのかによって、火のつけ方が変わってくるからだ。
 火が下に下がるのなら、木の上に火を乗せればよい。その場合、火は下へ下へと沈み込むように広がって、上の木から下の木へと順に燃え移っていくだろう。
 どころが実際はそうじゃない。火は下に下がるのではなくて、上に上がるのだ。だとすれば、最初に火をつけるべき場所も変わってくる。

 そして、3点目。なかなか火はつかない。これも大事なポイントだ。だってなかなかつかないんだもん。
 いや、すぐにつく物もある。紙だ。けれども、紙はすぐに燃え尽きて、あっという間に消えてしまう。それでは調理には役に立たない。
 薪であれば火は長もちするから、一回ついてしまえば、あとは適当なタイミングで薪を追加するだけで火は燃え続ける。けれども、最初の火がなかなかつかないのだ。
 簡単に火がつくけれどもすぐに燃え尽きてしまう紙と、なかなか火がつかないけれども一回つけば当分燃え続ける薪。そしてその間に、小枝がある。つまり、火のつき易さは「紙>小枝>薪」、長もち度合いは「紙<小枝<薪」である。最終的には薪に火をつけたいわけだが、いきなり薪に火をつけようとしても無理だ。そうなると、火をつける順番を工夫しなければならないということになる。

 もう一度言おう。火は熱いぞ。そこに、なぜかまどに火をつけるのかの訳がある。そして、火は上に広がる。でも、なかなかつかない。そこに、どうすればかまどに火をつけられるかのノウハウが詰まっている。Good Luck !

かまど大賞 @林間学校

 林間学校で野外での火おこしにおいて、君らの班は最も手こずり時間がかかり、火が点いたのはだんトツのビリでした。そしてその過程で多くの失敗回り道をして、結果としてたくさんのことを経験し、それを全員で共有し、どの班よりも多くのことを学びました。その成果を讃え、ここに(僕の独断で)「かまど大賞」を贈ります。

 おめでとう! パチパチ

縄文の宴 @林間学校

 うちの学校の林間学校は信州の入笠山で行う。山梨県との県境に近いエリアである。対象は中学1年生。その場で、以下の話をした。(2018夏)

☆ 縄文展(東京国立博物館にて ~9/2・中学生無料
 先日、東京上野の国立博物館で開催中の縄文展「縄文-1万年の美の鼓動」に行ってきた。そこでは日本全国から出土した縄文時代の土偶や土器を展示している。行ってみて分かったことだが、ここ入笠山の近くで出土したものがたくさん展示されていた。長野県の茅野市・伊那市、山梨県あたりである。
 縄文展の入場料は大人1600円、高校生900円で、中学生は無料。つまり僕は1600円払って見学したが、君たちは無料で見れるということだ。この夏休み中、9月2日までやっている。行くしかないね。

☆ 縄文のヴィーナス(茅野市尖石考古館・国宝第1号
 この(入笠山の)近くで出土したものが多く展示されているということは、この辺りが「縄文の里」と呼ぶにふさわしい土地だということだ。
 そのうちの1つを紹介しよう。長野県茅野市の棚畑遺跡から出土した「縄文のヴィーナス」だ。お腹の大きな女性の像、つまり妊婦さんだ。今は上野に行っているが、普段は茅野市の尖石考古館で展示している。縄文の土偶・土器の中で国宝に認定された第1号だということだ。
 レプリカでいいから「家に置きたい!」と僕は思ったね。他に「家に置きたい」と思ったのは、火焔土器。炎を型どったような大きな器だ。本気でネットで注文しようかな。

☆ 縄文の村(環状集落・竪穴式住居
 先ほどみんなが立てたテント、広場を中心にしてまぁるく並んだテント群を見て、僕は思ったよ。これは「縄文の環状集落」と同じじゃないか、と。テントだって竪穴式住居と同じようなものだ。木の骨組みがアルミになって、葉っぱで覆う代わりにビニールのシートを被せているが、基本構造は変っていない。地面に穴を掘れば、より快適に過ごせるんじゃないかな。
 今日は、テント泊。食事は野外で火を起こして自炊する。これってキャンプと言うより、縄文ライフと呼びたいね。

→ 縄文の宴(村の中心で火をくべる・土器を焼きたい)
 というわけで、今日の夜は「縄文の宴」だ。キャンプ・ファイアーと言うのはもう止めよう。本当は土器でも焼きたいところなんだけど、今から土をこねても間に合いそうにないな。
 あっそうだ。◯◯先生、ちょっと鹿でも獲ってきてよ!(実際、この近くに野生の鹿がいる)。火があるんだから、BBQやろうよ。最近の言葉で言うなら、ジビエ料理だ。
 えぇっと今日の消灯時間は、あれっ? ここに書いてある消灯時間、間違えてるね。(白板に書いてあった「21:45」にちょっと書き加えて「27:45」に勝手に変えて)はい、これで良し。では、縄文の宴を夜通し楽しもう。

 ここまで話したところで他の先生が現れて、白板に書き加えた部分を消されて「消灯時間 21:45」に戻された。僕の話は丸ごと無視されて、キャンプ・ファイアーの説明が始まった。
 次の日、めげずに僕は白板に以下の文面を書き足した。

→ ◯◯先生が獲ってきた鹿肉(狩猟)と、
  ◯◯先生が採ってきたどんぐり(採集)で、夜中にBBQした。
→ 縄文ライフ体験、以上で完結

 ある先生に「年配が若手の邪魔して、何やってんだ!?」と言われた。別の先生には「お茶目だね」とほめられた。生徒たちからは「おもしろい先生」と呼ばれた。「教員にこそ多様性が大事」というのが、僕の信念。教員だったら、率先してバカをやれ

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