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水の不思議

水が温度変化をやわらげる

◇ 水は、他の物質に比べて比熱容量が非常に大きい。
 つまり、水の温度を上げ下げするためには、大量の熱の出入りが必要なわけです。逆にいうと、熱の出入りが同じであれば、水は他の物質に比べて温度変化が小さくなります。日常生活でいうと、お湯を沸かすには大量の熱が必要で、沸かしたお湯はなかなか冷めないということです。

◇ 水は、他の物質に比べて融解熱が格段に大きい。
 水の融点(=水が凍る温度=氷が解ける温度)は 0℃ ですが、このときに大量の熱の出入りがあります。氷に熱を加えると、そのうち一定の量が氷を融かすために使われ、その分だけ温度上昇が抑えられます。だから、ジュースに冷たい鉄球を入れるより、氷を入れた方がジュースがよく冷えるわけです。

◇ 水は、他の物質に比べて気化熱(蒸発熱)がべらぼうに大きい。
 水の沸点(=水が蒸発する温度)は 100℃ ですが、このときにも大量の熱の出入りがあります。球の気候でいうと、水が蒸発するとき周囲の熱を大量に奪ってくれるということです。また上空で水蒸気が水に戻るときに、大量の熱を宇宙空間に放出することになります。

 以上3つの特徴はいずれも、熱の出入りに対して水(=氷=水蒸気)の温度変化を小さくする働きがあります。水がクッションのように働いて、気温の変化がやわらげられるわけです。
 他にも水には特別な性質があります。

氷点下でも湖の水が凍らない訳

 普通の物質は、固体のときが一番密度が大きくて、液体になると密度が小さくなります。また同じ液体の状態でも、温度が低いほど重く(密度が大きく)、温度が高いほど軽く(密度が小さく)なります。
 しかし、水だけは例外です。水が冷えて固体の氷になると、液体の水より軽くなって水に浮きます。また液体でも、0℃の水より4℃の水の方が重い。固体・液体・気体を通して、4℃の水が最も重いのです。
 もし仮に水が、温度が下がるほど重くなるとしたらどうなるでしょうか。その場合、氷点下の気温がしばらく続けば、湖は底まで凍りつくことになります。水の表面の温度が下がれば、表面の水は下に沈み、下の方の水が上にあがって、やがて水全体が0℃になります。続いて表面が凍って、氷が沈み、水が上にあがる。つまり、湖は底から凍り始め、やがて湖全体が凍りつくことになります。
 でも実際には、こうはなりません。水の表面温度が4℃に下がるまでは、表面で冷やされた水は下に沈みます。けれども、表面が4℃を下回った時点で、表面で冷やされた水は下に沈まなくなる。4℃の水の方が重いからです。やがて表面温度が0℃を下回って凍りついても、氷は水に沈みません。氷は水より軽いからです。やがて表面が氷に覆われると、湖は蓋をされたようになります。
 また、水は他の物質と比べて、比熱と凝固熱が大きい。すなわち、冷えにくくて、凍りにくい。だから氷の蓋ができると、氷の下はますます冷えにくくなります。そして、湖の底の方の水温は4℃に保たれます。だから、お魚が生きていけるのです。氷に穴を開ければ、釣りができます。真冬の北極海でも、氷の下は比較的暖かい。氷の上に比べれば、水の中はぬくぬくなのです。

99℃の雨が降る?

 ここまでは、水の融点(0℃)付近の話でした。次に、水の沸点付近の話です。

  (1) 地表で温められて気体となった水蒸気が、
    上空で冷やされて液体に戻って、地表に降り注ぐのが雨です。
  (2) 1気圧の場合、水の沸点は100℃です。
  (3) 沸点の温度以上では、物体は気体(水蒸気)になります。
  (4) 沸点の温度以下では、物体は液体(水)になります。
 さて、(1)〜(4)から必然的に次のことが帰結します。
  (5) そう、99℃の雨が降る・・・???

 でも (5) は変ですよね。そんな経験、したことないですから。
 では、ここで【問題】です。(1)〜(4) のどれが間違いなのでしょうか?

 4択問題です。私としては「間違っているのは (4) だ」と言いくるめたいところなのですが、そう言えるような選択肢になっているでしょうか。

 要するに、沸点以下であっても一部は気体として存在しているわけでありまして、液体と気体の間で平衡状態を保っているんですね。温度によってその割合が変わるから、水が蒸発したり雨が降ったりするわけです。
 それでは沸点とは何かと言うと「すべてが気体になる温度」です。つまり、100℃を超えたらもう液体ではいられない。ですから (3) は合っています。こんな説明でおおよそ良いんだと思いますが、その辺のところを考えられるような【問題】になっているでしょうか。

カーリングのストーンはなぜ滑るのか?

 カーリングのストーンはなぜ滑るのでしょう?
 固体どうしが接触する場合、基本的には滑りません。たとえば、平らな土の上にある石は滑りません。ところが、カーリングのストーンは固体である氷の上を滑ります。なぜなのでしょうか?
 答は、固体の氷が溶けて、液体の水になるからです。では、なぜ氷が溶けるのでしょう?
 ストーンが動くことによって発生する摩擦熱? もしそうだとすると、カーリングの会場はすぐに水浸しになるでしょう。なにしろ1試合で10エンド、1エンドあたり各チーム10回ずつ、1試合で合計200回もストーンを投げるのです。その度に氷が溶けたら、試合が終わる頃にはカーリング会場は水浸しになって、氷がすっかり無くなってしまいそうです。

 なぜそうならないのでしょうか? その訳は、溶けて水になった氷がまたすぐに凍るからです。でも、冷えて凍るわけではありません。
 ではそろそろ、そのカラクリを説明しましょう。氷はストーンの圧力が加わることによって溶けるのです(下図の赤線)。そしてストーンが通り過ぎると圧力が下がって再び凍る(下図の緑線)。つまり氷はストーンが通り過ぎるその瞬間だけ溶けて、すぐに元に戻るのです。こうしてストーンが氷の上を滑りながら移動するわけです。温度変化(グラフの左右への移動)ではなくて、圧力の変化(グラフの上下移動)によって「固体→液体→固体」と変わるというわけです。

カーリング

 スキーもスケートも、また雪道で滑って転ぶのも同じ理由に因ります。

0℃の氷と−100℃の鉄球ではどっちが冷える?

【問】20 ℃ の水 100 g があります。これじゃぁぬるいので、冷やして飲みたい。
  さて、この中に 0 ℃ の氷 10 g を入れるのと、−100 ℃ の鉄球 10 g を入れるのとではどちらがよく冷えるでしょうか。
  (水の比熱を 1 cal/g , 鉄の比熱を 0.1 cal/g , 水(氷)の融解熱を 80 cal/g とする)

まず、−100 ℃ の鉄球 10 g を入れる場合。
最終的な水の温度を x ℃ とすると、100(20-x )= 10 × 0.1 ×(100 + x )
これを解いて、 x = 1900/101 ≒ 18.8 ℃

次に、 0 ℃ の氷 10 g を入れる場合。
最終的な水の温度を y ℃ とすると、100(20 -y )= 10(80 + y )
これを解いて、 y = 1200/110 ≒ 10.9 ℃

以上から、 0 ℃ の氷の方が −100 ℃ の鉄球より(7.7 倍も)よく冷えます

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こちら(↓)もご覧ください。

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