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青ヶ島

青ヶ島への道

 青ヶ島に行くためには、まず何はともあれ八丈島に行く必要がある。八丈島への道は飛行機か船。飛行機はANAが羽田から毎日3往復。時刻表では片道55分だが、飛んでる時間は正味30分ほど。船は毎日1往復、片道10時間ほど。東京の竹芝桟橋から三宅島・御蔵島を経由して八丈島まで行く。東京発は夜行便、八丈島発は昼便。
 さて、そこからが遠い。ヘリコプターに乗れれば20分で着くが、なかなかヘリに乗れない。なにしろヘリコプターの定員が9人であることと、欠航が多いからだ。船に乗れれば片道3時間だが、冬場の今は海が荒れて、ほとんど当てにならない。
 私の場合は、ヘリコプターのキャンセルが出た時点ですかさず予約を入れた。それでも欠航の恐れはあったわけだが、結果的に予定通りのヘリコプターに乗れた。夜行の船で東京を発って、行きは 八丈島 に1泊して、青ヶ島に2泊して、帰りは八丈島空港で乗り継いで、全部で4泊5日の旅だった。

玉石階段

 八丈島と青ヶ島のいくつかの神社の参道は玉石を並べた急階段になっている。もともと傾斜地の多いところで、高い場所に神社があれば、そこに向かう参道は急斜面にできることになる。そういう場所で丸い石を並べるのが通例になっているということか。
 写真左は八丈島の為朝神社、中央は青ヶ島の大里神社、右は同じく青ヶ島の東台所神社へ向かう参道である。青ヶ島の2つの神社はどちらも大カルデラの外輪山の尾根にあるから、まさに急斜面に作られた急階段である。
 さて、この階段、登りは這いつくばれば何とか登れるが、下るのは難しい。たぶん何度か滑って転ぶだろう。そしてズルズルと数メートル落下しかねない。とても危ない。

 というわけで、お勧めしたいのが次のコースだ。旅行者が泊まる岡部集落をスタートしてはじめに青ヶ島最高地点の大凸部おおとんぶに行って、少し下りたところにある鳥居をくぐって玉石階段を「登る」。這いつくばって登りきったところにある東台所神社を経由して尾山展望台に至り、そこから下って岡部集落に戻る。

 国土地理院の地図でその階段を見ると、標高差は360mから410mまでの50mほどで、その間の水平距離は100mほど。玉石階段を登り切ったところから撮った写真が上右。眼下に岡部集落が、遠くに八丈島が見える。玉石階段そのものは草に覆われて苔むしている。
 このコース、ぐるっと回って1時間ほど。お勧めしたいコースだ。ぜひお試しいただきたいところだが、くれぐれも逆回りは無理だ。あの玉石階段を下るのは危険すぎる。

※ 丸い石はとても安定していて、全然ぐらつかないの。丸いから雨が溜まったりぬかるんだりしにくいのかな。意外と先人の知恵なのかなぁと思ったり。
 ところで、丸い石って海岸で削られたんだと思うんですよ。だとすると、あの石はぜんぶ海岸から運んだもの。それもまたびっくりです。

離島あるある

学校が立派
 学校の意味合いは子供たちのためだけではない。地域のための役割も担っている。だから人口166人(2022年12月1日現在)の青ヶ島に立派な学校があるのは、それはそれで良いことなのだろう。

島に一ヶ所だけ信号がある訳
 島に唯一の学校のすぐ前に、島に唯一の信号がある。何のためにあるか?というと、子供たちの学びのためにあるのだろう。それ以外に目的が想像できない。もちろん稼働している。
 学校から信号を渡ったところに、これまた立派な体育館がある。そこに行き来するたびに、子供たちは押しボタンを押す。そして信号が変わってから道を渡る。そういう学び。

数ヶ月に一度開店する美容室
 集落を歩いていて、美容室の看板を見つけた。「10月の14,15,16日に開店する」と書いてある。その日は12月下旬だった。
 勝手に想像しながら計算してみた。3ヶ月に一度、3日間だけ八丈島から美容師がやってきて、それに合わせて島民166人の半分80人が髪を切るとする。代金を3,000円/人とすると80人で24万円で、交通費など3万円を差し引いて利益が21万円となり、日当換算すると7万円。・・・行政から補助金があったりもするのかなぁ。。

あしたばには2種類ある

 青ヶ島の明日葉あしたばが美味しいの。クセが無くて、小松菜か何か他の青菜かと思った。八丈島や三宅島で食べた明日葉には苦味があった。クセがあった。それが明日葉の美味しさだと思っていた。けれども、青ヶ島の明日葉はそれとはまるで違う。
 なぜなんだろう? 宿の女将さんに聞いてみたら「そこらへんに勝手に生えている明日葉だよ。さっき採ってきた」との答え。そう、もしかしたら、それが答えなのだ。以下、根拠の無い話で、つまり私の勝手な想像なのだけれど、断定的に書いてみる。もしかしたら当たっているかもしれないし。
 八丈島でも三宅島でも畑で明日葉を育てている。おそらく肥料を撒いて、時には農薬を撒いて、手を掛けて明日葉を育てている。市場に出すためには必要なことなのだろう。また採ってから口にするまでに、それなりの時間もかかる。
 それに対して青ヶ島では自生しているものを、食べるときに食べる分だけ採る。昔からの食べ方だ。その差が味に出ているんじゃなかろうか。きっとそうだ。そして味だけじゃなくて、栄養成分的にも違いがあるんじゃないのかなぁ、と。

 上の文章の味は『以下、根拠の無い話で、つまり私の勝手な想像なのだけれど、断定的に書いてみる。もしかしたら当たっているかもしれないし』← ここにある。
 そう、エビデンスは無いが、説得力がある。そう、正しさには価値が無くて、見方にこそ価値がある。
 そしてもう一つ、最後の1行が面白い。普通に考えたら、カルデラと景色の話がメインで、明日葉の話はおまけになるであろうに、逆転しているのである。その結果、カルデラと明日葉に同じくらいの印象が残るだろう。
 自画自賛でした。

2重カルデラ

 青ヶ島の特殊性は2重カルデラ。そして一番の観光ポイントはその景色。

 結局のところ、外輪山の展望台からカルデラを見ればそれでほぼ満足。眺望の良いところは何ヶ所かあって、季節や天候や時間帯(つまり、日差しの向き)よってバリエーションはあるが、同じといえばそう言えなくもない。
 内輪山(丸山)のウネウネは人工的なものらしい。山に自然に生えていた木をスジ状に切って、椿を植えようとしたらしい。そんなことを島の人から聞いた。椿は伊豆大島と利島の名産になっている、その二番煎じを狙ったもの、あるいは観光目的だったのかもしれないな。
 それにしても、この景色は青ヶ島でしか見られない。とても稀有な地形だ。

 上の地図は、左から順に、色別標高図、陰影起伏図、赤色立体図です。いずれも国土地理院の地図です。税金払ってるんだから、国土地理院地図を有効活用したいですね。

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