SDGs:気候変動の回で何を語るか?
「2021 SDGs 高校夏期講習」というタイトルで SDGs の目標の1番から17番までを順に「教員同士で討論しながら学ぼう」という企画があります。今年の8月1日~17日の毎日1つづつオンラインで行います。そこに登壇するように誘われました。
その際、次の中から選ぶように言われて、
○ 8月 7日(土) # 7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに
○ 8月13日(金) #13 気候変動に具体的な対策を
○ 8月15日(日) #15 陸の豊かさも守ろう
「#13 気候変動に具体的な対策を 、でやらせてくれ」と返事しました。
まずはこの場で私の考えを示します。当日の発表のための準備です。
(※ 続編 もあります)
ところで、SDGs についての基本的な考えは?
実は私はもともと「SDGs って胡散臭い」と思っています。要するに、SDGs は「庶民に『良いことしてる』という(ゆがんだ)満足感を与え、子供たちに『未来は明るい』という(間違った)安心感を与え、企業活動に『どんどん進め』とゴーサインを与える」ためのものじゃないかと。
その実、人類は持続可能どころか破滅に向かって、減速どころか加速しながら、まっしぐらに進んでいる。SDGs はそれをいっとき忘れさせる効果がある。
ずっと前からそうなのです。「地球にやさしい、エコ、… 」いろんな言葉があって、でも基本的に何も変わっていないのです。夢を語るよりも、私はそのことを確認したい。
なぜ「#13 気候変動に具体的な対策を」選んだのか?
気候変動の直接の原因は二酸化炭素 CO2 ですね。これはいわば「究極のゴミ」と言えるものです。
SDGs 17項目のうち他のものについては、語弊があることを承知で言いますが、解決策はいくらでもあるのです。例えば、
このように、他の項目と矛盾していいなら、その項目だけを見て他の項目を無視していいなら、何でも言えてしまいます。だから企業も易々と入り込めるのです。
けれども「 #13 気候変動に具体的な対策を」だけはそうじゃない。二酸化炭素は究極のゴミだから、何をやっても大抵のことはここに返ってくるのです。やればやるほど二酸化炭素が増えるから、逃げようがないのです。(だから誰もやりたがらなくて、私のところに回ってきたのでしょうか?)
その意味で、これが最も難しいとも言えます。真っ先にやるべきことでもあります。だから私はこれを選びました。
「具体的な対策」には2つの方向性がある
さて、私が選んだのは「 #13 気候変動に具体的な対策を」ですが、ここで言う「具体的な対策」には2つの方向性が想定できます。
1つは「気候変動を食い止める」ための「具体的な対策」です。こちらを想定する人がおそらく多いのでしょう。けれども、他の方向性もありますよ。
もう1つの方向性は、気候変動が現実となった際に「温暖化した世界で生きる」ための「具体的な対策」です。つまり、気候変動を既定の現実と受け止めて、その先を考える立場です。
確実に食い止められるなら、前者の方向性だけを想定すれば良いでしょう。けれども、そうでないなら、後者の方向性が必要です。私はこれから、後者の方向性で語ります。
気候変動の何が問題なのか?
大気中の二酸化炭素 CO2 が増えれば、気温が上がり、気候が変わります。気候がどのように変わるかというと、典型的には降水量が変わります。内陸国では降水量が減って干ばつになり、日本のように海に囲まれた国では降水量が増えて台風・洪水も増えるでしょう。(※1)
ところで、そもそも SDGs 17項目全体で何を問題にしているかというと、端的に言えば「今のままでは人類の生存が脅かされるのではないか?」ということだろうと思うのです。要するに「現代文明が終わる」可能性を踏まえながら「多くの人が生き延びる」術を探っているのだと思うのです。そしてそうなると、真っ先に確保したいのは食糧です。
(※1) 雨は地球の冷却システムです。太陽から届く熱を、水の循環を利用して宇宙に排出することで地球の温度は保たれています。太陽から届く熱の総量と宇宙に排出する熱の総量は同じです。熱は一時的に地球にとどまっているわけです。
温暖化とは「一時的に地球にとどまる熱が増える」ことです。それをもたらすのが二酸化炭素などによる温室効果ですが、太陽から届く熱量はこれからも変わりませんから、最終的に地球から出ていく熱量も変わりません。ですから温暖化が進んでも、地球全体の降水量はそれほど変わらないはずなのです。
ですから「内陸国では降水量が減って干ばつになり、日本のように海に囲まれた国では降水量が増えて台風・洪水も増える」という予測が立つのです。
日本にとっては大いなるチャンスだ
二酸化炭素が増えて、気温が上がって、日本で雨が多くなるなら、農業にとってはとても良いことなのです。世界の他の国では逆のケースも多々あるでしょうけれど、日本にとってはかなり有利な状況です。(※2)
でも東京ではきっとダメでしょう。農地が無い。いや、その前に人口が多すぎる。
田舎ならたぶん大丈夫。暖かい気候の中で、水と二酸化炭素をたっぷり吸って、農作物はすくすく育つことでしょう。SDGs の他の項目を達成する可能性も出てきます。
(※2) 現在の農業は、肥料と農薬を撒いて、機械を使って耕して収穫して、さらに世界中に運んで、プラスチックで包んでいます。肥料も農薬もプラスチックも元をただせば石油ですし、機械を動かすのも運搬するのも燃料は石油です。
そこそこ美味しくて、まぁまぁ安全なものを、いつでもどこでも大量に安く消費者に届けるのが、現代農産業の基本方針だと言えるでしょう。
食糧によって得られるカロリー(エネルギー)よりもはるかに多くのエネルギー(石油)を投入しているのが現実で「現代人が排出している二酸化炭素の3割が食料の生産と輸送に因る」という報告もあります。
そしてその裏で「食べられるのに捨てられる食品(食品ロス)が多い」こと、「飢餓と飽食が同時に並行して存在する」ことが問題になっています。
それらのことを考えると、地産地消、フード・マイレージ、これらの言葉が表す世界が進むべき方向でしょう。端的に言えば、田舎に住んで農業に勤しむ人が増えることがいま最も必要なことだろうと、そしてそれを実行した人が生き延びるだろうと私は思うのです。
教科や学問の切り口から
主催者から言われていることがもう一つあります。「教科や学問の切り口から」話せ、と。「#13 気候変動に具体的な対策を ✕ 〇〇」の〇〇に教科や学問領域などを入れてタイトルとするのが、この企画のお約束になっています。
上に書いた(※1)と(※2)を踏まえれば、私が担当する回のタイトルは「#13 気候変動に具体的な対策を ✕ 気象 ✕ 農業」とするのが良いでしょうか。それとも広い意味では「#13 気候変動に具体的な対策を ✕ 理科」が良いかもしれませんね。いずれにしても私が勤務校で担当している教科とはほとんど何の関係もありませんが。(余談ですが、現在放送中のNHKの朝ドラ「おかえりモネ」に「気象」はぴったりだし「農業」もまぁ近いから良いんじゃないかと)
→ 主催者と相談して、結果的に「#13 気候変動に具体的な対策を ✕ 理科」と名乗ることにしました。
大人も子供も気づいている
8月13日(金)の夜に「 #13 気候変動に具体的な対策を」をテーマに、私は以上のような話をしたいと思っています。一部の参加者はまず驚くでしょう。そしてやがて納得してくれるでしょう。
実は「SDGs なんて嘘っぽい」と感じている人は、大人にも子供にもけっこう多いのですよ。ちょっと話をすれば、すぐに分かります。
さて、農業を始めるなら、今ですね。農業従事者の高齢化、後継者不足、耕作放棄地の増加 … など、冷静に考えればチャンスだらけなんです。現に都会から地方移住する人が私の知り合いにもチラホラ出てきています。
今から気候変動を食い止めようとしても、すでに手遅れかもしれませんよ。一方で、今から農業に転身すれば、何とか間に合うでしょう。
続きは、記事「何をもって持続可能を言おうか?」をどうぞ。
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〜 SDGs と向き合う方法 〜
▷ 気候変動の回で何を語るか? ┐ ▷ エコロジストの3つのベクトル
▷ 何をもって持続可能を言おうか? ┼ ▷ 温暖化した世界で生きる
▷ 「一人一人ができること」の効果 ┘ + リハーサル動画
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